清朝の蒙古旗人 その実像と帝国統治における役割
概要:
清朝のモンゴル旗人はモンゴル・チベット等北方「藩部」統治の実務を担った。彼らの言語能力・仏教信仰のあり様からその実像に迫る。
本書の目的は、蒙古旗人の「モンゴル」としての特徴がいかなる点に見られるのか、また清朝がその特徴をいかに認識し、帝国統治において蒙古旗人をどのように活用したのかを明らかにすることにある。本書では、清朝の勃興・成立期である一七世紀前半から、清朝が最盛期をむかえる一八世紀後半までの時期を考察の対象とする。一九世紀の蒙古旗人に関してはこれまで本格的な研究が行われたことがなく、筆者自身もまだ検討が及んでいない。そもそも一九世紀に関しては八旗研究そのものが深化しておらず、支配集団としての八旗・旗人は、清朝の弱体化・堕落・腐敗の象徴的存在として語られるのみで、本格的な研究の対象とはなってこなかったのである。このような状況を踏まえ、本書では一八世紀末までの蒙古旗人の実像をより詳細に明らかにし、この時期の清朝の帝国統治構造を考察することとしたい。(本文より抜粋)
【目次】
はじめに
1 清朝史への関心の高まり
2 帝国統合の中核組織──八旗
3 蒙古旗人は「満洲」か、「モンゴル」か?
一 清朝の帝国統治における蒙古旗人の役割
1 清朝に帰順したモンゴル人と蒙古旗人
2 清朝の藩部統治と蒙古旗人
二 蒙古旗人のモンゴル語能力と清朝の言語政策
1 順治・康煕年間の蒙古旗人に対する言語政策
2 蒙古旗人のモンゴル語喪失問題
3 蒙古旗人の昇進ルート
4 乾隆帝のモンゴル語政策
三 蒙古旗人とチベット仏教
1 清朝とチベット仏教
2 『百二老人語録』にみる松?の自己認識
3 モンゴル・チベット統治に従事した蒙古旗人のモンゴルアイデンティティ
四 清朝の帝国統治構造と八旗の多様性
結びに代えて
【著者】
村上信明
筑波大学大学院博士課程人文社会科学研究科修了。博士(文学)創価大学文学部准教授。
主な論文に、「清朝中期における蒙古旗人の自己認識:正藍旗蒙古旗人松の例を中心に」(『内陸アジア史研究』第20号、2005年3月)、「パンチェンラマ三世の熱河来訪と清朝旗人官僚の対応:十八世紀後半の清朝・チベット関係の一側面」(『中国社会と文化』第21号、2006年)、「駐蔵大臣の『瞻礼』問題にみる18世紀後半の清朝・チベット関係」(『アジア・アフリカ言語文化研究』第81号、2011年)など。(2014年当時)
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