武田麟太郎
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タイトル: 反逆の呂律出版社: ConTenDo概要: 1 囚衣を脱ぐ。 しかし、着るものがなかつた。 連れて来られた時は木綿縞の袷だつた。 八月の炎天の下をそれでは歩けないだらう。 考へて襦袢一枚になつた。 履きものには三銭の藁草履を買つた。 仙吉はかうして午前五時、S監獄の小門から出た。 癪なので振りかへらずに...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 日本三文オペラ出版社: ConTenDo概要: 白い雲。 ぽつかり広告軽気球が二つ三つ空中に浮いてゐる。 ――東京の高層な石造建築の角度のうちに見られて、これらが陽の工合でキラキラと銀鼠色に光つてゐる有様は、近代的な都市風景だと人は云つてゐる。 よろしい。 我々はその「天勝大奇術」又は「何々カフェー何日開店」とならべられた四角い赤...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 釜ヶ崎出版社: ConTenDo概要: カツテ、幾人カノ外来者ガ、案内者ナクシテ、コノ密集地域ノ奥深ク迷ヒ込ミ、ソノママ行先不明トナリシ事ノアリシト聞ク――このやうに、ある大阪地誌に下手な文章で結論されてゐる釜ヶ崎は「ガード下」の通称があるやうに、恵美須町市電車庫の南、関西線のガードを起点としてゐるのであるが、さすが... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 一の酉出版社: ConTenDo概要: 帯と湯道具を片手に、細紐だけの姿で大鏡に向ひ、櫛をつかつてゐると、おきよが、ちよつと、しげちやん、あとで話があるんだけど、と云つた、――あらたまつた調子も妙だが、それよりは、平常は当のおしげをはじめ雇人だけではなく、実の妹のおとしや兄の女房のおつねにまでも、笑ひ顔一つ見せずつん... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 現代詩出版社: ConTenDo概要: とにかく自分はひどく疲れてゐる。 朝から数度にわたつて解熱剤を服んで見るが、熱は少しも下らない。 もつとも、この熱さましの頓服と云ふのは、銭惜しみする妻が近くの薬局で調合させた得態の知れぬ安物なので、効き目なぞ怪しいのだらう。 よけい頭ががんがんと痛むし、咽喉がつまつたやうでいくら咳....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 大凶の籤出版社: ConTenDo概要: どんな粗末なものでも、仕立下しの着物で町を歩いてゐて、時ならぬ雨に出逢ふ位、はかないばかり憂欝なものはない。 いや、私の神経質は、ちよつと汗をかくのにも、ざらざらと砂埃を含んだ風に吹きつけられるのにも、あるひはまた乗物や他家の座席の不潔さにも、やり切れない嫌悪の情を起させるほどで... ...商品価格: ¥0(税込)