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太宰治

検索結果252件中91件から135件までを表示
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  • タイトル:
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  もう、三十七歳になります。 こないだ、或る先輩が、よく、まあ、君は、生きて来たなあ、としみじみ言っていました。 私自身にも、三十七まで生きて来たのが、うそのように思われる事があります。 戦争のおかげで、やっと、生き抜く力を得たようなものです。 もう、子供が二人あります。 上が女の子...
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  • タイトル: 三月三十日
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  満洲のみなさま。  私の名前は、きっとご存じ無い事と思います。 私は、日本の、東京市外に住んでいるあまり有名でない貧乏な作家であります。 東京は、この二、三日ひどい風で、武蔵野のまん中にある私の家には、砂ほこりが、容赦無く舞い込み、私は家の中に在りながらも、まるで地べたに、あぐら....
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  • タイトル: 作家の像
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  なんの随筆の十枚くらい書けないわけは無いのであるが、この作家は、もう、きょうで三日も沈吟をつづけ、書いてはしばらくして破り、また書いては暫くして破り、日本は今、紙類に不足している時ではあるし、こんなに破っては、もったいないと自分でも、はらはらしながらそれでも、つい破ってしまう。 ... ...
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  • タイトル: 「晩年」と「女生徒」
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: 「晩年」も品切になったようだし「女生徒」も同様、売り切れたようである。 「晩年」は初版が五百部くらいで、それからまた千部くらい刷った筈である。 「女生徒」は初版が二千で、それが二箇年経って、やっと売切れて、ことしの初夏には更に千部、増刷される事になった。 「晩年」は、昭和十一年の六月に....
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  • タイトル: 酒ぎらい
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  二日つづけて酒を呑んだのである。 おとといの晩と、きのうと、二日つづけて酒を呑んで、けさは仕事しなければならぬので早く起きて、台所へ顔を洗いに行き、ふと見ると、一升瓶が四本からになっている。 二日で四升呑んだわけである。 勿論、私ひとりで四升呑みほしたわけでは無い。 おとといの晩はめ...
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  • タイトル: 困惑の弁
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  正直言うと、私は、この雑誌(懸賞界)から原稿書くよう言いつけられて、多少、困ったのである。 応諾の御返事を、すぐには書けなかったのである。 それは、私の虚傲からでは無いのである。 全然、それと反対である。 私は、この雑誌を、とりわけ卑俗なものとは思っていない。 卑俗といえば、どんな...
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  • タイトル: 心の王者
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  先日、三田の、小さい学生さんが二人、私の家に参りました。 私は生憎加減が悪くて寝ていたのですが、ちょっとで済む御話でしたら、と断って床から抜け出し、どてらの上に羽織を羽織って、面会いたしました。 お二人とも、なかなかに行儀がよろしく、しかもさっさと要談をすまし、たちどころに引上げま......
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  • タイトル: 地図
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  琉球、首里の城の大広間は朱の唐様の燭台にとりつけてある無数の五十匁掛の蝋燭がまばゆい程明るく燃えて昼の様にあかるかつた。  まだ敷いてから間もないと思はれる銀べりの青畳がその光に反射して、し80き通るやうな、スガ/\しい色合を見せて居た。 慶長十九年。 内地では豊臣の世が徳川の世....
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  • タイトル: 待つ
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  省線のその小さい駅に、私は毎日、人をお迎えにまいります。 誰とも、わからぬ人を迎えに。  市場で買い物をして、その帰りには、かならず駅に立ち寄って駅の冷いベンチに腰をおろし、買い物籠を膝に乗せ、ぼんやり改札口を見ているのです。 上り下りの電車がホームに到着するごとに、たくさんの人....
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  • タイトル: 渡り鳥
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: おもてには快楽をよそい、心には悩みわずらう。                    ――ダンテ・アリギエリ  晩秋の夜、音楽会もすみ、日比谷公会堂から、おびただしい数の烏が、さまざまの形をして、押し合い、もみ合いしながらぞろぞろ出て来て、やがておのおのの家路に向って、むらむら... ...
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  • タイトル: やんぬる哉
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  こちら(津軽)へ来てから、昔の、小学校時代の友人が、ちょいちょい訪ねて来てくれる。 私は小学校時代には、同級生たちの間でいささか勢威を逞しゅうしていたところがあったようで、「何せ昔の親分だから」なんて、笑いながら言う町会議員などもある。 同級生たちはもうみんな分別くさい顔の親父にな......
