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葛西善蔵

検索結果14件中1件から14件までを表示
  • タイトル: 子をつれて
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要:  一  掃除をしたり、お菜を煮たり、糠味噌を出したりして、子供等に晩飯を済まさせ、彼はようやく西日の引いた縁側近くへお膳を据えて、淋しい気持で晩酌の盃を嘗めていた。 すると御免とも云わずに表の格子戸をそうっと開けて、例の立退き請求の三百が、玄関の開いてた障子の間から、... ...
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  • タイトル: 遊動円木
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要:  私は奈良にT新夫婦を訪ねて、一週間ほど彼らと遊び暮した。 五月初旬の奈良公園は、すてきなものであった。 初めての私には、日本一とも世界一とも感歎したいくらいであった。 彼らは公園の中の休み茶屋の離れの亭を借りて、ままごとのような理想的な新婚の楽しみに耽っていた。 私も別に同じような亭...
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  • タイトル: 父の葬式
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要:  いよいよ明日は父の遺骨を携えて帰郷という段になって、私たちは服装のことでちょっと当惑を感じた。 父の遺物となった紋付の夏羽織と、何平というのか知らないが藍縞の袴もあることはあるのだが、いずれもひどく時代を喰ったものだった。 弟も前年細君の父の遺物に贈られた、一族のことで同じ丸に三つ......
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  • タイトル: 父の出郷
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要:  ほんのちょっとしたことからだったが、Fを郷里の妻の許に帰してやる気になった。 母や妹たちの情愛の中に一週間も遊ばしてやりたいと思ったのだ。 Fをつれてきてからちょうど一年ほどになるが、この夏私の義母が死んだ時いっしょに帰って、それもほんの二三日妻の実家に泊ってきたきりだった。 この夏....
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  • タイトル: 死児を産む
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要:  この月の二十日前後と産婆に言われている大きな腹して、背丈がずんぐりなので醤油樽か何かでも詰めこんでいるかのような恰好して、おせいは、下宿の子持の女中につれられて、三丁目附近へ産衣の小ぎれを買いに出て行った。 ――もう三月一日だった。 二三日前に雪が降って、まだ雪解けの泥路を、女中と......
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  • タイトル: 湖畔手記
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要:  たうとうこゝまで逃げて來たと云ふ譯だが――それは實際悲鳴を揚げながら――の氣持だつた。 がさて、これから一體どうなるだらう、どうするつもりなんだらうと、旅館の二階の椅子から、陰欝な色の湖面を眺めやつて、毎日幾度となく自問自答の溜息をついた。 海を拔くこと五千八十八尺の高處、俗塵を超......
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  • タイトル: 蠢く者
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要:  父は一昨年の夏、六十五で、持病の脚氣で、死んだ。 前の年義母に死なれて孤獨の身となり、急に家財を片附けて、年暮れに迫つて前觸れもなく出て來て、牛込の弟夫婦の家に居ることになつたのだ。 その時分から父はかなり歩くのが難儀な樣子だつた。 杖無しには一二町の道も骨が折れる風であつたが、自分....
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  • タイトル: 奇病患者
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要:  薪の紅く燃えてゐる大きな爐の主座に胡坐を掻いて、彼は手酌でちび/\盃を甞めてゐた。 その傍で細君は、薄暗い吊洋燈と焚火の明りで、何かしら子供等のボロ布片のやうな物をひろげて、針の手を動かしてゐた。 そして夫の、今夜はほとんど五合近い酒を飮んでも醉を發しない、暗い、不機嫌な、屈托顏を......
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  • タイトル: 血を吐く
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要:  おせいが、山へ來たのは、十月二十一日だつた。 中禪寺からの、夕方の馬車で着いたのだつた。 その日も自分は朝から酒を飮んで、午前と午後の二囘の中禪寺からの郵便の配達を待つたが、當てにしてゐる電報爲替が來ないので、氣を腐らしては、醉ひつぶれて蒲團にもぐつてゐたのだつた。 「東京から女....
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  • タイトル: おせい
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要: 「近所では、お腹の始末でもしに行つたんだ位に思つてゐるんでせう。 さつきも柏屋のお内儀さんに會つたら、おせいちやんは東京へ行つてたいへん綺麗になつて歸つたと、ヘンなやうな顏して視てましたよ」と、ある晩もお酌をしながら、おせいは私に云つた。  父の四十九日の供養に東京に出て行つて、......
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  • タイトル: 遁走
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  神田のある会社へと、それから日比谷の方の新聞社へ知人を訪ねて、明日の晩の笹川の長編小説出版記念会の会費を借りることを頼んだが、いずれも成功しなかった。 私は少し落胆してとにかく笹川のところへ行って様子を聞いてみようと思って、郊外行きの電車に乗った。  笹川の下宿には原......
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  • タイトル: 浮浪
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要: 一 「また今度も都合で少し遅くなるかも知れないよ。 どこかへ行つて書いて来るつもりだから……」と、朝由井ヶ浜の小学校へ出て行く伜のFに声をかけたが、「いゝよ」とFは例の簡単な調子で答へた。  遠い郷里から私につれられて来て建長寺内のS院の陰気な室で二人で暮すことになつてから......
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  • タイトル: 椎の若葉
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要:  六月半ば、梅雨晴れの午前の光りを浴びてゐる椎の若葉の趣を、ありがたくしみ/″\と眺めやつた。 鎌倉行き、売る、売り物――三題話し見たやうなこの頃の生活ぶりの間に、ふと、下宿の二階の窓から、他家のお屋敷の庭の椎の木なんだが実に美しく生々した感じの、光りを求め、光りを浴び、光りに戯れ... ...
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  • タイトル: 哀しき父
    著者: 葛西善蔵
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  彼はまたいつとなくだん/\と場末へ追ひ込まれてゐた。  四月の末であつた。 空にはもや/\と靄のやうな雲がつまつて、日光がチカ/\桜の青葉に降りそゝいで、雀の子がヂユク/\啼きくさつてゐた。 どこかで朝から晩まで地形ならしのヤートコセが始まつてゐた……。  彼は疲れ...
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