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宮本百合子

検索結果856件中271件から315件までを表示
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  • タイトル: 父の手紙
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  ユリチャン、コレガオトーサマノ、ノッテイルフネデス。  片仮名でそういう文句をかいた欧州航路の船のエハガキが、五つの私へ父からおくられて来た。 父はイギリスへ行くところで、まだ字の読めなかった娘へも最初のたよりを、そのようにして書いてよこしたのであった。  灯がその火屋の中に....
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  • タイトル: 働くために
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  この頃は日本の女の服装について、簡単であること、働きよいこと、金をかけないことがどこででも云われている。 大変着物に凝っている人たちが、昨今はそれらを又新しい工夫の条件にとりいれて違った形での数奇を示しているのや、それとは全く反対に、衣服は肉体をつつむ袋なりとでもいうように、何で... ...
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  • タイトル: 小鈴
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  弟の家内が今年の正月で三十三を迎えた。 三十三は女の厄年といわれている。  厄年というものを迷信的に考えはしないけれど、たとえば女の子の十六歳、十九歳などという年齢を、何か意味あるけじめのように見ることは、その年頃の生理やそれにつれて激しく動く感情の波立ちから、全然根拠が無いと......
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  • タイトル: 村の三代
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  三春富士と安達太郎山などの見えるところに昔大きい草地があった。 そして、その草地で時々鎌戦さが行われた。 あっち側からとこっち側からと草刈りに来る村人たちは大方領主がそれぞれちがっていて、地境にある草地の草を、どっちが先に刈るかというような争いから、丁髷を振り立てて鎌戦さになること......
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  • タイトル: 空に咲く花
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  空間をどこまで女性が自分の生活感情の中へ従えてゆくかということで、女の歴史の歩みが量られるのは何と面白いことだろう。 昔の女性たちは、その生活の環をわずかに何十里の平面に限られて一生を過さなければならなかった。 文明は進んで、女の動きは地球の上に相当広大な領域をもつようになった。 け....
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  • タイトル: 回覧板への注文
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  私のところは、割におうようなので、些細なことで何や彼と廻してくるようなことはありません。  ただ、その表現がなかなか整理されず――つまりは、皆の人によくのみこませようとするのでしょうが、重複したりして煩わしいものがあります。  一番関心を持たせられるのは、お役所などから廻っ......
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  • タイトル: このごろの人気
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  四五日前のある夜十時頃、机に向っていると外でうちの名を呼ぶ男の声がした。 速達だろうと思った。 郵便受箱へ入れておいて下さいというつもりで高窓をあけたら、タオル寝間着の若い男のひとが立っていて、妙にひそめた声と左右に目を配った挙動とで、「一寸ここまで来て下さい」と云う。 「どなたなん....
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  • タイトル: 文学者として近衛内閣に要望す
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  今度の内閣は、従来とかくものごとが厳秘主義であったの対して、「率直に現実をしらしめる」ことを表明し、一つの新しい態度と見られていると思います。 上から現実を知らしめるということと、文学者が切々たる人間の心で下から現実を反映して、率直に現実を知らしめることとは、おのずから異るという... ...
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  • タイトル: 鼠と鳩麦
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  友達と火鉢に向いあって手をかざしていたら、その友達がふっと気づいたように、 「ああ、一寸、これ御覧なさい。 こういうものがあなたの爪にあって?」  左の中指の爪のところをさすのを覗きこんで見ると、そこには薄赤い爪の中ごろに、すこし輪廓のぼやけた白い小花のような星が一つ出ている... ...
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  • タイトル: 見つくろい
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  たとえば半襟のようなものでも、みつくろって買って下さいね、とたのまれると、私たちは相当閉口する。 自分が見てあのひとにはこれと思って選んだ色にしろ、果してその色を本人が好きと思うかどうかは不安であるし、見つくろって、と買物などをひとにたのむことは、相手を立てているようでその実は困... ...
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  • タイトル: 表現
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  私は映画がすきなくせにいつも野暮ったい観かたばかりしているのだけれど、さきごろの「カッスル夫妻」でも、いろいろの印象をのこされた。 アステアのカッスルが、初め喜劇役者として稼いでいる。 筋のはこびでは、後にカッスル夫人となったロジャースの娘にあってそのかえりの田舎の小さい停車場で初......