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  • タイトル:
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: 撰ばれてあることの 恍惚と不安と 二つわれにあり          ヴェルレエヌ  死のうと思っていた。 ことしの正月、よそから着物を一反もらった。 お年玉としてである。 着物の布地は麻であった。 鼠色のこまかい縞目が織りこめられていた。 これは夏に着る着物であろう。 夏ま...
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  • タイトル: トカトントン
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  拝啓。  一つだけ教えて下さい。 困っているのです。  私はことし二十六歳です。 生れたところは、青森市の寺町です。 たぶんご存じないでしょうが、寺町の清華寺の隣りに、トモヤという小さい花屋がありました。 わたしはそのトモヤの次男として生れたのです。 青森の中学校を出て...
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  • タイトル: 鉄面皮
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  安心し給え、君の事を書くのではない。 このごろ、と言っても去年の秋から「右大臣実朝」という三百枚くらいの見当の小説に取りかかって、ことしの二月の末に、やっと百五十一枚というところに漕ぎつけて、疲れて、二、三日、自身に休暇を与えて、そうしてことしの正月に舟橋氏と約束した短篇小説の事... ...
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  • タイトル: たずねびと
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  この「東北文学」という雑誌の貴重な紙面の端をわずか拝借して申し上げます。 どうして特にこの「東北文学」という雑誌の紙面をお借りするかというと、それには次のような理由があるのです。  この「東北文学」という雑誌は、ご承知の如く、仙台の河北新報社から発行せられて、それは勿論、関東関......
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  • タイトル: 俗天使
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  晩ごはんを食べていて、そのうちに、私は箸と茶碗を持ったまま、ぼんやり動かなくなってしまって、家の者が、どうなさったの、と聞くから、私は、あ、厭きちゃったんだ、ごはんを、たべるのが厭きちゃったんだ、とそう言って、そのことばかりでは無く、ほかにも考えていたことがあって、それゆえ、ご... ...
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  • タイトル: 創生記
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: ――愛ハ惜シミナク奪ウ。  太宰イツマデモ病人ノ感覚ダケニ興ジテ、高邁ノ精神ワスレテハイナイカ、コンナ水族館ノめだかミタイナ、片仮名、読ミニククテカナワヌ、ナドト佐藤ジイサン、言葉ハ怒リ、内心ウレシク、ドレドレ、ト眼鏡カケナオシテ、エエト、ナニナニ?――海ノ底デネ、青イ袴ハ... ...
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  • タイトル: 善蔵を思う
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  ――はっきり言ってごらん。 ごまかさずに言ってごらん。 冗談も、にやにや笑いも、止し給え。 嘘でないものを、一度でいいから、言ってごらん。  ――君の言うとおりにすると、私は、もういちど牢屋へ、はいって来なければならない。 もういちど入水をやり直さなければならない。 もういち...
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  • タイトル: 惜別
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: これは日本の東北地方の某村に開業している一老医師の手記である。  先日、この地方の新聞社の記者だと称する不精鬚をはやした顔色のわるい中年の男がやって来て、あなたは今の東北帝大医学部の前身の仙台医専を卒業したお方と聞いているが、それに違いないか、と問う。 そのとおりだ、と私は答えた......
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  • タイトル: 清貧譚
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  以下に記すのは、かの聊斎志異の中の一篇である。 原文は、千八百三十四字、之を私たちの普通用ゐてゐる四百字詰の原稿用紙に書き写しても、わづかに四枚半くらゐの、極く短い小片に過ぎないのであるが、読んでゐるうちに様々の空想が湧いて出て、優に三十枚前後の好短篇を読了した時と同じくらゐの満... ...
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  • タイトル: 雀こ
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: 長え長え昔噺、知らへがな。 山の中に橡の木いっぽんあったずおん。 そのてっぺんさ、からす一羽来てとまったずおん。 からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。 また、からすあ、があて啼けば、橡の実あ、一つぼたんて落づるずおん。 また、からすあ、があ...
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  • タイトル:
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  この津軽へ来たのは、八月。 それから、ひとつきほど経って、私は津軽のこの金木町から津軽鉄道で一時間ちかくかかって行き着ける五所川原という町に、酒と煙草を買いに出かけた。 キンシを三十本ばかりと、清酒を一升、やっと見つけて、私はまた金木行の軽便鉄道に乗った。 「や、修治。」と私の幼....
