心の病みを抜けて世界と認識の彼方へ ~ヤスパース(精神病理学)、フッサール、三島由紀夫と仏教からの一考察~
概要:
本書は様々な観点から「心とは何か」を問う内容になっている。それは、心とその心が生きる世界との関係性や心が世界における事象をどのように認識するのか、またそうした認識の「限界性」や認識を超え出ること=「認識の彼方」というものを探究することで「心」というものへと肉迫するのである。
このような主題によって本書の各章は貫かれているが、ただし各章それ自身は内容的にそれ単独で成立している。例えば、ヤスパースの精神病理学や彼の実存哲学、また現状の精神医学に関心がある者は本書の第一章を読めば、その理解を深めることができる。また、現代西洋哲学の代表格とも言える「フッサール現象学」の全体像を理解したい者は、本書第二章を読めば、その哲学的内容を把握することができる。さらに、三島由紀夫の『豊饒の海』に関する全く新しい解釈やその解釈に深く関与する仏教の唯識説や空の思想(中観)の本質的内実に関心がある者は、本書第三章を読めば、その理解に接近できよう。従って、本書は、各章の内容を理解するために必ずしも全章を読む必要はなく、読者の関心やニーズに合わせて好きなように読める構成になっている。
ただ、これはあくまでも筆者の願望に過ぎないが、本書を手にした者は、最終的には本書全章に強い関心を抱き、それらを読了することになるだろう。なぜならば、本書の各章を読むことで、読み手は、おのずと本書の統一的なテーマに引き込まれて、結果的に全章を読むことになると筆者は考えるからである。素朴な想いとして、本書を読む者がこれをキッカケにして「心とは何か?」等々を考えることになってくれれば、筆者にとってこれほど嬉しいことはない。
著者紹介:
龍善(りゅうぜん)
東京都出身。東北大学大学院文学研究科哲学専攻(博士前期課程)修了後、実家の東京に戻り、東京にある大学院の文学研究科哲学専攻(博士後期課程)に進学する。そこでフッサール現象学を中心に現代ドイツ哲学を研究するが、母親の闘病をサポートするために大学院を単位取得退学(満期退学)する。以後、在野で哲学研究を継続し、2024年にそれまでの研究成果を基にした当該著作を刊行する。前著には、20世紀を代表する哲学者M・ハイデガーの『存在と時間』を徹底的に究明した、『生きてる意味、わかんねえ~院卒ニートが『存在と時間』を本気で読み解く~』(アットマーククリエイト 2023)がある。
販売(無期限): ¥ 1,540(税込)