昭和と平成の今昔物語―タンパク質結晶学の周辺―
概要:
今から約100年前X線結晶解析法が誕生した。この方法は物質の構造(原子配置)を見るもので、最初は食塩の構造にはじまり、有機化合物など次第に複雑な分子に適用されていった。今から半世紀余前に、我々ははじめて蛋白質(ミオグロビン)の立体構造を目にすることができた。ここで蛋白質結晶学が誕生したといえ、この原理を基により様々な分野の蛋白質の構造解明に適用されていった。近年では、ウイルスやリボソームなどより複雑な蛋白質・核酸複合体に適用され、時代とともに蛋白質結晶学の適用範囲は広がっていった。この方法は結晶になりさえすればどんなものでも適用可能で、分子量が一億近い複合体も最近では珍しくなくなっている。
この方法の発展には、周辺の科学技術の進歩と深い関わりがある。第一にコンピューターの発達がある。結晶構造を決定するには膨大な量の計算が必要で、分子が複雑になればなるほど計算量は増加する。従ってコンピューターの発達とともに、複雑な分子の構造が決定されるようになったといえる。第二は遺伝子工学の発達で、これにより天然に存在しない分子など、適用範囲が大きく広がった。第三はシンクロトロン放射光の登場であろう。放射光はよく知られているように、X線発生装置で発生させるX線よりも桁違いに強く、X線の波長を自由に選ぶことができ、またビームの平行性が非常に優れている。このような特性を生かして、微小な結晶や巨大な分子の結晶のX線測定が可能となり、X線解析の幅が広がった。
このような科学技術はいずれもこの半世紀に見違えるように発達した。二昔前に画期的な技術であったものが、一昔前には日常的になり、今ではその方法や技術は新しいものに取って代わられている。結果として、蛋白質結晶学といっても内容は変わり、この方法に携わっている人々のもつ常識は時代とともに大きく変化している。私は蛋白質結晶学に約40年間関わってきたが、その間に起こったことや常識の変化を書いてみたいと思った。その時々のX線強度測定や解析計算について具体的に述べ、その変遷を浮かび上がらせようとした。また、蛋白質結晶学にまつわることについても率直に述べた。これらは私個人の経験・体験に基づいており、特殊とも偏っているともいえよう。一研究者の考え・想いを自由に書いて、このような本が出来上がったといえる。
- ジャンル:
- 理学・工学 > 生物学
- 販売開始:
- 2016/08/03
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