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岡本かの子

検索結果99件中46件から90件までを表示
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  • タイトル: かの女の朝
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  K雑誌先月号に載ったあなたの小説を見ました。 ママの処女作というのですね、これが。 ママの意図としては、フランス人の性情が、利に鋭いと同時に洗練された情感と怜悧さで、敵国の女探偵を可愛ゆく優美に待遇する微妙な境地を表現したつもりでしょう。 フランス及びフランス人をよく知る僕には――も....
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  • タイトル: 愛よ愛
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  この人のうえをおもうときにおもわず力が入る。 この人とのくらしに必要なわずらわしき日常生活もいやな交際も覚束なきままにやってのけようとおもう。 この人のためにはすこしの恥は涙を隠しても忍ぼうとおもう。  朝夕見なれしこの人、朝夕なにかしら眼新らしきものをその上に見出すこの人。 世...
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  • タイトル: 良人教育十四種
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要: (1) 気むずかしい夫  何が気に入らないのか、黙りこくってむっつりしている。 訊いてもいっては呉れないで、渋い顔をするばかり。 従って家内中で腫ものにでも触るような態度を取り、そばを歩くに、足音さえも窃むようになる。 こういう性質は神経衰弱その他生理的な病気が伏在している為めに来る....
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  • タイトル: 新時代女性問答
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要: 一平 兎に角、近代の女性は型がなくなった様だね。 かの子 形の上でですか、心の上でですか。 一平 つまり、心構えの上でさ。 昔で云えば新しい女とかいうようにさ。 かの子 特別な型はなくなりましたね。 たとえば青踏時代の様に。 一平 つまり今の新しい女はそんな詩的な概...
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  • タイトル: 巴里のむす子へ
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  巴里の北の停車場でおまえと訣れてから、もう六年目になる。 人は久しい歳月という。 だが、私には永いのだか短いのだか判らない。 あまりに日夜思い続ける私とおまえとの間には最早や直通の心の橋が出来ていて、歳月も距離も殆ど影響しないように感ぜられる。 私たち二人は望みの時、その橋の上で出会...
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  • タイトル: 売春婦リゼット
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  売春婦のリゼットは新手を考えた。 彼女はベッドから起き上りざま大声でわめいた。 「誰かあたしのパパとママンになる人は無いかい。」  夕暮は迫っていた。 腹は減っていた。 窓向うの壁がかぶりつきたいほどうまそうな狐色に見えた。 彼女は笑った。 横隔膜を両手で押えて笑った。 ...
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  • タイトル: 巴里の秋
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  セーヌの河波の上かわが、白ちゃけて来る。 風が、うすら冷たくそのうえを上走り始める。 中の島の岸杭がちょっと虫ばんだように腐ったところへ渡り鳥のふんらしい斑がぽっつり光る。 柳が、気ぜわしそうにそのくせ淋しく揺れる。 橋が、夏とは違ってもっとよそよそしく乾くと、靴より、日本のひより下...
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  • タイトル: 異国食餌抄
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  夕食前の小半時、巴里のキャフェのテラスは特別に混雑する。 一日の仕事が一段落ついて、今少しすれば食欲三昧の時が来る。 それまでに心身の緊張をほぐし、徐ろに食欲に呼びかける時間なのだ。 どのテーブルにもアペリチーフの杯を前にした男女が仲間とお喋りするか、煙草の煙を輪に吹きながら往来を眺....
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  • タイトル: 病房にたわむ花
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  春は私がともすれば神経衰弱になる季節であります。 何となくいらいらと落付かなかったり、黒くだまり込んで、半日も一日も考えこんだりします。 桜が、その上へ、薄明の花の帳をめぐらします。 優雅な和やかな、しかし、やはりうち閉された重くるしさを感じます。 日本の春の桜は人の眉より上にみな咲...
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  • タイトル: 桃のある風景
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  食欲でもないし、情欲でもない。 肉体的とも精神的とも分野をつき止めにくいあこがれが、低気圧の渦のように、自分の喉頭のうしろの辺に鬱して来て、しっきりなしに自分に渇きを覚えさせた。 私は娘で、東京端れの親の家の茶室作りの中二階に住んでいた頃である。 私は赤い帯を、こま結びにしたまま寝た....
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  • タイトル: 山茶花
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  ひとの世の男女の  行ひを捨てて五年  夫ならぬ夫と共棲み  今年また庭のさざんくわ  夫ならぬ夫とならびて  眺め居る庭のさざんくわ  夫ならぬ夫にしあれど  ひとたびは夫にてありし  つまなりしその昔より  つまならぬ今の語らひ  浄くしてあはれはふ... ...
