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堀辰雄

検索結果124件中46件から90件までを表示
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  • タイトル: リルケ年譜
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 一八七五年  十二月四日、ボヘミヤの首都プラアグに生る。 古き貴族の後裔なりと云ふ。 一八八五年  幼年學校に入學。 五年在學の後、退學す。 一八九六年  ミュンヘンに出づ。 既に「人生と小曲」(Leben und Lieder, 1894)「家神奉幣」(Larenop...
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  • タイトル: ランプの下で
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  山にやつて來てから、もう隨分長いこと書かない。 去年はほんたうに何も書きたくなかつたので、あつさりと何も書かなかつたが、今年はそんな氣持はかなぐり棄てて、ひとつうんと書いて見るつもりだ。  しかしまだ、何が書けるのやら、自分にも見當がつかない始末だ。 が、今年は――秋にでもなつた....
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  • タイトル: モオリアックのこと
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  現代作家の中で誰が一番好きかと問はれたら、僕は躊躇せずにモオリアックの名を擧げるだらう。 去年の夏は病氣で仕事が出來なかつたので、毎日のやうにサナトリウムの裏山へ行つては木蔭に寢ころんで、東京から取り寄せたフランスの新刊小説に讀み耽つたものだつたが、みんなそれぞれ面白いとは思つた... ...
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  • タイトル: 「マルテの手記」
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  丁抹の若い貴族マルテ・ラウリッツ・ブリッゲがその敗殘の身をパリの一隅によせ、其處でうらぶれた人々にまじつて孤獨な生活をはじめる。  第一部の前半は、先づ、マルテをとりかこむパリの怖ろしい印象でうづまつてゐる。  ボオドレエル、死、憑かれた男、盲目の物賣り、古い家の癩病やみの......
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  • タイトル: フローラとフォーナ
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  プルウストは花を描くことが好きらしい。  彼の小説の中心地であるとさへ言はれてゐるコンブレエといふ田舍などは、まるで花で埋まつてゐるやうに描かれてゐる。 山査子だとか、リラだとか、睡蓮だとか……  第二部の「花さける少女の影に」になると、その表題からして作者の花好きらしいこと......
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  • タイトル: ノオト
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  この「窓」(〔Les Fene^tres〕)一卷は、ライネル・マリア・リルケがその晩年餘技として佛蘭西語で試みたいくつかの小さな詩集のうちの一つである。 その死後、詩人の女友達の一人だつたバラディンといふ閨秀畫家が十枚の插繪を描いて、一九二七年に巴里のリブレリイ・ド・フランスとい... ...
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  • タイトル: 「スタヴロギンの告白」の訳者に
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 「スタヴロギンの告白」の譯者に 堀辰雄  リルケの「M・L・ブリッゲの手記」を譯してゐると、神西清がきて、いきなり今晩中に何でもいいから自分宛に手紙を書いてくれと言ふのだ。 何にするんだと訊いたら、それでもつて「スタヴロギンの告白」の新刊批評に代へたいと云ふのだ。 何でもいい......
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  • タイトル: CARTE POSTALE
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  夕暮である。 僕はフランス波止場をぶらりぶらりと歩いてゐる。 しやれた煉瓦建てがある。 何だらうと思つて、近づいて見ると、中にはほとんど人氣がない。 入口のところにも、何も書いてない。 そしてただ NO*といふ番號が、何かを暗示するやうに、出てゐるきりだ。 そんな建物と建物との間...
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  • タイトル: 「エル・ハヂ」など
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 「羅馬を後にして、カンパニヤの野邊を横り、アルバノの山の東を走り、險しき山の崖、石多き川の谷を過ぎ、いつしかカッシノに著けば、近くモンテ・カッシノ山の聳ゆるあり、僧院の建物見ゆ。」とは濱田青陵の南歐遊記の一節である。  そのモンテ・カッシノ僧院に、ジィドは或年(戰爭の數年前)一... ...
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  • タイトル: エマオの旅びと
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: エマオの旅びと 堀辰雄 「我々はエマオの旅びとたちのやうに我々の心を燃え上らせるクリストを求めずにはゐられないのであらう。」これは芥川さんの絶筆「續西方の人」の最後の言葉である。 「我らと共に留れ、時夕に及びて日も早や暮れんとす。」さうクリストとは知らずにクリストに呼びかけ... ...
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  • タイトル: エトランジェ
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 七月二十三日  夕方だのに汽車は大へん混んでゐた。 大部分は輕井澤へ行く人たちらしい。 私の前には「天國新聞」といふのを束にしてかかへてゐる牧師さんがひとり。 向隣りの席には、洋裝をした十九ぐらゐのお孃さんと、その連れらしいゴルフ服を着た中年の紳士の二人づれ。 その紳士はそのお孃さん...
