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牧野信一

検索結果294件中271件から294件までを表示
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  • タイトル: ガール・シヤイ挿話
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  僕(理科大学生)は、さつき玄関でチラリと娘の姿を見たばかりで一途にカーツと全身の血潮が逆上してしまつて(註、ガール・シヤイを翻訳すれば、美しい女を見ると無性に気恥かしくなつて口が聞けなくなる病――とでも云ふべきであらう。)慌てゝ自分の部屋へ逃げ込んでしまつた。 「おーい、二郎... ...
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  • タイトル: 鎧の挿話
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  五人力と称ばれてゐる無頼漢の大川九郎が今日はまた大酒を呑んで、店で暴れてゐる――と悲しさうな顔で居酒屋の娘が、私の家に逃げて来た夕暮時に、恰度私の家では土用干の品々を片附けてゐたところで、そして私は戯れに鎧を着、鉄の兜を被つて、ふざけてゐたところだつた。 私は、喧嘩や力業には毛程... ...
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  • タイトル: 山を降る一隊
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 「メートル係り。」  それが私の仕事である。  伐木場から橇で運ばれて来る木材の切り口を物差で計るのである。 私は槍のやうに長い物差を振り廻して木口の寸法を計ると、 「何メートル、何々……」  と非常に大きな声で――相当の間隔のある事務所の窓口でそれを即座に記帳する係の者に......
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  • タイトル: 寄生木と縄梯子
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 「ヤドリ木――知つてゐますか?」 「……知らんのう、実物を見たら、あゝ、これか――と思ふかも知んないが……ヤドリ木? 聞いたこともない。」  誰に訊ねても同じ返答ばかりであつた。 私は、小屋を出てから同じ質問を若い木挽にも訊いた。 山頭の炭焼の老人にも訊いた。 鈴を鳴して橇道を滑走....
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  • タイトル: 馬上の春
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  上  私たちが、その村に住んでゐたころ――では、今年の正月は、いつものやうに朝から晩まで酒を飲んでは議論をしたり喧嘩をしたりしてゐても止め度がないから、 「今年はひとつ――」  と、私達の伊達好みの戯談好きの村長が提言しました。 「大いに趣向を変へて――馬を引け... ...
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  • タイトル: 東京駅にて感想
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  一  久しい間辺卑な田舎で暮した上句なので、斯うして東京に来て見ると僕は、何を見ても、何処を訪れても、面白く、刺戟が爽かで、愉快で/\、毎日々々天気さへ好ければピヨン/\と出歩いて寧日なき楽天家だ、金貨だつて? そいつはまあ無い日の方が多いけれど、無ければ無いで公... (本...
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  • タイトル: 断唱
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: *  父が若い時にあつめた“Cook book”の文庫のうちに“American's popular Cook book”といふ、表紙にブルクリン橋の写真のついた、大きい本で重くて気の毒だが、画布のやうな布で作られてゐる本があるから、此処に寄る時にそれを... (本文...
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  • タイトル: 黄昏の堤
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  小樽は、読みかけてゐるギリシヤ悲劇の中途で幾つかの語学に就いての知識を借りなければならないことになつて、急に支度を整へて出かけた。 停車場の辺まで来ると時間で出るバスが恰度出発したばかりのところで、走つて行くのが行手に見えた位だつたので、一層一ト思ひに! と思つて、大胯... ...
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  • タイトル: 出発
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  (A) 「風よ風よ、吾を汝が立琴となせ、彼の森の如く――か、ハツハツハ……琴にならぬうちに、おさらばだよ、森よ森よ、さよなら――と!」 「真面目かと思へば冗談で、冗談かと思へば生真面目で、転がせ/\、この樽を――だ、ハツハツハツ……」 「泣いて呉れるなヨ、出船... (本...
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  • タイトル: 交遊秘話
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  一  私が、G・L・マイアム氏から私の作品に寄せる最も好意ある手紙を貰つたのは昨年の冬の頃だつた。 その後頻繁に手紙の往復をするやうになつてゐたが、初めて言葉を交す機会を得たのは今年の春頃の或る晩、偶然にも銀座裏の小さな酒場でゝあつた。 私は怖ろしく酔ふてゐた。 「... ...
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  • タイトル: くもり日つゞき
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 歌合せ  外に出るのは誰も具合が悪かつた。  それで、飽きもせず彼等は私の部屋に碌々とし続けた。 (――と私は今、村での日日を思ひ出すのである。 つい此間までの村の私の勉強室である。 私は余儀なく村を立ち去つて、今は都に迷ひ出たばかりの時である。)  向ひ側の人の顔だちが定...
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  • タイトル: 街上スケツチ
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  明るいうちは風があつたが、陽が落ちると一処に綺麗に凪いで、街は夢のやうにうつとりとした。 ――円タクの運転手が、今年の冬は実に長かつた! と力を込めて話しかけた後に、然しまた、これからは事故が多くなるので、浮々しては居られない、事故では自転車が一番多い、居眠りをしながら走つてゐる... ...