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  • タイトル: 健康な美術のために
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  松山文雄さんがこの頃益々一心に画業をはげんで居られることは友人たちの間で知らぬものはないと思います。  清潔な生活感情をもちつづけて、芸術家が今日成長を重ねてゆくのはまことに一事業です。 清潔であって生々とした美感に溢れた作を生むということこそ、松山文雄さん、前島ともさんお二人......
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  • タイトル: なつかしい仲間
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  友達ということを思うと、私の心にきっと甦って来る一つの俤がある。  村上けい子さんといったあの子は今どんな風に暮しているのだろうか。 やっぱり東京にいるのかしら。 それとも、どこかの田舎の町にでもいるのかしら、それとももうこの世の中にはいない人になってしまってでもいるのだろうか。 ...
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  • タイトル: 繻珍のズボン
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  父かたの祖母も母かたの祖母も八十を越えるまで存命だったので、どちらも私の思い出のなかにくっきりとした声や姿や心持ちを刻みのこしているが、祖父となると両方とも大変早く没している。  父かたの祖父は私が生れた時分、もう半身の自由がきかなくなっていて、床の上に坐ったまま初孫である赤... ...
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  • タイトル: 青春
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  青春の微妙なおもしろさは、その真只中にいるときは誰しもそれを、後で思い出のなかでまとめるような形ではっきり自覚しないまま、刻々を精一杯によろこび、悲しみながら生きてゆくところにあるのではないだろうか。 人間の精神のなかで青春というものの在りようもまたおもしろく微妙で、あながち年の... ...
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  • タイトル: 待呆け議会風景
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  けさ、新聞をひろげたら、『衆院傍聴席にも首相の「若き顔」』として、米内首相の子息の学生服姿が出ている。 本当にこの息子さんの面ざしはお父さんの俤を湛えているけれども、この若人も、きのうはやっぱり地下室に蜒々と連らなった人の列に立ちまじって、先ず制服の警官にすっかり身体検査されたの... ...
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  • タイトル: 二人の弟たちへのたより
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  火野葦平さんが先頃帰還されて、帰還兵の感想という文章を新聞にかいていました。 そのなかで、最も私の心をうったことは、戦線にいる兵隊さんたちは、だれでもみんな故郷からのたよりを待っている。 何でもない毎日のことを書いた、その何でもない手紙というものこそ待っているのだ、ということでした......
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  • タイトル: この初冬
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要: 鏡  父かたの祖母は晩年の僅かをのぞいて、生涯の大半は田舎住居で過ごしたひとであった。 よく働いた人であった。 何番目かの子供を生んで、まだ余り肥だたないうちに昔の米沢のどういう季節の関係だったのか、菜をどっさりゆで上げなければならないことがあった。 大釜にクラク... ...
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  • タイトル: 良書紹介
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  China : The March Toward Unity, by Mao Tse-Tung & others.  Red Star over China, by E. Snow. 後者には最近新しい章も追加され、今日の中国の現実を知るために極めて有益な本であると......
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  • タイトル: まちがい
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  夜の八時ごろ、お隣の女中さんが柿の木の彼方から、お電話ですと呼んでくれた。 出てみたら弟の家内で、いそがしいところ呼び立てて御免なさいね、百合ちゃん、四谷旭町――旭は九に日をのせた旭ね、そこの大久保ってところ知っていて? と訊くのであった。 さア、大久保――何なの? すると、きっと......
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  • タイトル: 机の上のもの
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  机の上に年中おいて使っているいろんな細々とした品物は、きっとその人その人の好みや暮しかたをあらわしていて、面白いものなのだろうと思う。  平凡でただゆったりしているのが便利な私の机の上にいつもあるのは、山羊の焼物の文鎮、紺色のこれも焼物の硯屏。 それからそこいらの文房具屋にざら......
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  • タイトル: キュリー夫人の命の焔
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  偉い女のひとというものは、歴史の上で何人かいますし、現在でも世界には幾人かの偉い婦人と呼ばれるにふさわしいひとがいるでしょう。  けれども、ひとくちに偉いと云っても、その内容はいろいろで、えらさの大きさにも亦様々のちがいがあると思われます。 よく婦人雑誌の実話などのなかに、たと......
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  • タイトル: いい家庭の又の姿
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  光ちゃんのお父さん小野宮吉さんは、お亡りになったから、この写真にうつることは出来ません。 けれども、鑑子さんは母として音楽家として生活と芸術とのために実に勤勉に一心に毎日を暮し、光ちゃんも益々いい少女として成長している一家の空気は、家庭としてやはり十分いい家庭の一つに数えられる資... ...
