久生十蘭
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タイトル: 水草出版社: ConTenDo概要: 朝の十時ごろ、俳友の国手石亭が葱とビールをさげてやってきた。 「へんな顔をしていますね。 どうしました」 「田阪で池の水を落とすのが耳について眠れない。 もう三晩になる」 「あれにはわたしもやられました。 池を乾して畑にするんだそうです」 「それはいいが、そのビールはなんだ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 昆虫図出版社: ConTenDo概要: 伴団六は、青木と同じく、大して才能のなさそうな貧乏画かきで、地続きの古ぼけたアトリエに、年増くさい女と二人で住んでいた。 青木がその裏へ越して以来の、極く最近のつきあいで、もと薬剤師だったというほか、くわしいことは一切知らなかった。 職人か寄席芸人かといったように髪を角......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 骨仏出版社: ConTenDo概要: 床ずれがひどくなって寝がえりもできない。 梶井はあおのけに寝たまま、半蔀の上の山深い五寸ばかりの空の色を横眼で眺めていると、伊良がいつものように、「きょうはどうです」と見舞いにきた。 疎開先で看とるものもなく死にかけているのをあわれに思うかして、このごろは午後か夜か、かならず......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 虹の橋出版社: ConTenDo概要: 一 北川千代は栃木刑務所で服役中の受刑者で、公訴の罪名は傷害致死、刑期は六年、二十八年の三月に確定し、小菅の東京拘置所から栃木刑務所に移され、その年の七月に所内で女児を分娩した。 受刑者名簿には北川千代となっているが、記名の女性は二十七年の九月に淡路島の三熊山で死亡し... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: ユモレスク出版社: ConTenDo概要: 一 出かける時間になったが、やすが来ない。 離室になっている奥の居間へ行ってみると、竹の葉影のゆらぐ半月窓のそばに、二月堂が出ているだけで、あるじはいなかった。 壁際に坐って待っているうちに、六十一になるやすが、息子の伊作に逢いに一人でトコトコ巴里までやってきた十年前の......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 無月物語出版社: ConTenDo概要: 一 後白河法皇の院政中、京の加茂の川原でめずらしい死罪が行われた。 大宝律には、笞、杖、徒、流、死と、五刑が規定されているが、聖武天皇以来、代々の天皇はみな熱心な仏教の帰依者で、仏法尊信のあまり、刑をすこしでも軽くしてやることをこのうえもない功徳だとし、とりわけ死んだ... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 猪鹿蝶出版社: ConTenDo概要: いつお帰りになって? 昨夜? よかったわ、間にあって……ちょいと咲子さん、昨日、大阪から久能志貴子がやってきたの。 しっかりしないと、たいへんよ……あなたを担いでみたって、しょうがないじゃありませんか。 ええ、ほんとうの話……誰だっておどろくわ。 どんなことがあったって、東京なんかへ....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 母子像出版社: ConTenDo概要: 進駐軍、厚木キャンプの近くにある、聖ジョセフ学院中学部の初年級の担任教諭が、受持の生徒のことで、地区の警察署から呼出しを受けた。 年配の司法主任が、知的な顔をした婦人警官を連れて調室に入ってきた。 「お呼びたてして、恐縮でした」と軽く会釈すると、事務机を挟んで教諭と向きあ......商品価格: ¥0(税込)