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  • タイトル: 女性崇拝
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  西洋人は一体に女性尊重と見做されているが、一概にそうも言い切れない。 欧州人の中でも一番女性尊重者は十指の指すところ英国人であるが、英国人の女性尊重は客間だけの女性尊重で、居間へ入ると正反対だという説がある。  事実、英国人ぐらい文筆上で女性に対し諷刺や皮肉を弄し、反感を示して......
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  • タイトル: 異性に対する感覚を洗練せよ
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  現代の女性の感覚は色調とか形式美とか音とかに就いて著るしく発達して来た。 全ゆる新流行に対して、その深い原理性を丹念に研究しなくとも直截に感覚からして其の適応性優秀性を意識出来る敏感さを目立って発達させて来た。 これは新発明とか、創造とかには或いは適さぬ性質かも知れない。 何故と言え....
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  • タイトル: 女性の不平とよろこび
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  女が、男より行儀をよくしなければならないということ。  人前で足を出してはいけない、欠伸をしてはいけない、思うことを云ってはいけない。  そんな不公平なことはありません。 女だって男と同じように疲れもする、欠伸もしたい、云い度いと思うことは沢山ある。 疲れやすいこと欠伸をした...
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  • タイトル: 現代若き女性気質集
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  これは現代の若き女性気質の描写であり、諷刺であり、概観であり、逆説である。 長所もあれば短所もある。 読む人その心して取捨よろしきに従い給え。 ○彼女はじっとして居られなくなった。 何か試み度がっている。 自分を試して見度がっている。 自分の市場価値を。 ○「恋など...
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  • タイトル: 蔦の門
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  私の住む家の門には不思議に蔦がある。 今の家もさうであるし、越して来る前の芝、白金の家もさうであつた。 もつともその前の芝、今里の家と、青山南町の家とには無かつたが、その前にゐた青山隠田の家には矢張り蔦があつた。 都会の西、南部、赤坂と芝とを住み歴る数回のうちに三ヶ所もそれがあるとす....
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  • タイトル:
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  かの女の耳のほとりに川が一筋流れてゐる。 まだ嘘をついたことのない白歯のいろのさざ波を立てゝ、かの女の耳のほとりに一筋の川が流れてゐる。 星が、白梅の花を浮かせた様に、或夜はそのさざ波に落ちるのである。 月が悲しげに砕けて捲かれる。 或る夜はまた、もの思はしげに青みがかつた白い小石が...
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  • タイトル: 秋の夜がたり
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  中年のおとうさんと、おかあさんと、二十歳前後のむすこと、むすめの旅でありました。  旅が、旅程の丁度半分程の処で宿をとつたのですがその国の都と、都から百五十里も離れた田舎との中間の或る湖畔の街の静なホテルです。  その国と云ひましたが、さあ、日本か、外国か、今か、昔かと、そ......
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  • タイトル: 上田秋成の晩年
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  文化三年の春、全く孤独になつた七十三の翁、上田秋成は京都南禅寺内の元の庵居の跡に間に合せの小庵を作つて、老残の身を投げ込んだ。  孤独と云つても、このくらゐ徹底した孤独はなかつた。 七年前三十八年連れ添つた妻の瑚璉尼と死に別れてから身内のものは一人も無かつた。 友だちや門弟もすこ....
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  • タイトル: 夏の夜の夢
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  月の出の間もない夜更けである。 暗さが弛んで、また宵が来たやうなうら懐かしい気持ちをさせる。 歳子は落付いてはゐられない愉しい不安に誘はれて内玄関から外へ出た。 「また出かけるのかね、今夜も。 ――もう気持をうち切つたらどうだい。」  洋館の二階の書斎でまだ勉強してゐた兄が、歳...
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  • タイトル:
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  ――お金が汗をかいたわ。」  河内屋の娘の浦子はさういつて松崎の前に掌を開いて見せた。 ローマを取巻く丘のやうに程のよい高さで盛り上る肉付きのまん中に一円銀貨の片面が少し曇つて濡れてゐた。  浦子はこどものときにひどい脳膜炎を患つたため白痴であつた。 十九にもなるのに六つ七つの....
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  • タイトル: 老主の一時期
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要: 「お旦那の眼の色が、このごろめつきり鈍つて来たぞ。」  店の小僧や番頭が、主人宗右衛門のこんな陰口を囁き合ふやうになつた。 宗右衛門の広大な屋敷内に、いろは番号で幾十戸前の商品倉が建て連ねてある。 そのひとつひとつを数人宛でかためて居る番頭や小僧の総数は百人以上であつた。 その多人数....
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  • タイトル: 過去世
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  池は雨中の夕陽の加減で、水銀のやうに縁だけ盛り上つて光つた。 池の胴を挟んでゐる杉木立と青蘆の洲とは、両脇から錆び込む腐蝕のやうに黝んで来た。  窓外のかういふ風景を背景にして、室内の食卓の世話をしてゐる女主人の姿は妖しく美しかつた。 格幅のいゝ身体に豊かに着こなした明石の着物、....