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  • タイトル: Ein Zwei Drei
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:           1  本輯に「栗鼠娘」を書いてゐる野村英夫は、僕の「雉子日記」などに屡〻出てくる往年の野村少年である。 冬になるとよく病氣をしてゐたが、そのころはいかにも牧童なんぞになつたら似合ひさうな少年で、死んだ立原道造なども弟のやうにかはいがつてゐたものだ。 が、この......
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  • タイトル: わぎもこ
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: わぎもこ 堀辰雄  妻の母方の祖父は、土屋彦六といつて、明治のころ、靜岡で牧師をしてゐた。 なんでもその祖先は義士討入で有名な土屋主税だといふ話を、私は妻の母から聞いたことがある。 このお正月に、ラヂオで、吉右衞門の「松浦の太鼓」をききながら、この松浦侯といふのはおまへの祖先......
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  • タイトル: 若菜の巻など
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  最近「かげろふの日記」「ほととぎす」それから「姨捨」と續けて平安朝の女たちの日記に主題を求めて短篇を書いてばかりゐますせゐか、屡〻平安朝文學に就いて何か書けなどと言はれますので、どうも飛んだ事になつたと思つてゐます。 まだ、そんな事について一家言をもてるほど、とつくりと讀んぢやゐ... ...
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  • タイトル: 緑葉歎
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  青葉頃になると、どうも僕の身體の具合が惡くなるのです。 それにやられまいと思つて、隨分用心してゐるのですが、いつのまにかやられてゐます。 こんどなども、ちよつと氣分が惡かつたので、二三日安靜にしてゐたら、それからずつと微熱が續いて、もう半月ばかりになるのに、いまだに寢込んでゐる始末......
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  • タイトル: 行く春の記
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  三月のはじめから又僕は病氣でねてゐました。 漸つと快方に向ひ、この頃は庭に出られるやうになりました。 もう春もだいぶ深く、牡丹の蕾が目に立つてふくらんで來てゐます。 去年の春はその牡丹が咲き揃つてゐる間中、僕はよくその前で一人で長いこと怠けてばかりゐたものでした。 「しばらくありて眞...
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  • タイトル: 室生さんへの手紙
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  御高著「室生犀星詩集」(第一書房版)をお送り下さつて有難うございました。  私はいまこの雜誌からあなたに宛てた手紙の形式で何かあなたのことを書けと云はれ、丁度改造社版の「新選室生犀星集」を讀んでゐたところなので、あなたのさまざまな時代の作品のことを考へるには、最も適當な機会を... ...
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  • タイトル: 豆自伝
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  私が四歳の五月の節句のとき、隣家から發した火事のために、私の五月幟も五月人形もみんな燒けてしまつた。 その火事の恐怖が、私に甚だ強い衝動を與へたため、それまでのすべてのいろいろな記憶が、跡かたもなく消えてしまつたらしい。 幼年時代に取材した作品は、「幼年時代」「三つの插話」「花を持......
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  • タイトル: 本のこと
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  僕は夢の中で見た本のことを話さうと思ふ。  芥川さんに「本の事」と云ふ隨筆がある。 その中に矢張り夢の中で見た本のことが書かれてある。 その本と云ふのはの Quarto 版の「かげ草」である。 しかしその「かげ草」には鴎外漁史の書畫の寫眞版が載つてゐたり、書簡が出てゐるのである。...
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  • タイトル: 二人の友
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 一、中野重治  それからもう數年になるのである。  ある日のこと、僕が田端の室生さんのところへ行つたら、室生さんは「昨日は面白い男がきたよ」と云つた。 その男は自分は五十位になつたらいい抒情詩が書けさうだと云つてゐたさうだ。 そして大へん酒が好きで、そのためかどうか知らないが....
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  • タイトル: 春浅き日に
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 春淺き日に 堀辰雄  二三日前の或る温かなぽかぽかするやうな午後、僕はうかうかと三宅坂から赤坂見付まで歩いてしまつた。 あそこの通りは前から好きだつたが、そんな風にぶらぶら歩いたのは實に何年ぶりかだつた。 僕は青山にゐる友人の家を訪問する途中だつたが、三宅坂でいくら待つてゐて......
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  • タイトル: 葉桜日記
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  ――私は、中野重治の譯したハイネの手紙の寫しが以前から私の手許にあるので、それを私の雜誌に載せたいと思つてゐるが、二三個處意味不明のところがある。 が、いま、中野には會ふことが出來ない。 そこでその原文を一度見たく思つたが、それを所持してゐさうな友人がちよつと頭に浮ばない。 やつと竹....