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  • タイトル: 駆ける朝
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 「苦労」は後から後から、いくらでもおし寄せてくる。 どんな風に撥ねかへし、どんな風に享けいれるか? に、思案がいるが、思案の浮んだためしがない。  ――早朝に起きる。 机に、十八型程の大きさの磁石が載つてゐる。 文鎮の代りである。 此間まで懐中時計を重しに使つてゐたが、悲しい時に...
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  • タイトル: 熱い砂の上
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  駆け出した、とても歩いたりしてはをられなかつたから――砂が猛々しく焦けてゐて誰にも到底素足では踏み堪へられなかつた。 「熱い/\!」 「素晴しい暑さだ!」 「競争! 競争! 波打ちぎはまで――」  三人の若者と二人の娘が脱衣場から飛び出て、砂を踏んで見ると、熱... ...
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  • タイトル: バラルダ物語
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 俺は見た 痛手を負へる一頭の野鹿が オリオーンの槍に追はれて 薄明の山頂を走れるを ――あゝ されど 古人の嘆きのまゝに 影の猟人なり 影の野獣なり  日照りつゞきで小川の水嵩が――その夕暮時に、この二三日来の水車の空回りを憂へたあまり、蝋燭のやうにめつきりと... ...
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  • タイトル: センチメンタル・ドライヴ
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 「弾け! 弾け! その手風琴で沢山だ。」 「南北戦争の兵隊でもが持つやうな手風琴だな、ハツハツハ! 横ツ腹が大分破れてゐるぢやないか!」 「お前の胸には打つてつけだらうG――」 「失敬な、弾かねえぞ!」 「弾け! 弾け! リング、リング・ド・バンジョウ! あんなものを弾く... ...
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  • タイトル: 村のストア派
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  沢山な落葉が浮んでゐる泉水の傍で樽野は、籐椅子に凭つて日向ぼつこをしてゐた。 彼は、あたりのことには関心なく何か楽し気な思ひ出にでも耽つてゐる者のやうに伸々と空を仰いでゐるが、何時の間にか眠り込んでしまつたのかも知れない、膝の上に伏せてあつた部厚な書物が音をたてゝ足許に... ...
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  • タイトル: 父を売る子
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  彼は、自分の父親を取りいれた短篇小説を続けて二つ書いた。  或る事情で、或日彼は父と口論した。 その口論の余勢と余憤とで、彼はそれ迄思ひ惑うてゐたところの父を取り入れた第一の短篇を書いたのだ。 その小説が偶然、父の眼に触れた。 父親は憤怒のあまり、 「もう一生彼奴とは口を利かな...
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  • タイトル: 鱗雲
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  一  百足凧――これは私達の幼時には毎年見物させられた珍らしくもなかつた凧である。 当時は、大なり小なり大概の家にはこの百足の姿に擬した凧が大切に保存されてゐた。 私の生家にも前代から持ち伝へられたといふ三間ばかりの長さのある百足凧があつた。 この大きさでは自慢にはなら... ...
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  • タイトル: 吊籠と月光と
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  僕は、哲学と芸術の分岐点に衝突して自由を欠いた頭を持てあました。 息苦しく悩ましく、砂漠に道を失ったまま、ただぼんやりと空を眺めているより他に始末のない姿を保ち続けていた。  いつの頃からか僕は、自己を三個の個性に分けて、それらの人物を架空世界で活動させる術を覚えて、幾分の息抜......
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  • タイトル: 「風博士」
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  厭世の偏奇境から発酵したとてつもないおしやべりです、これを読んで憤らうつたつて憤れる筈もありますまいし、笑ふには少々馬鹿/\し過ぎて、さて何としたものかと首をかしげさせられながら、だんだん読んで行くと重たい笑素に襲はれます。 この笑素は化学読本で御存じのあの酸素中の一原素の謂です... ...
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  • タイトル: 緑の軍港
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  いつの間にかわたしの部屋の壁には、いろいろな軍艦の寫眞が額になつて、あちこちに並び、本棚の上には「比叡」と「那智」の模型が飾られ、水雷型の筆立には巡洋艦「鈴谷」進水式紀念の軍艦旗とZ旗があつた。 「比叡」と「那智」の模型は、それぞれわたしが拜乘の機會に浴した思ひ出の爲に材料を買ひ... ...
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  • タイトル: 城ヶ島の春
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  城ヶ島といふと、たゞちに北原白秋さんを連想する――といふより白秋さんから、わたしは城ヶ島を知り、恰度酒を飮みはじめた十何年か前のころ、わたしたちは醉ひさへすれば、城ヶ島の雨を合唱したものである。 白秋さんが、三崎から小田原へ移つて何年か經ち、恰も、千鳥の唄をつくられて間もないころ... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 鬼涙村
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  一  鵙の声が鋭くけたたましい。 万豊の栗林からだが、まるで直ぐの窓上の空ででもあるかのようにちかぢかと澄んで耳を突く。 きょうは晴れるかとつぶやきながら、私は窓をあけて見た。 窓の下はまだ朝霧が立ちこめていたが、芋畑の向方側にあたる栗林の上にはもう水々しい光が射し... ...
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