現存在分析

著者：: 荻野恒一
出版社：: 株式会社YKコーポレーション

概要：

現存在分析は精神分析学と現象学との出合いから生まれた。それは研究室や実験室でのアカデミックな学問ではなく、臨床の現場で苦悩している人々のためのものである。
現存在分析はとりわけ、特殊な状況におけるひとりの具体的人間(現存在)に深い関心をもつ。病者を生物学的に、あるいは心理学的に治療するのではなく、<こころ>と<からだ>が語る<ことば>を現象学的に解釈し、閉じた病者の存在を共同世界に向けて開示しようとする。
本書は、ややもすれば哲学的で難解といわれる現存在分析の基礎的方法を、性愛、心身症、精神病等の具体的事例の記述と考察を通して、分かりやすく紹介する。
現代において真摯な生き方を追求し実践しようとしている人々にとって必読の書であろう。

はじめに
Ⅰ　現存在分析とは？
　1　自然科学的先入見の打破
　2　現存在分析的人間像
　3　特殊な状況における具体的人間
　4　現存在分析の対象と方法
Ⅱ　性と犯罪の現存在分析
　1　窃盗癖の女性エリカ
　2　エリカの生活史
　3　エリカの現存在分析
　4　毛皮フェチシストの男性コンラード
　5　コンラードの生活史
　6　コンラードの夢の世界
　7　コンラードの現存在分析
　8　コンラードの運命
　9　真正の性愛の現象学
Ⅲ　心身症の現存在分析
　1　しゃっくりに苦しむ一女性
　2　かの女の生活史
　3　治療状況の現存在分析
　4　身体言語の現象学
　5　書痙患者オトマル
　6　書痙の現象学
　7　現存在分析的心身論
Ⅳ　夢と実存
　1　夢という現象のあいまいさ
　2　過去の想起としての夢
　3　夢現象のあいまいさにもとづく夢解釈のちがい
　4　ドラの症例
　5　ドラの生活史
　6　ドラの第一の夢
　7　ドラの第二の夢
　8　なぜドラはフロイトを去ったか
　9　夢と実存
　10　夢から覚醒への道
Ⅴ　精神病の現存在分析
　1　精神病に対する先入見の打破
　2　ナディアの症例
　3　羞恥の現象学
　4　エレン・ウェストの症例
　5　空気の精の世界と穴窖の世界
　6　エレン・ウェストの死
　7　三十六歳の精神科女医
　8　精神分裂病性幻聴の現象学
　9　三十二歳の男子医師
　10　男子医師の現存在分析的治療
Ⅵ　精神分析と現象学との出会い
　1　フロイトと現存在分析者たち
　2　精神医学と現象学
　3　不安と負い目
　4　愛、尽力的顧慮と垂範的顧慮
　5　精神分析的人間像への現存在分析的批判
　6　精神分析の実践的状況と現存在分析論
文献
あとがき