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  • タイトル: 端書
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 端書 堀辰雄  何か書きたいと思つて、いろいろ考へてゐるのだけれど、つい怠けて――怠けてゐるくらゐ僕の健康にいいことはないので――なかなか思ひ立つて書けないのです。 まあ、一つ小説が書けたらその後で――と思つてゐるのだけれど、そいつが考へ出してからもう一年も立つてゐるのにま... ...
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  • タイトル: 辻野久憲君
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 辻野久憲君 堀辰雄  辻野君のこと、大へん悲しい。 仕事の上でも惜しいことをしたと思ひます。 辻野君のした仕事の大半は、飜譯だつたけれど、所謂飜譯家にありがちのよそよそしいところがちつとも無くて、いつも熱をもつて、全身的に、普通の人ならてんで齒も立たないやうなものにぶつかつて......
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  • タイトル: 「鎮魂曲」
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  ハイネのロマンツェロなどは、數ヶ月の間に病苦と鬪ひながらも一氣に書き上げて、それをはじめから一卷として世に問うたものらしい。 ああいふ慟哭的な詩などは一篇々々引きちぎつて讀まされるよりも、一卷として讀みとほすことによつて、我々の感動は別して強まるのである。 その他、ヴェルレェンの「......
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  • タイトル: 続プルウスト雑記
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  プルウストに關する三つの手紙を神西清に宛てて書いてから數ヶ月が過ぎた。  その間、私は心にもなく、プルウストの本を殆ど手離してゐた。  唯、ときたま、ガボリイのプルウスト論の中で見つけた「私の月日が砂のやうに私から落ちるのを感ずる悦び」と云ふクロオデルの言葉が思ひがけずに私......
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  • タイトル: 初秋の浅間
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  この山麓では、九月はたいへん雲が多い。 しかし、夏の近づく頃の雲の不活溌な動きとは異つて、白い、乾燥した、動きのいちじるしい雲の塊りが不連續的に通り過ぎる度毎に、何かがそれらの雲とともに一剥されでもしたかのやうに、そのあとで青空はいよいよ本物の青空に近づいてゆく。 ――さういふ雲の......
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  • タイトル: 小説のことなど
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  この頃私は逢ふ人ごとにモオリアックの小説論の話をしてゐる位だ。  私はつい最近、彼の小説論を二册ばかりと、「癩者への接吻」といふ小説を一つ、立て續けに讀んだところなのだ。 彼の小説論は、勿論本格小説論だが、讀んですこぶる啓發されるところがあつたし、小説の方は彼としてはかなり初期......
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  • タイトル: 詩人も計算する
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 「吾人の賞美する建築は、その建築家が目的によく副ふやうな手段を用ひて、その柱が、エレクションの麗はしき人像柱の如く、上にかかる重みを苦もなく輕々と支へてゐるやうな建築である。」 アンリ・ポアンカレ  さて、いま僕らの努力してゐるのは、詩を文學から引離すことである。 文學はも... ...
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  • タイトル: 更級日記など
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  御質問にお答へするほど、日本の古典をよく讀んでゐませんので大變困りましたが、  一、僅かに讀んだものの中では、「更級日記」などが隨分好きです。 理由と云つても別にありませんが、彼女の小さな夢を彼女なりに切實に生きたらしい、この「更級日記」の作者などが、何となく僕には血縁のあるや... ...
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  • タイトル: 高原にて
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  昨日の夕方、輕井澤から中山道を自動車で沓掛、古宿、借宿、それから追分と、私の滯在してゐる村まで歸つてきたが、その古宿と借宿との間には高原のまん中にぽつんぽつんと半ばこはれかかつた氷室がいくつも立つてゐて、丁度いまそのあたり一面に蕎麥の白い花が咲きみだれてゐて、何とも云へず綺麗だ... ...
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  • タイトル: 黒髪山
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  源氏物語の「總角」の卷で、長患ひのために「かひななどもいとほそうなりて影のやうによわげに」、衾のなかに雛かなんぞの伏せられたやうになつたきり、「御髮はいとこちたうもあらぬほどにうちやられたる、枕よりおちたるきはの、つやつやと」した宇治の姫君が愛人の薫の君たちにみとられながら、遂... ...
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  • タイトル: 近況
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  神西君が僕のことを山のぼりなどしたやうに書いたものだから、みんながもつと身體に氣をつけて、あんまり無茶をしないやうにといつてよこす。 この五月の末ごろの或る温かい日、家のものたちと裏の山へ楤の芽をとりにいつて、つい氣もちがいいまま、二三時間山で過ごした。 ――そんなちよつとした山あ......
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  • タイトル: (きのふプルウストの……)
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: (きのふプルウストの……) 堀辰雄  きのふプルウストの小説を讀んでゐましたら小説家のベルゴットの死を描いた一節に逢着しました。 もうすつかり病氣の重くなつてゐたベルゴットが或る日ルウヴルに和蘭派のフェルメエルの繪を見に出かける。 その風景のなかの建物の黄いろい壁を見ながら「......
