小林多喜二
検索結果8件中1件から8件までを表示
-
タイトル: 蟹工船出版社: ConTenDo概要: 「おい地獄さ行ぐんだで!」 二人はデッキの手すりに寄りかかって、蝸牛が背のびをしたように延びて、海を抱え込んでいる函館の街を見ていた。――漁夫は指元まで吸いつくした煙草を唾と一緒に捨てた。巻煙草はおどけたように、色々にひっくりかえって、高い船腹をすれずれに落ちて行った。彼は身体一杯酒...商品価格: ¥0(税込)
-
タイトル: 北海道の「俊寛」出版社: ConTenDo概要: 十一月の半ば過ぎると、もう北海道には雪が降る。 (私は北海道にいる。)乾いた、細かい、ギリギリと寒い雪だ。 ――チヤツプリンの「黄金狂時代」を見た人は、あのアラスカの大吹雪を思い出すことが出来る、あれとそのまゝが北海道の冬である。 北海道へ「出稼」に来た人達は冬になると、「内地」の正....商品価格: ¥0(税込)
-
タイトル: 母たち出版社: ConTenDo概要: 弟が面会に行くとき、今度の事件のことをお前に知らせるようにと云ってやった。 差入のことや家のことや色々なことを云った後で、弟は片方の眼だけを何べんもパチ/\させながら、「故里の方はとても吹雪いているんだって。」と云った。 するとお前は、「そうだろうな、十二月だもの。 ――こっち....商品価格: ¥0(税込)
-
タイトル: 級長の願い出版社: ConTenDo概要: 先生。 私は今日から休ませてもらいます。 みんながイジめるし、馬鹿にするし、じゅ業料もおさめられないし、それに前から出すことにしてあった戦争のお金も出せないからです。 先生も知っているように、私は誰よりもウンと勉強して偉くなりたいと思っていましたが、吉本さんや平賀さんまで、戦争....商品価格: ¥0(税込)
-
タイトル: 疵出版社: ConTenDo概要: 「モップル」(赤色救援会)が、「班」組織によって、地域別に工場の中に直接に根を下し、大衆的基礎の上にその拡大強化をはかっている。 ××地区の第××班では、その班会を開くたびに、一人二人とメンバーが殖えて行った。 新しいメンバーがはいってくると、簡単な自己紹介があった。 ――ある時....商品価格: ¥0(税込)
-
タイトル: 争われない事実出版社: ConTenDo概要: 誰よりも一番親孝行で、一番おとなしくて、何時でも学校のよく出来た健吉がこの世の中で一番恐ろしいことをやったという――だが、どうしても母親には納得がいかなかった。 見廻りの途中、時々寄っては話し込んで行く赫ら顔の人の好い駐在所の旦那が、――「世の中には恐ろしい人殺しというものがある... ...商品価格: ¥0(税込)
-
タイトル: 父帰る出版社: ConTenDo概要: 夫が豊多摩刑務所に入ってから、七八ヵ月ほどして赤ん坊が生れた。 それでお産の間だけお君はメリヤス工場を休まなければならなかった。 工場では共産党に入っていた男の女房を一日も早く首にしたかったので、それがこの上もなくいゝ機会だった。 ――それでお君は首になってしまった。 お君は監...商品価格: ¥0(税込)
-
タイトル: 党生活者出版社: ConTenDo概要: 一 洗面所で手を洗っていると、丁度窓の下を第二工場の連中が帰りかけたとみえて、ゾロ/\と板草履や靴バキの音と一緒に声高な話声が続いていた。 「まだか?」 その時、後に須山が来ていて、言葉をかけた。 彼は第二工場だった。 私は石鹸だらけになった顔で振りかえっ....商品価格: ¥0(税込)