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  • タイトル: 祖父の書斎
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  向島の堤をおりた黒い門の家に母方の祖母が棲んでいて、小さい頃泊りに行くと、先ず第一に御仏壇にお辞儀をさせられた。 それから百花園へ行ったり牛御前へ行ったりするのだが、時には祖母が、気をつけるんだよ、段々をよく見て、と云って二階へつれてあがった。 いつも使っていない二階は不思議な一種......
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  • タイトル: 生きてゆく姿の感銘
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  この小説の最後の一行を読み終って、さてと心にのこされたものをさぐって見ると、それは作者がカソリック精神で表現している「死の意味」への納得ではなくて、死というものをもこれだけに追究しとり組んで行く、人間の生きてゆく姿の感銘であるのは、非常に面白いところであると思われる。 私たちの世... ...
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  • タイトル: アメリカ我観
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  アメリカというところがなかなか興味ありそうに思われます。 しかし私としては非常に、わずかのことしか知っていませんので、至極ぼんやりと、一九二九年以後アメリカの繁栄が蒙った変化につれて変化した文学、次第に成長し、ヨーロッパの良質な人をどんどんうけ入れてニュアンスを深めて来る「アメリ... ...
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  • タイトル: 十八番料理集
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要: 白菜と豚の三枚肉のお鍋  そろそろ夜がうすら寒くなってくると家でよくするお惣菜の一つです。 白菜を四糎位に型をくずさない様にぶつぶつ切りまして、三枚肉は普通に切ったのを一緒に水をたっぷり入れてはじめからあんまり強くない火で永い時間に煮ます。 味は食塩と味の素と胡... (本...
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  • タイトル: 犬三態
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要: 景清  この夏、弟の家へ遊びに行って、甃のようになっているところの籐椅子で涼もうとしていたら、細竹が繁り放題な庭の隅から、大きな茶色の犬が一匹首から荒繩の切れっぱしをたらしてそれを地べたへ引ずりながら、のそり、のそりと出て来た。 ひどく人間を警戒していて、眼と... (本文冒...
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  • タイトル: 十四日祭の夜
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  七月も一日二日で十日になる。 今年も暑気はきびしいように思われる。 年々のいろいろな七月、いろいろなあつさを思いかえすうち、不図明るい一つの絵提灯のような色合いでパリの七月十四日の夜が記憶に甦って来た。  一七八九年の七月十四日、フランスの人々は現代に到る自分たちの社会を持つよう....
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  • タイトル: ありがとうございます
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  バスの婦人車掌は、後から後からと降りる客に向って、いちいち「ありがとうございます」「ありがとうございます」と云っています。 あれは関西の方からもって来られた風だそうですが、混雑の朝夕、それでなくてさえ切符切りで上気せている小さい体の婦人車掌が、停留場の呼び上げ、右オーライ、左オー... ...
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  • タイトル: 映画女優の知性
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  映画女優のあたまのよさが、一つの快適な美しさ、あるいは深い心と肉体の動きの感銘として作品のなかに十分活かされている場合をみると、大抵のとき、それは製作の方向、監督のみちびきかたと密接な関係をもっているように思える。 したがって、映画女優のあたまのよさは一方に瑞々しい適応性や柔軟性... ...
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  • タイトル: 明治のランプ
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  母かたの祖母も父かたの祖母も長命な人たちであった。 いずれも九十歳近くまで存生であったから、総領の孫娘である私は二人のおばあさんから、よく様々の昔話をきいた。 母方の祖父も父方の祖父も、私が三つぐらいのとき既に没して、いずれも顔さえ覚えていない。  二人の祖母たちは、それぞれ祖父....
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  • タイトル: 藤棚
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  あちこちに廃墟が出来てから、東京という都会の眺望は随分かわった。 小石川の白山から、坂の上にたって、鶏声ケ窪の谷間をみわたすと、段々と低くなってゆく地勢とそこに高低をもって梢を見せている緑の樹木の工合がどこかセザンヌの風景めいた印象をあたえる。 巣鴨から来た電車がゆっくり白山を下り......
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  • タイトル: からたち
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  その時分に、まだ菊人形があったのかどうか覚えていないが、狭くって急な団子坂をのぼって右へ曲るとすぐ、路の片側はずっと須藤さんの杉林であった。 古い杉の樹が奥暗く茂っていて、夜は五位鷺の声が界隈の闇を劈いた。 夏は、その下草の間で耳を聾するばかりガチャガチャが鳴いた。  杉林の隣り....