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  • タイトル: 水仙
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: 「忠直卿行状記」という小説を読んだのは、僕が十三か、四のときの事で、それっきり再読の機会を得なかったが、あの一篇の筋書だけは、二十年後のいまもなお、忘れずに記憶している。 奇妙にかなしい物語であった。  剣術の上手な若い殿様が、家来たちと試合をして片っ端から打ち破って、大いに得意......
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  • タイトル: 親友交歓
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  昭和二十一年の九月のはじめに、私は、或る男の訪問を受けた。  この事件は、ほとんど全く、ロマンチックではないし、また、いっこうに、ジャアナリスチックでも無いのであるが、しかし、私の胸に於いて、私の死ぬるまで消し難い痕跡を残すのではあるまいか、と思われる、そのような妙に、やりき... ...
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  • タイトル: 新樹の言葉
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  甲府は盆地である。 四辺、皆、山である。 小学生のころ、地理ではじめて、盆地という言葉に接して、訓導からさまざまに説明していただいたが、どうしても、その実景を、想像してみることができなかった。 甲府へ来て見て、はじめて、なるほどと合点できた。 大きい大きい沼を掻乾して、その沼の底に、...
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  • タイトル: 新釈諸国噺
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:      凡例 一、わたくしのさいかく、とでも振仮名を附けたい気持で、新釈諸国噺という題にしたのであるが、これは西鶴の現代訳というようなものでは決してない。 古典の現代訳なんて、およそ、意味の無いものである。 作家の為すべき業ではない。 三年ほど前に、私は聊斎志異の中の一つの物語を骨....
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  • タイトル: 秋風記
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: 立ちつくし、 ものを思へば、 ものみなの物語めき、  (生田長江)  あの、私は、どんな小説を書いたらいいのだろう。 私は、物語の洪水の中に住んでいる。 役者になれば、よかった。 私は、私の寝顔をさえスケッチできる。  私が死んでも、私の死顔を、きれいにお化粧してくれる、かな...
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  • タイトル: 失敗園
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: (わが陋屋には、六坪ほどの庭があるのだ。 愚妻は、ここに、秩序も無く何やらかやら一ぱい植えたが、一見するに、すべて失敗の様子である。 それら恥ずかしき身なりの植物たちが小声で囁き、私はそれを速記する。 その声が、事実、聞えるのである。 必ずしも、仏人ルナアル氏の真似でも無いのだ。 で...
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  • タイトル: 猿面冠者
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  どんな小説を読ませても、はじめの二三行をはしり読みしたばかりで、もうその小説の楽屋裏を見抜いてしまったかのように、鼻で笑って巻を閉じる傲岸不遜の男がいた。 ここに露西亜の詩人の言葉がある。 「そもさん何者。 されば、わずかにまねごと師。 気にするがものもない幽霊か。 ハロルドのマン...
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  • タイトル: 座興に非ず
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  おのれの行く末を思い、ぞっとして、いても立っても居られぬ思いの宵は、その本郷のアパアトから、ステッキずるずるひきずりながら上野公園まで歩いてみる。 九月もなかば過ぎた頃のことである。 私の白地の浴衣も、すでに季節はずれの感があって、夕闇の中にわれながら恐しく白く目立つような気がして......
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  • タイトル: 黄金風景
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: 海の岸辺に緑なす樫の木、その樫の木に黄金の細き鎖のむすばれて   ―プウシキン―  私は子供のときには、余り質のいい方ではなかった。 女中をいじめた。 私は、のろくさいことは嫌いで、それゆえ、のろくさい女中を殊にもいじめた。 お慶は、のろくさい女中である。 林檎の皮をむかせても、むき...
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  • タイトル: 姥捨
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  そのとき、 「いいの。 あたしは、きちんと仕末いたします。 はじめから覚悟していたことなのです。 ほんとうに、もう。」変った声で呟いたので、 「それはいけない。 おまえの覚悟というのは私にわかっている。 ひとりで死んでゆくつもりか、でなければ、身ひとつでやけくそに落ちてゆくか、...
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  • タイトル:
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: 「戦争が終ったら、こんどはまた急に何々主義だの、何々主義だの、あさましく騒ぎまわって、演説なんかしているけれども、私は何一つ信用できない気持です。 主義も、思想も、へったくれも要らない。 男は嘘をつく事をやめて、女は慾を捨てたら、それでもう日本の新しい建設が出来ると思う。」  私は......
