映画雑感(Ⅶ)
概要:
一種の探偵映画である。しかしこの映画のおもしろみはストーリーの猟奇的な探偵趣味よりもむしろウィリアム・パウェルという男とマーナ・ロイという女とこの二人の俳優の特異なパーソナリティの組み合わせと、その二人で代表された特異な夫婦間の情味にかかっているというのが定評となっているようである。ある人はこの夫婦の関係を一種のソフィスティケーションと見ている。その意味は、こうしたものの内容には、一面においては人為的、不自然、不純真、似而非、贋造といったようなあまりかんばしくない要素を含んでいるが、また一面においてはそうしたかんばしくないものを、もう一ぺんひっくりかえして裏から見たときに、その背面から浮かび出して来る高次元に真なるもの純なるものの高次元の美しさおもしろさを認識することができるというのであろう。換言すれば、月並みな陳套な正札付きの真実よりも、うそから出た誠にかえってより多くのより深き真実を見いだすこともありうるという意味で、こうした言葉を使っているのではないかと想像される。
(本文冒頭より抜粋)
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映画雑感(Ⅶ)
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