化学療法の崩壊
概要:
イギリスの細菌学A.フレミングは、自然に生えた青カビの培養液からこの微生物が代謝的に生産し、病原菌の増殖を阻止する有機化合物(抗生物質という)を見出し、ペニシリンと命名した。そしてかれは、この抗生物質を用いてさまざまな感染症を治療する、いわゆる化学療法を確立した(1929)。
その後世界の科学者はカビ(真菌類)や放線菌(細菌類)、細菌(眞正細菌類)の土壌から採取し、その培養液からさまざまな種類の抗生物質を分離し、精製して感染症の治療に応用した。そして、『人類はこれで病原菌から救われた』として化学療法を謳歌した。ところがほどなくして、これら病原微生物の中から抗生物質に対して耐性の突然変異菌が生れていることが、次々と見出され、結果として現今では化学療法は打つ手を全く失っているのである。さらに筆者は病原性微生物が恐るべき“多剤耐性”をすでに進化的に獲得していることを発見し、科学誌に警鐘を鳴らした。
何故化学療法は崩壊したか
本書“化学療法の崩壊”には問題の主要なポイントはすでに論述してありますので、とくに注目したいのは次の諸頁です。
微生物の薬剤耐性化はDNA塩基における自然突然変異によりおこる。
それはDNAポリメラーゼが誤った塩基種を取り入れるからである。
自然突然変異はDNAの塩基配列をランダムに変える。
DNA配列の自然突然変異は大腸菌の場合、10のマイナス8乗-10のマイナス10乗 変異/細胞/分裂の頻度で起こり、変異は累積されてゆく。
大腸菌(K-12株)の感受性菌集団をストレプトマイシンと全く接触させることなしに、ストレプトマイシン耐性菌を取り出すことができる(Lederberg and Lederberg, 1952)
感受性酵母菌を高度に有毒なカドミウム(Cd)と全く接触させることなしに、カドミウム耐性菌を取り出すことができる。しかも、これらのカドミウム耐性菌種のそれぞれの耐性度はいろいろである(Nakamura, 1963)
細菌の薬剤耐性化、多剤耐性化、さらに多剤排出機構が発見されている。その発端は中村が発見した薬剤耐性遺伝子acrA+(1966)および acrB+(1978)にあった。
哺乳動物細胞までも、すでに多剤耐性機構を進化させている。
グラム陰性菌はグラム陽性菌に比べて、薬剤耐性進化ははるかに進んでいる。さらに、高等植物の光合成進化はグラム陰性菌進化から始まる。
- ジャンル:
- 理学・工学 > 化学
- 販売開始:
- 2018/07/24
- ページ数
- 44ページ
- ファイルサイズ:
- 2.56MB
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- J0010380BK0099994001
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