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  • タイトル: ヴィヨンの妻
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  あわただしく、玄関をあける音が聞えて、私はその音で、眼をさましましたが、それは泥酔の夫の、深夜の帰宅にきまっているのでございますから、そのまま黙って寝ていました。  夫は、隣の部屋に電気をつけ、はあっはあっ、とすさまじく荒い呼吸をしながら、机の引出しや本箱の引出しをあけ... ...
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  • タイトル: パウロの混乱
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  先日、竹村書房は、今官一君の第一創作集「海鴎の章」を出版した。 装幀瀟洒な美本である。 今君は、私と同様に、津軽の産である。 二人逢うと、葛西善蔵氏の碑を、郷里に建てる事に就いて、内談する。 もう十年経って、お互い善蔵氏の半分も偉くなった時に建てようという内談なのだから、気の永い計画...
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  • タイトル: 川端康成へ
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  あなたは文藝春秋九月号に私への悪口を書いて居られる。 「前略。 ――なるほど、道化の華の方が作者の生活や文学観を一杯に盛っているが、私見によれば、作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった。」  おたがいに下手な嘘はつかないことにしよう。 私はあなたの文章を本屋の....
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  • タイトル: 音について
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  文字を読みながら、そこに表現されてある音響が、いつまでも耳にこびりついて、離れないことがあるだらう。 オセロオであつたか、ほかの芝居であつたか、しらべてみれば、すぐ判るが、いまは、もの憂く、とにかくシエクスピア劇のひとつであることは間違ひない、とだけ言つて置いて、その芝居の人殺し... ...
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  • タイトル: 徒党について
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  徒党は、政治である。 そうして、政治は、力だそうである。 そんなら、徒党も、力という目標を以て発明せられた機関かも知れない。 しかもその力の、頼みの綱とするところは、やはり「多数」というところにあるらしく思われる。  ところが、政治の場合に於いては、二百票よりも、三百票が絶対...
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  • タイトル: 小説の面白さ
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  小説と云うものは、本来、女子供の読むもので、いわゆる利口な大人が目の色を変えて読み、しかもその読後感を卓を叩いて論じ合うと云うような性質のものではないのであります。 小説を読んで、襟を正しただの、頭を下げただのと云っている人は、それが冗談ならばまた面白い話柄でもありましょうが、事... ...
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  • タイトル: かくめい
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  じぶんで、したことは、そのように、はっきり言わなければ、かくめいも何も、おこなわれません。 じぶんで、そうしても、他におこないをしたく思って、にんげんは、こうしなければならぬ、などとおっしゃっているうちは、にんげんの底からの革命が、いつまでも、できないのです。 底本:「太宰......
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  • タイトル: 小志
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  イエスが十字架につけられて、そのとき脱ぎ捨て給いし真白な下着は、上から下まで縫い目なしの全部その形のままに織った実にめずらしい衣だったので、兵卒どもはその品の高尚典雅に嘆息をもらしたと聖書に録されてあったけれども、  妻よ、  イエスならぬ市井のただの弱虫が、毎日こうして苦... ...
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  • タイトル: わが半生を語る
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:      生い立ちと環境  私は田舎のいわゆる金持ちと云われる家に生れました。 たくさんの兄や姉がありまして、その末ッ子として、まず何不自由なく育ちました。 その為に世間知らずの非常なはにかみやになって終いました。 この私のはにかみが何か他人からみると自分がそれを誇っているように見ら....
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  • タイトル: 芸術ぎらい
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  魯迅の随筆に、「以前、私は情熱を傾けて支那の社会を攻撃した文章を書いた事がありましたけれども、それも、実は、やっぱりつまらないものでした。 支那の社会は、私がそんなに躍起となって攻撃している事を、ちっとも知りやしなかったのです。 ばかばかしい。」というような文章があって、私はそれを......
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  • タイトル: 天狗
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要:  暑い時に、ふいと思い出すのは猿簑の中にある「夏の月」である。    市中は物のにほひや夏の月    凡兆  いい句である。 感覚の表現が正確である。 私は漁師まちを思い出す。 人によっては、神田神保町あたりを思い浮べたり、あるいは八丁堀の夜店などを思い出したり、それは、さまざま...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 一問一答
    著者: 太宰治
    出版社: ConTenDo
    概要: 「何か、最近の、御感想を聞かせて下さい。」 「困りました。」 「困りましたでは、私のほうで困ります。 何か、聞かせて下さい。」 「人間は、正直でなければならない、と最近つくづく感じます。 おろかな感想ですが、きのうも道を歩きながら、つくづくそれを感じました。 ごまかそうとするから....
    商品価格: ¥0(税込)
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