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  • タイトル: 秋の七草に添へて
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  萩、刈萱、葛、撫子、女郎花、藤袴、朝顔。  これ等の七種の草花が秋の七草と呼ばれてゐる。 この七草の種類は万葉集の山上憶良の次の歌二首からいひ倣されて来たと伝へる。   秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花   萩の花尾花葛花なでしこの女郎花また藤袴朝顔の花.....
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  • タイトル: 小学生のとき与へられた教訓
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  或る晴れた秋の日、尋常科の三年生であつた私は学校の運動場に高く立つてゐる校旗棒を両手で握つて身をそらし、頭を後へ下げて、丁度逆立したやうになつて空を眺めてみた。 すると青空が自分の眼の下に在るやうに見え、まるで、海を覗いてゐる気がした。 ところどころに浮んでゐる白雲を海上の泡とも思......
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  • タイトル: 或る男の恋文書式
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  お別れしてから、あの煙草屋の角のポストの処まで、無我夢中で私が走つたのを御存じですか。 あれはあなたにお別れしたくない心が、一種の反動作用を、私の行為の上に現はしましたの。 それから私、走りながらも夢中の夢のやうに考へましたことは私がもし一寸でもふりかへつたら私はまたあなたの方へ…......
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  • タイトル: 小町の芍薬
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  根はかち/\の石のやうに朽ち固つてゐながら幹からは新枝を出し、食べたいやうな柔かい切れ込みのある葉は萌黄色のへりにうす紅をさしてゐた。  枝さきに一ぱいに蕾をつけてゐる中に、半開から八分咲きの輪も混つてゐた。 その花は媚びた唇のやうな紫がかつた赤い色をしてゐた。 一歩誤れば嫉妬の....
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  • タイトル: 私の書に就ての追憶
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  東京の西郊に私の実家が在つた。 母屋の東側の庭にある大銀杏の根方を飛石づたひに廻つて行くと私の居室である。 四畳半の茶室風の間が二つ連なつて、一つには私の養育母がゐた。 彼女はもう五十を越してゐたが、宮仕へをした女だけあつて挙措が折目正しく、また相当なインテリでもあつて、日本古典の書....
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  • タイトル: 女性と庭
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  出入りの植木屋さんが廻つて来て、手が明いてますから仕事をさして欲しいと言ふ。 頼む。 自分の方の手都合によつて随時仕事が需められる。 職業ではのん気な方の職業でもあり、また、エキスパートの強味でもある。 手入れ時と見え、まづ松の梢の葉が整理される。  松の花の出の用意でもある。...
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  • タイトル: 一平氏に
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  そちらのお座敷にはもうそろそろ西陽が射す頃で御座いませう? 鋭い斜光線の直射があなたのお机のわきの磨りガラスの窓障子へ光の閃端をうちあてると万遍なくお部屋の内部がオレンヂ色にあかるくなりますのね、そしてにわかに蒸暑くなるのでせう、あなたは急に汗を余計お出しになる。 でもあなたは、... ...
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  • タイトル:
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  晴れた秋の夜は星の瞬きが、いつもより、ずつとヴイヴイツトである。 殊に月の無い夜は星の光が一層燦然として美しい。 それ等の星々をぢつと凝視してゐると、光の強い大きな星は段々とこちらに向つて動いて来るやうな気がして怖いやうだ。 事実太洋を航海してゐるとき闇夜の海上の彼方から一点の光がこ....
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  • タイトル: ダミア
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  うめき出す、といふのがダミアの唄ひ方の本当の感じであらう。 そして彼女はうめくべく唄の一句毎の前には必らず鼻と咽喉の間へ「フン」といつた自嘲風な力声を突上げる。 「フン」「セ・モン・ジゴロ…………」である。  これに不思議な魅力がある。 運命に叩き伏せられたその絶望を支へてじ...
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  • タイトル: 新茶
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  それほど茶好きでなくとも、新茶には心ひかれる。  あの年寄りじみた、きつい苦みがないし、晴々しい匂ひがするし、茶といふよりも、若葉の雫を啜るといふ感じである。  色がいゝ。 白磁の茶椀の半を満してゆらめく青湖の水。   さなりき、誘ふニンフも   誘はるゝ男妖精も共に髪...
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  • タイトル:
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  早春を脱け切らない寒さが、思ひの外にまだ肩や肘を掠める。 しかし、宵の小座敷で燈に向つてゐると、夜のけはひは既に朧である。 うるめる物音、物影。 「日本的なるもの」の一つに「朧」がある。 よし、それが淨土教の影響によるにもせよ、老莊道學の示唆を得たにもせよ、わが國人の氣魄とや...
