
無題(四)
概要:
ヘンリー・ライクロフトの私記の中に、
自分は、斯うやって卓子の上にある蜜も、蜜であるが故に喜んで味わう――ジョンソンが云った通り、文学的素養のある人間と無い人間とは、生者と死者ほどの違いがある。この蜜についても、若し私がハイメッタスやハイブラをちっとも知らなかったら、自分にとって何だろう、と云って居る。蝙蝠《こうもり》が夕暮とぶのを見る面白さも、闇夜の道に梟の鳴くのを聞く満足も、皆彼等が詩の世界に現れるものだからだ、と。
私は自らギッシングの心を二様に考えさせられた。
(本文冒頭より抜粋)
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