昭和を生きた市井の人 第一章 生き様
概要:
第一章 生き様 あらすじ
昭和二十年七月十四日。青森県陸奥湾沿いにある「青森造船」、そこに勤務する造船技師の国松三郎(30歳)・妻菊子(28歳)・四郎(8歳)が社宅に居住していた。その隣人には、夫を赤紙(召集令状)で戦場に取られ、残された山田早苗(24歳)・裕子(4歳)がいた。親しくしていたその家族国松三郎に、広島県呉市にある「呉造船秘密工場」への転勤命令が出された。その旅立ちを青森駅で見送ったのは早苗親子。その別れ際、幼き四郎と裕子の手に持った〝こけし〟が振られ、「さようなら」の声と共に、蒸気機関車の吐き出す黒煙に包まれながら、指切りげんまんの再会を誓った。 父三郎は呉造船秘密工場へ、菊子と四郎は、松山市内ある呉造船社宅へと向かった。その深夜、松山市は大空襲に見舞われ、終戦を迎えた。戦後食糧難の中、夫三郎からの手紙が来た。内容によると「病で別府温泉病院入院している」とのこと。菊子と四郎は夫を訪ねて病院に向かった。そこに待っていたのは、夫に寄り添って看病していた若い女和子であった。三郎は「全快したら必ず迎えに行く! 待っていてくれ」と言ったが、菊子は夫に捨てられた……と思った。世相は戦後の混乱期である。生きていけないと思った。松山への帰路、船上から、瀬戸内の海へ身を投げるしか無いと考えた。その思いをとどめたのは、四郎の悲しい瞳であった。
それから二年間、菊子は肺結核を患いながらも、居酒屋の酌婦として働き、自宅への帰路、路頭で吐血、そして亡くなった。享年26歳、葬儀も無く、火葬は隣人の人たちで、大量の薪で火葬された。そして四郎は、戦後の混乱期に孤児にとなった。
- ジャンル:
- 文芸 > 小説(国内)
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- 2021/12/18
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