岩本素白
検索結果7件中1件から7件までを表示
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タイトル: こがらし ――南駅余情――出版社: ConTenDo概要: こがらし、筑波おろし、そういう言葉を明治中期の東京の少年達は早くから知って居た。 そうして其の言葉を、自分達の書くものの中などにも使って居た。 それは寒さが今よりも早く来たし、衣料も今のように温い毛の物などが無く、風がひどく身に沁みて、始終人がそういう言葉を口にしたからであった。 十....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 六日月出版社: ConTenDo概要: 朝早く一乗寺村を歩いて、それから秋晴の八瀬大原、帰りに鞍馬へ登って山端の駅まで戻って来ると、折から小春日の夕日を受けた叡山が、ぽか/\と如何にも暖かそうな色をして居るので、つい誘われて再び八瀬へ取って返し、其処から山を踰えて坂本へ下りてしまった。 我れながら余りの愚しき勇猛が悔い... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 寺町出版社: ConTenDo概要: 樹の多い山の手の初夏の景色ほど美しいものはない。 始めは樹々の若芽が、黒々とした枝の上に緑の点を打って、遠く見ると匂いやかに煙って居るが、その細かい点が日ごとに大きくなって、やがて一刷毛、黄の勝った一団の緑となるまで、日々微妙な変化を示しながら、色の深さを増して行くのは、朝晩眺め... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 菓子の譜出版社: ConTenDo概要: いま生きて居れば、すくなくとも百ちかい年の人であらう。 或は百を踰える年なのかも知れない。 明治時代の海軍の軍医である。 その頃の軍艦といふものは、厳めしくはあるが同時に美しいもので、それはただ平和を保障する象徴のやうな時代であつた。 ふねも小さく、たかだか二三千噸のものが大きい方で...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 鰯出版社: ConTenDo概要: 越生と書いておごせという。 埼玉も西の方の、山へ寄った小さな町である。 近くに梅の名所があるので、近年は人も知って新月ヶ瀬などというが、それ程の所でもない。 然し梅の咲く頃、坂戸の町からバスで越生の方へ向いて行くと、先ず秩父の方の連山が濃い紫にくっきりと見える。 町へはいって板葺の低...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 雨の宿出版社: ConTenDo概要: 久し振りで京都の秋を観ようと、十月十五日の朝東京駅を発つ時、偶然会った山内義雄さんから、お宿はと聞かれて、実は志す家はあるが通知もしてないことをいうと、それでは万一の場合にと、名刺に書き添えた紹介を下すったが、それは鴨川に近い三本木という、かねて私もひそかに見当をつけたことのあ... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 野の墓出版社: ConTenDo概要: 流離のうちに秋が来た。 まだ彼岸だといふのに、ある朝、合服を着て往来へ出たら、日蔭の片側が寒くて、われ知らず日の当る方を歩いて居た。 やはり信濃路だなと思つた。 毎朝見る姨捨山の姿がくつきりとして来て、空はいよ/\青かつた。 この町へ来てもう三月近くになる。 終戦にはなつたが...商品価格: ¥0(税込)