島木健作
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タイトル: 東旭川村にて出版社: ConTenDo概要: 私は旭川へ來て友人のMに逢ひ、彼の案内で東旭川村を訪ねた。 九月も十日すぎのある日だつた。 Mはほとんど十五年來の友人である。 彼とは今度は三年ぶりで逢つた。 何年に一度か、どつちかが思ひがけない、といふ逢ひ方で逢ふ。 しかし話し出すと昨日まで毎日顏を合してゐたとでもいふ風で...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 赤蛙出版社: ConTenDo概要: 寝つきりに寝つくやうになる少し前に修善寺へ行つた。 その頃はもうずゐぶん衰弱してゐたのだが、自分ではまだそれほどとは思つてゐなかつた。 少し体を休めれば、ぢきに元気を回復するつもりでゐた。 温泉そのものは消極性の自分の病気には却つてわるいので、私はただ静かな環境にたつたひとりでゐるこ....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 黎明出版社: ConTenDo概要: 若い地區委員會の書記の太田健造は、脚の折れ曲つたテーブルの上に心持ち前かゞみになり、速力をもつて書類に何か書き込んでゐた。 ――街道筋の家並みがとだえがちになり、ひろびろとした田圃の眺めがちやうどそこから展けようとするあたりにその家は建つてゐた。 暮れかけて間もない街道をまつすぐに......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 盲目出版社: ConTenDo概要: その日の午後も古賀はきちんと膝を重ねたまゝそこの壁を脊にして坐つてゐた。 本をよむことができなくなつてからといふもの、古賀には一日ぢゆうなにもすることがないのだ。 終日ぽつねんとして暗やみのなかにすわつてゐるばかりである。 時々彼は立上つて房のなかを行つたり來たりする。 わづか三歩半...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 第一義の道出版社: ConTenDo概要: 「もう何時かしら」と眼ざめた瞬間におちかは思つた。 思はずはつとした氣持で、頭を上げて雨戸の方を見た。 戸の外はまだひつそりとして、隙間のどの一つからも白んだ向うはのぞかれはしない。 安心して、寢返りを打つたが、まだどこか心の焦點のきまらぬ氣持で眼をしばたたいてゐると、闇のなかに浮動す....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 黒猫出版社: ConTenDo概要: 病気が少しよくなり、寝ながら本を読むことができるようになった時、最初に手にしたものは旅行記であった。 以前から旅行記は好きだったが、好きなわりにはどれほども読んでいなかった。 人と話し合って見ても旅行記は案外読まれていず、少くともある種の随筆などとはくらべものにはならぬようであった......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 癩出版社: ConTenDo概要: 1 新しく連れて来られたこの町の丘の上の刑務所に、太田は服役後はじめての真夏を迎えたのであった。 暑さ寒さも肌に穏やかで町全体がどこか眠ってでもいるかのような、瀬戸内海に面したある小都市の刑務所から、何か役所の都合ででもあったのであろう、慌ただしくただひとりこちら... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: ジガ蜂出版社: ConTenDo概要: 初夏と共に私の病室をおとづれる元気な訪問客はジガ蜂である。 ジガ蜂の颯爽たる風姿はいかにもさかんな活動的な季節の先駆けたるにふさはしく、沈んだ病室内の空気までがにはかに活気を帯びて来るやうに思はれるのだつた。 彼等は一刻もぢつとしてゐるといふことを知らない。 飛んでゐる時は勿論、とま....商品価格: ¥0(税込)