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  • タイトル: 寒の梅
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  一月○日  朝飯をたべて、暫く休んで、入浴してかえって横になっていると、傷の写真をとりますから腹帯はあとになすって下さいということだ。 やがて、白い上っぱりを着た写真師が助手をつれて入って来て、ベッドに仰むきに臥ている自分の右側のおなかの傷に向って高いところからアングルをとって... ...
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  • タイトル: 期待と切望
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  音楽に対しては全く素人であって、しかも音楽についてはある興味をもっているものの一人として、私は日本の将来の音楽的発達について少なからず希望を抱いております。 音楽上の創造力も技術も、これから十五年の後はおどろくべき進歩があるでしょう。 然し、この期待の一面には、今日の音楽のおかれて......
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  • タイトル: くちなし
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要: 童心  うちから二人出征している。 一人は世帯持ちであるがもう一人の方はひとり者だから、手紙をうち気付でよこす約束にして出発して行った。  行ったきり永い間何のおとさたもなかった。 四ヵ月ほどして、ハガキが来た。 部隊の名と自分の姓の下に名を書かないで少尉として... ...
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  • タイトル: 身ぶりならぬ慰めを
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要: 『輝ク』の慰問号を拝見して感じたことの第一は、人を慰める、特に平常と異った事情にある前線の将士を真実に慰めるということは、実に、むずかしいということです。 『輝ク』のこの号の共通な感情として、どっちかというと慰めるということの内容が少女小説的と云おうか、女の昔からの習慣的な或る身ご... ...
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  • タイトル: オリンピック開催の是非
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  日本へオリンピックを招致しようとしたときの雰囲気を思いおこします。 日本へよばなければ意地でも承知せぬという気分が示されていたことがきつく印象されています。 何の意地によってそのやめられるのでしょうか。 はじめにも終りにもある無理の感が与えられるのを遺憾と思います。 〔一九三七年...
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  • タイトル: 生活の理想と実際
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  社会生活のあらゆる面が今日のように複雑だと、実際生活の合理化といっても家事整理の手間を出来るだけ省くとか二重生活の煩をさけるとか申すことに止めがちです。 その範囲でいえば、私は境遇の上の理由から仕事とその仕事の本質的な方向の成長のために日常生活を出来るだけ単純にしておりますし書生... ...
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  • タイトル: 似たひと
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  お茶をいれている私のそばである友達が栗の皮をむきながら、 「あなた、染物屋の横にあるお風呂へよく行くの」 ときいた。 「行かないわ」 「ほんと? じゃどうしたんだろう、始終あすこで見かけるって云っていた人があってよ」  ふき出しながら、私は、 「お気の毒だわ、間違え... ...
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  • タイトル: 女靴の跡
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  白いところに黒い大きい字でヴェルダンと書いたステーションへ降りた。 あたりは実に森閑としていて、晩い秋のおだやかな小春日和のぬくもりが四辺の沈黙と白いステーションの建物とをつつんでいる。  ステーション前のホテルのなかも物音がなくてカーテンのかげに喪服の婦人の姿があるばかりであ......
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  • タイトル: 意味深き今日の日本文学の相貌を
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  明治、大正年代にも、日本の文学は様々な意味で複雑、多岐な発展をとげて来たのであるが、この三四年間における日本文学が物語る歴史性、社会性の錯綜の姿は、或る意味で実に日本文学未曾有の有様ではないかと思われる。  明治、大正と徐々に成熟して来た日本の文学的諸要素が、世相の急激な推移... ...
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  • タイトル: カメラの焦点
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  写真機についての思い出は、大層古いところからはじまる。  私が九つになった年の秋に、イギリスに五年いた父親がかえって来た。 横浜へ迎えにゆくというので、その朝は暗いうちに起きて、ラムプの下へ鏡台を出して母は髪を結った。 私は当時ハイカラであった白いぴらぴらのついた洋服を着せられて....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 金色の口
    著者: 宮本百合子
    出版社: ConTenDo
    概要:  ある年、秋が深くなってからヴェルダンへ行ったときのことがこのごろ折にふれて幾度か思い出される。 ヨーロッパ大戦のとき、ヴェルダンは北部フランスの激戦地の一つとして歴史にのこされた。  ヴェルダン市とその周囲の山々につづく村落とはまったく廃墟となっていて、市役所の跡などはポンペイ......
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