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  • タイトル: 雑煮
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  維新前江戸、諸大名の御用商人であつた私の實家は、維新後東京近郊の地主と變つたのちまでも、まへの遺風を墨守して居る部分があつた。  いろは順で幾十戸前が建て列ねた藏々をあづかる多くの番頭、その下の小僧、はした、また奧女中の百人近い使用人へ臨んだ主人としての態度は、今でも東京の下... ...
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  • タイトル: 英国メーデーの記
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  倫敦に於ける五月一日は新聞の所謂「赤」一党のみが辛うじてメーデーを維持する。  それさへ華やかに趣向を凝らし警戒の巡査と諧謔を交しながらの祝賀気分だ。 われわれが世界共通のものとしてメーデーを概念してゐるところの合成人間の危険性を内包した黙圧もしくは爆叫には殆ど出逢へないと云つ......
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  • タイトル: 雛妓
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  なに事も夢のようである。 わたくしはスピードののろい田舎の自動車で街道筋を送られ、眼にまぼろしの都大路に入った。 わが家の玄関へ帰ったのは春のたそがれ近くである。 花に匂いもない黄楊の枝が触れている呼鈴を力なく押す。  老婢が出て来て桟の多い硝子戸を開けた。 わたくしはそれとす...
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  • タイトル: 河明り
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  私が、いま書き続けている物語の中の主要人物の娘の性格に、何か物足りないものがあるので、これはいっそのこと環境を移して、雰囲気でも変えたらと思いつくと、大川の満ち干の潮がひたひたと窓近く感じられる河沿いの家を、私の心は頻りに望んで来るのであった。 自分から快適の予想をして行くような... ...
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  • タイトル: 鶴は病みき
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  白梅の咲く頃となると、葉子はどうも麻川荘之介氏を想い出していけない。 いけないというのは嫌という意味ではない。 むしろ懐しまれるものを当面に見られなくなった愛惜のこころが催されてこまるという意味である。 わが国大正期の文壇に輝いた文学者麻川荘之介氏が自殺してからもはや八ヶ年は過ぎた。 ...
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  • タイトル: 母子叙情
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  かの女は、一足さきに玄関まえの庭に出て、主人逸作の出て来るのを待ち受けていた。  夕食ごろから静まりかけていた春のならいの激しい風は、もうぴったり納まって、ところどころ屑や葉を吹き溜めた箇所だけに、狼藉の痕を残している。 十坪程の表庭の草木は、硝子箱の中の標本のように、くっきり......
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  • タイトル: 食魔
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  菊萵苣と和名はついているが、原名のアンディーヴと呼ぶ方が食通の間には通りがよいようである。 その蔬菜が姉娘のお千代の手で水洗いされ笊で水を切って部屋のまん中の台俎板の上に置かれた。  素人の家にしては道具万端整っている料理部屋である。 ただ少し手狭なようだ。  若い料理教師の...
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  • タイトル: 金魚撩乱
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  今日も復一はようやく変色し始めた仔魚を一匹二匹と皿に掬い上げ、熱心に拡大鏡で眺めていたが、今年もまた失敗か――今年もまた望み通りの金魚はついに出来そうもない。 そう呟いて復一は皿と拡大鏡とを縁側に抛り出し、無表情のまま仰向けにどたりとねた。  縁から見るこの谷窪の新緑は今が盛り......
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  • タイトル: 渾沌未分
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  小初は、跳ね込み台の櫓の上板に立ち上った。 腕を額に翳して、空の雲気を見廻した。 軽く矩形に擡げた右の上側はココア色に日焦けしている。 腕の裏側から脇の下へかけては、さかなの背と腹との関係のように、急に白く柔くなって、何代も都会の土に住み一性分の水を呑んで系図を保った人間だけが持つ冴....
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  • タイトル: 東海道五十三次
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  風俗史専攻の主人が、殊に昔の旅行の風俗や習慣に興味を向けて、東海道に探査の足を踏み出したのはまだ大正も初めの一高の生徒時代だったという。 私はその時分のことは知らないが大学時代の主人が屡々そこへ行くことは確に見ていたし、一度などは私も一緒に連れて行って貰った。 念の為め主人と私の関......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 老妓抄
    著者: 岡本かの子
    出版社: ConTenDo
    概要:  平出園子というのが老妓の本名だが、これは歌舞伎俳優の戸籍名のように当人の感じになずまないところがある。 そうかといって職業上の名の小そのとだけでは、だんだん素人の素朴な気持ちに還ろうとしている今日の彼女の気品にそぐわない。  ここではただ何となく老妓といって置く方がよかろうと思......
    商品価格: ¥0(税込)
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