
馬車を待つ間
概要:
1
「やあ綺麗だなあ……」
埃りまみれの靴の紐をほどきながら、ひよいと顏を上げた私は、さう思はずひとりごとを言つた。
崖ばらに一かたまり、何んの花だか、赤やら白やら咲きみだれてゐるのが、夕闇を透かしながらくつきりと見えたのである。
「その躑躅でございませう? ――...
(本文冒頭より抜粋)
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馬車を待つ間
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