ビルマ古典歌謡の旋律を求めて 書承と口承から創作へ
概要:
師弟関係の間で行われる技法の伝承をつぶさに見た著者の語る、アジア音楽の核心とは何か。ミャンマー古典音楽の知られざる現在。
従来、ビルマ古典歌謡の研究は、音楽学の面からは特に音階構造の分析に重点が置かれ、また、文学としての研究においては歌詞の内容の解釈が中心であった。つまり、創作の結果としての作品分析のみが為されてきて、それらの作品がどのような過程を経て創作されたのかについては注目されてこなかった。しかし、結果としての作品ではなく、それらの作品を作り出していくシステムに、筆者はより関心を覚えた。本書では、以上の筆者の問題関心に基づき、ビルマ古典歌謡における創作と伝承の方法と両者の関係について、以下のような構成で考えていく。まず第一節においては、本書で扱うビルマ古典歌謡について概説する。第二節において、古典歌謡の創作方法について分析し、既存の作品に依拠する技法が重要であることを示す。第三節においては、歌謡集が持つ伝承の機能について検討する。第四節においては、古典歌謡の伝承方法を示し、さらに、伝承方法が創作技法に関係していることを考察する。以上のような手順で古典歌謡を創作と伝承の側面から見ていくことによって、そこにおける営みの在り方を描き出すことを試みる。(本書第1章より)
【目次】
はじめに
一 ビルマ古典歌謡
1 ビルマ古典歌謡としての「大歌謡(タチンジー)」
2 「大歌謡」の認識と保存
3 楽器と音階
二 古典歌謡の創作―既存の作品からの借用・バリエーション・再利用
1 他の作品の旋律の利用
2 同一の題材のバリエーション
3 部分的な旋律の再利用
三 歌謡集の伝承機能
1 歌謡集編集の意図
2 伝承の機能としての歌謡ジャンル
四 伝承のかたち──書承と口承
1 歌唱の伝承方法
2 楽器の演奏法の伝承方法
3 伝承方法が可能にする「即興性」と創作
4 師弟関係
おわりに
【著者】
井上さゆり
東京外国語大学大学院地域文化研究科地域文化専攻博士後期課程修了。博士
(学術)。
現在、大阪大学大学院言語文化研究科言語社会専攻准教授。
主な著書に、『ビルマ古典歌謡におけるジャンル形成』(大阪大学出版会、
2011年)がある。(2014年当時)
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