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  • タイトル: 嘉村さん
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 嘉村さん 堀辰雄  嘉村礒多さんとは三遍ばかりお會ひしました。  去年の四月頃、或る用事があつて、はじめて私が南榎町のお家をお訪ねしましたら、何處かお體が惡くて寝ていらしつたらしい嘉村さんは、寢卷のまんま、玄關まで飛び出していらつしやいました。 そしてそれから今度は普......
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  • タイトル: 姨捨記
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 「更級日記」は私の少年の日からの愛讀書であつた。 いまだ夢多くして、異國の文學にのみ心を奪はれて居つたその頃の私に、或日この古い押し花のにほひのするやうな奧ゆかしい日記の話をしてくだすつたのは松村みね子さんであつた。 おそらく、その頃の私に忘れられがちな古い日本の女の姿をも見失はしめ......
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  • タイトル: 一挿話
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  一九〇八年の春、伊太利のカプリ島に友人に聘せられて再遊し、その冬獨逸で發した宿痾を暫く療養して居つたリルケは、漸くそれから恢復するや、前年來の仕事を續けるために、五月、四たび巴里に出て來たのであつた。 先づ、シャンパアニュ・プルミエェル街十七番地にささやかなアトリエを構へた。 彼と......
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  • タイトル: 伊勢物語など
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  今夜、伊勢物語を披いて居りました。 そのうちふいと御誌からのお訊ねを思ひ出しましたので、とりあへずペンを取つて、只今、考へてをるがままに書いて見ることにします。  僕がこのペンを取るまで、氣もちよく讀みふけつてゐた伊勢物語の一段はかういふのです。 短いものなので、全部引用してみま....
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  • タイトル: 或外国の公園で
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 「……伊太利は好い效果を與へてくれましたけれど、こんどは私には北方が、空間が、風が必要になつたやうな氣がいたします……」と、一九〇四年四月二十九日、當時羅馬に滯在してキエルケゴオル、ヤコブセン等の作品を好んで讀んでゐたライネル・マリア・リルケはそのスカンヂナヴィア在住の女友達エレ... ...
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  • タイトル: 「青猫」について
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  私は萩原朔太郎さんのことを考へると、いつも何處かの町角の、午後の、まだぱあつと日のあたつてゐる、閑靜なビヤホオルかなんぞで二人きりで話し合つてゐるやうな記憶が一番はつきりと浮んでくる。 それだのに、萩原さんのほうでは、私のことを思ふときは、いつも山間のホテルの露臺のやうなところで... ...
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  • タイトル: パイプについての雑談
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  この二三日、咽喉が痛くてしかたがない。 どうも煙草の飮み過ぎらしいのだ。  それで、愛用のパイプを口にくはへることも我慢してゐる。  ――だからといふのではないがひとつ、僕の古馴染みのパイプの惡口でも書いてやらうかと思ふ。           ⁂  僕の愛用のパ...
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  • タイトル: 「オルジェル伯爵の舞踏会」
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  これはレイモン・ラジィゲの小説だ。 私はこの小説について語る前に、まづ作者ラジィゲについて一言したい。 ラジィゲは一九二三年に二十で死んだ詩人だ。 今生きてゐても私より一つ年上なだけである。 そしてこの小説は十九で書いたのだ。 彼はランボオのやうな「恐るべき子供」だ。 しかし彼が...
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  • タイトル: 山日記その二
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要:  十月九日  こちらはもう秋が深い。 冬までゐられさうなことを言つてゐた川端さんも、これからずつと木曾をまはつて鎌倉へ歸ると、さきをとつひお別れに來られたが、たぶんけふあたりはその木曾を旅してゐられることだらう。 僕達はいまやりかけてゐる「續かげろふの日記」の仕上がるまでは頑張つて......
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  • タイトル: 匈奴の森など
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 一 秋になりました……  秋になりました。 夏の間、A山の向う側にあるいくつかの牧場に預けられてゐた牛どもも、再びこの村に歸つてきました。 その背なかの黒い斑は、なんだか私には、さまざまな見知らぬ牧場の地圖のやうに懷かしく見えるのです。 夏ぢう少年や少女たちの乘りまはしてゐた馬ど....
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  • タイトル: 尖端人は語る
    著者: 堀辰雄
    出版社: ConTenDo
    概要: 尖端人は語る 堀辰雄  私は書かうと思つてもどうしても書けないやうな時がある。  さういふとき私はへとへとに疲れ、そして書くことは何と馬鹿馬鹿しいことだらうなどと考へながら、私は公園へ散歩に出かけてしまふのである。 すると公園の中で、私は子供たちが長いモチ竿をもつて蜻蛉を......
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