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書籍一覧

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  • タイトル: 妄想患者
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  ふつと、軽い夢が消えると、窓先を白い花が散つてゐた。 何かにギクリと悸された鼓動の余韻が、同じやうに静かに、心から散つて行くのを、私は感じた。 「桜の花だつたか。」、私はさう思つた。  ガジガジと、インク壺の中へペン先を突き込む音がする、慌しく「ノート」の頁をめくる....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 鞭撻
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  私は台所の隅へ駈けこむと、ながしもとで飯の仕度を手伝つてゐる母の袂にとり縋つて――仙二郎と一処に行くのは嫌だ、と云つた。 が大声で喚くわけにもゆかず、たゞ無暗に鼻をならして駄々をこねた。 「どういふわけで、そんなに嫌なの……変だね。」母にさう追求されても私は決してその理由は審か......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル:
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一 「今夜こそ書きませう。 ……えゝと何から先に書かうかしら? ……候文も古くさいし、言文一致ではだら/\するし……」  光子さんは、紙をひろげてペンを執りましたが、何から先へ書いたらいゝか? と思ふと、迷はずには居られませんでした。 一年程前に別れた春子さんに、今夜こそ手紙......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 清一の写生旅行
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  ある土曜日の放課後、清一はカバンを確かりとおさへて、家ンなかへ慌しく駆け込むやいなや、其の儘帽子も脱がず、 「お母さん!」と叫んだ。 「何だね、騒々しいぢやないか。 お前またお友達と喧嘩でもしたんぢやないの?」と、縫物をしてゐた彼の母は、驚いたやうに軽く眼を挙げて彼を睨んだ。 ....
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  • タイトル: 心配な写真
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 「兄さんはそれで病気なの? 何だか可笑しいわ。 まるで病気ぢやないやうだわね。」 「さうね、そんなのなら私達もちよつとでいゝからなつて見たいわね。」  二人の少女は、云ひ合せたやうにホヽヽヽと笑つて私を見あげました。 二人とも私の従妹です。 名前ですか――名前は遠慮しませう。 何故...
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  • タイトル: 池のまはり
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 「ね、お祖母さん――」  半分あまつたれるやうな口調で彼は、もぐ/\云はせながら祖母の炬燵の中へ割込むで行つた。 「厭だよ。 お前なんかに入られると寒くつて仕様がありやしない。」  祖母はさう云ひながら、それでも彼の膝のまはりの被着の隙を行儀よく直した。 「ね、お祖母さん、....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 香水の虹
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  窓帷をあけて、みつ子は窓から庭を見降した。 やはらかな朝の日射が、ふかぶかと花壇の草花にふりそゝいでゐる。  姉はカーネーシヨンの花が好きだつた。 花壇の隅に美しく咲き誇つてゐる桃色の花を眺めながら、みつ子は姉のことをしきりに想ひつゞけた。 きらきらと映へた外光はもの懐しく流れて...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 砂浜
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  羽根蒲団の上に寝ころんでゐるやうだ――などと私は思つたくらゐでした。 紫色をした大島が私の網膜に「黒船」か何かのやうに漂うて映りました。 ――午頃まで、このまゝ眠つてやらうかしら……などとも私は思つたりしました。  春先で、思ひきり好く晴れた朝の海辺なのです。 ――もう、かれこれ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 晩秋
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  僕はどうしても厭だ、と云つたが、みち子がどうしても行くんだ、と云つて承知しない。 何故僕が強情を張るか、その理由はちよつと……云ひにくいこともないけれど、云つたつて仕様がないから、云はない。 「無性! 無性! 無性屋さん……」と叫んだかと思ふと、いきなりみち子は僕の背......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 痴想
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  私は岡村純七郎の長男で純太郎といふ名前である。 私の家の伝来の風習で長男には必ず「純」の字を通り名として用ひてゐるさうだ。 ――私が生れた時、私の名前に就いて父は少しは頭を悩ましたらうか、種々な名前を考へたらうか……いや、そんな筈はあるまい。 至極単純な頭悩の所有者である彼は、愚かな....
