長塚節
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タイトル: 佐渡が島 波の上出版社: ConTenDo概要: 汽船はざぶ/\と濁水を蹴つて徐ろにくだる。 信濃川も川口がすぐ近く見える。 渺茫たる海洋がだん/\と眼前に展開する。 左岸には一簇の葦の穗の茂りがあつて其先からは防波堤が屈曲して居る。 葦の茂りを後にするとそれから續いた長い磯が見え出して遙かに猫の耳のやうな二つの山が兀然として聳えて...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 教師出版社: ConTenDo概要: 此の中學へ轉任してからもう五年になる。 子供が三人出來た。 三人共男ばかりである。 此の外には自分に何の變化も無い。 依然として理化學の實驗を反覆して居る。 自分は一體褊狹な人間なのであらう、同僚ともそんなに往復はない。 田舍の教師抔といふものはてんでみじめな情ない人間が聚合して...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 開業医出版社: ConTenDo概要: 一 或田舍の町である。 裏通の或一部を覗くと洗張屋が一軒庭へ布を張つてあつて其庭先からは青菜の畑があるといふので、そこらをうろつく雞の群が青菜の畑へ出るとほう/\と雞を追ふ百姓の叱り聲が聞かれる。 春になると其の畑からさうしてそこらあたりに隱れて居た青菜が一時に黄色な頭を擡げ......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 須磨明石出版社: ConTenDo概要: 蕎麥屋 須磨の浦を一の谷へ歩いて行く。 乾き切つた街道を埃がぬかる程深い、松の木は枝も葉も埃で煤が溜つたやうに見える、敦盛の墓の木蔭にはおしろいが草村をなしてびつしりと咲いて居る、柔かな葉はやつぱり埃が掛つて居るが、赤や黄の相交つた花には目立つて見えぬ、敦盛とおしろいの花と... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: おふさ出版社: ConTenDo概要: 刈草を積んだ樣に丸く繁つて居た野茨の木が一杯に花に成つた。 青く長い土手にぽつ/\とそれが際立つて白く見える。 花に聚つて居る蟲の小さな羽の響が恐ろしい唸聲をなしつゝある。 土手に添うて田が連る。 石灰を撒いて居る百姓の短い姿がはらりと見えて居る。 白い粉が烟の如く其の手先から飛ぶ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 対州厳原港にて出版社: ConTenDo概要: 對州へ渡るには博多から夜出て朝着く。 博多へ渡るにもさうである。 汽船は荷物を主にして居るのだから客少くして我々はみじめである。 何處へ行つても朝鮮といふことをいふ。 釜山なども對州の人が眞先に行つてそれから壹州の人間が行つて開いた相だ。 北の方へ行つて見ると面白相だが船は不便だし...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 白瓜と青瓜出版社: ConTenDo概要: 庄次は小作人の子でありました。 彼の家は土着の百姓であります。 勿論百姓といふものが一旦落ちついた自分の土地を離れて彷徨ふといふことはよく/\の事情が起らない限りは決してないことであります。 自分に土地を所有する力の無いものは他の土地を借りて作物を仕付ます。 そして相應に定められた金...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 松虫草出版社: ConTenDo概要: 一 泉州の堺から東へ田圃を越えるとそこに三つの山陵がある。 中央の山陵は杉の木が一杯に掩うて蔚然と小山のやうである。 此が人工で成つたとは思はれぬ程壯大な形である。 土地は百舌鳥の耳原であるから百舌鳥の耳原の中の陵というて居るのである。 山陵のめぐりは畑で豆や稗... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 菠薐草出版社: ConTenDo概要: 余が村の一族の間には近代美人が輩出した。 それが余の母まで續いて居る。 母をうんだおばあさんといふのは七十四になるがまだ至つて達者な人である。 おばあさんの眉は美しかつたらうといふと、唯おまへの母の眉よりはよかつたといつては何時でもおばあさんは微笑する。 此おばあさんの又おばあさんに...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 弥彦山出版社: ConTenDo概要: 新潟の停車場を出ると列車の箱からまけ出された樣に人々はぞろ/\と一方へ向いて行く。 其あとへ跟いて行くとすぐに長大な木橋がある。 橋へかゝつてぶら/\と辿つて來ると古傘を手に提げた若者が余の側へ寄つて丁寧な辭儀をして新潟はどちらへお泊りですかと問うた。 彼は宿引であつたのだ。 何處と...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 浜の冬出版社: ConTenDo概要: 冬の日のことである。 鰯の漁が見たかつたので知人の案内状を持つて九十九里の濱の網主のもとへ行つた。 主人はチヨン髷の五十幾つかに見える。 丁度まくれた栗の落葉が轉つて行くやうだといへば適切で物に少しの滯りもない人である。 余の初對面の挨拶が濟むと一寸來て見ないかといふので跟いて行つて...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 才丸行き出版社: ConTenDo概要: 起きて見ると思ひの外で空には一片の雲翳も無い、唯吹き颪が昨日の方向と變りがないのみである、 滑川氏の案内で出立した、正面からの吹きつけで體が縮みあがるやうに寒い、突ンのめるやうにしてこごんだ儘走つた、炭坑會社の輕便鐵道を十町ばかり行つて爪先あがりにのぼる、左は崖になつて、崖... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 利根川の一夜出版社: ConTenDo概要: 叔父の案内で利根川の鮭捕を見に行くことになつた、晩飯が濟んで勝手元もひつそりとした頃もうよからうといふので四人で出掛けた、 叔父は小さな包を背負つて提灯をさげる、それから河は寒いと可かないからと叔母が出して呉れた二枚のどてらを、うしろのちやんと呼ばれて居る五十格恰の男が引つ... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: しらくちの花出版社: ConTenDo概要: 明治卅六年の秋のはじめに自分は三島から箱根の山越をしたことがある。 箱根村に近づいて来た頃霧が自分の周囲を罩めた。 霧は微細なる水球の状態をなして目前を流れる。 冷かさが汗の肌にしみ/″\と感じた。 段々行くと皿程の大さの白いものが其霧の中に浮んで居るやうに見えた。 それが非常に近...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 太十と其犬出版社: ConTenDo概要: 一 太十は死んだ。 彼は「北のおっつあん」といわれて居た。 それは彼の家が村の北端にあるからである。 門口が割合に長くて両方から竹藪が掩いかぶって居る。 竹藪は乱伐の為めに大分荒廃して居るが、それでも庭からそこらを陰鬱にして居る。 おっつあんというのはおじさんでもなく又...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 炭焼のむすめ出版社: ConTenDo概要: 一 低い樅の木に藤の花が垂れてる所から小徑を降りる。 炭燒小屋がすぐ眞下に見える。 狹い谷底一杯になつて見える。 あたりは朗かである。 トーントーンといふ音が遙に谷から響き渡つて聞える。 谷底へついて見ると紐のちぎれさうな脚袢を穿いた若者が炭竈の側で樫の大きな榾へ楔を打ち...商品価格: ¥0(税込)