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  • タイトル: 坂道の孤独参昧
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  何故俺は些う迄性のない愚図なんだらう、これツぱかりの事を何も思ひ惑ふにはあたらない、手取り早く仕度さへすれば二時間も掛らないで出来上る……が、純造は「明日こそは――」と叱るやうに決心した。 前々の日に出掛ける筈で既に叔母から旅費はちやんと貰つて大切に机の抽出に蔵つてはあるのだが、... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 疳の虫
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  必ず九時迄に来ると、云つて置きながら、十五分も過ぎてゐるのに、未だ叔父は来なかつた。 僕は堪らなく焦れたく思ひながらも、叔父の来ることを待つてゐるには違ひなかつたから、頭の中で到頭叔父が大変に憎らしい者になつてしまつた。  好い天気の日曜の朝である。 白い雲一つ見当らない。 叔父...
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  • タイトル: 美智子と日曜日の朝の話
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  日曜の朝でした。 ――「稀にはお母様のお手伝ひをしたら、」とお母様はちよつと機嫌の悪い顔をなさいましたので、美智子は、 「だつてお母様……」と、あべこべに不機嫌な顔をして、「だつて……だつて……」と、わけのわからない弁解を示して、おさげに結むだリボンを前に廻して、それをもてあそ... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 公園へ行く道
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 「散髪して来よう。」  さう、思ひつくと、彼は、膝の上の夕刊を投げ棄てゝ、安座からむつくりと立ちあがつた。 立ちあがつた彼は、如何にも退屈らしく「ウーム」と云つて大きな伸びをした。 その彼の伸びは、彼が故意にさうしたのだつた。 立ちあがつた動作が余りに唐突で、――といふ気がした彼は、....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 愚かな朝の話
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  窓に限られた小さな空が紺碧に澄み渡つて、――何かかう今日の一日は愉快に暮せさうな、といふやうな爽々しい気持が、室の真中に上向けに寝転むだ儘、うつとりとその空を眺めあげた私の胸にふはふはと感ぜられました。  能ふ限り、意識して――その意識がワザとらしければワザとらしい程爽快なの... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 白明
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  医院を開いてゐた隆造の叔父が発狂して、それも他所目にはさうとも見られる程でもなかつたが職業柄もあつたし、家内の者達への狂暴は募るばかりで「酒癖が悪い」位ゐでは包み終せなくなつて、漸くのこと、三月ばかり前にS癲狂院へ入院させて以来――毎晩のやうに同じやうな叔母の愚痴話の相手になつ... ...
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  • タイトル: 失題
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  一刻も早く家へ帰り度い気持と、それとは反対に、どこかへ行つて見度いといふ気持――がその二つの心にのみ面接してゐたといふ程ではなく、ただその朧ろげな二つの気持を「空漠」とした白さが濡紙のやうにフワリと覆つて、つまり彼はその三つの心を蔵して歩いてゐた。 而も彼は家路へは逆に歩いてゐた... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 悦べる木の葉
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  一郎は今迄しきりに読んでゐた書物から眼を放すと、書斎の窓を開いて庭を眺めた。 ――冬枯の庭は、どの木も寒さうに震へてゐるかのやうに見えた。 南天の実の紅色だけが僅かな色彩で、冬の陽に映えてゐるばかりだつた。 空はよく晴れてゐて、時たま何処かで百舌の声などがキーキーツと絹地でも引き裂く....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 不思議な船
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  あゝさうか、今日は土曜日だつたね。 諸君おそろひでよく来たね、さあ遠慮なくずつと此方へ来給へ。 何、お話? またかい。 よくお話に倦きないね。 よろしいやるよ。 面白いお話を。  静かにしてようく聞いてゐるんだよ。 今は昔、昔は今と、即ちワンス、アツポン、エ、タイム、そこに...
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  • タイトル: 闘戦勝仏
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  玄奘三蔵法師が或日、孫悟空に向つて、 「汝の勇と智は天上天下に許されてゐる、天の魔も地の鬼も、汝の黒一毛にも及ばない。 かゝる大智大勇と非凡な妖術とを有しながら、何故天下を領せんとせず、仏門に帰つて、それも余が如き力量もなく妖術も弁へぬ小法師に従うてゐるのか、その理由... ...
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  • タイトル: 雛菊と雲雀と少年の話
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  ある庭の片隅に一本の雛菊が咲いて居りました。 花壇の中には立派やかな牡丹や美しい百合などが、誇り気に咲いて居りましたが、雛菊はさういふ花を見ても、少しも羨しいとは思はず、幸福な日を送つて居りました。  丁度、雛菊の頭の上では雲雀が楽しさうな歌をうたつて居りましたが、雛菊は凝とそ......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル:
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  若しも貴方が妾に裏切るやうな事があれば、妾は屹度貴方を殺さずには置きませんよ、と常に云つてゐた女が、いざとなつたら他愛もなく此方を棄てゝ行つた。 此方こそかうして未練がましくも折に触れては女の事を思ひ出して居るが向うでは……妾は自分の将来を考へなければなりません。 貴方のやうな全く......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 凸面鏡
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 「君は一度も恋の悦びを経験した事がないのだね。 ――僕が若し女ならば、生命を棄てゝも君に恋をして見せるよ。」と彼のたつた一人の親友が云つた時、 「よせツ、戯談じやねえ、気味の悪るい。」、と二人が腹を抱へて笑つてしまつて――その笑ひが止らない中に、彼はその友の言葉に真実性を認めたか... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 首相の思出
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  昔、独逸のある貴族の家に大へんに可愛らしい、さうして美しい少年がありました。 両親が非常に厳格だつたので、少年は無暗に外へ遊びに出ることが出来ませんでした。 然し御殿のやうに立派な少年の室には、あらゆる書物や遊び道具がすつかり備へられてあつたから退屈をするやうな事は決してなかつたの......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 若い作家と蠅
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: ある時は――  苔のない心  うれしい心  くもつた心――悲しい心。 * 「つまらないの?」と、光子は自分が余り熱心に舞台に気を取られてゐるので、此方に気の毒な気がしたのだらう、軽い笑顔を作つて、突然此方を振り向いて云つた。 自分は居睡りの真似... (本文冒...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 初夏
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  私が中学の三年の時でした。 私の親友の河田が、突然自家の都合で遠方へ行かなければならなくなりました。 河田とは小学校以来のたつたひとりの親友でしたから、私はその別れを何れ程悲しむだか知れませんでした。  河田と私とは学校の野球の選手でした。 河田が居なくなつて仕舞つた、と思ふと、...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 親孝行
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 「新一、遅くなるよ、さあお起き。」と耳もとで母の声――。 おや夢かな、と思ふ途端、悲しくも夢ではなかつた。 私は亀の子のやうに床の中にもぐつた儘、眼を開いた。 ――なさけない程眠かつた。 即座に夢を見る、といふことが非常に容易な事だつた。 ――何も横着で起きないのぢやない、自分の体が...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル:
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 「あなたは何故酒を飲むだり煙草を喫つたりするのですか。 神様は決してあなたにそんな事を教へなさらなかつた筈です。  いゝえ私にだけは神様がそれを許して下すつたのです。 許すも許さないもないじやありませんか。 そんな事位で神様を引合に出すあなたの方が余程神様に叛いた人ですよ。 ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 辞書と新聞紙
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  あるところに大層偉い王様がありました。 お国は大へんよく治つて居りましたが、たつた一つ王様にとつて心配なことがありました。 それは王様には王子様が一人も無いといふことなのです。 王様は常々からこの事を非常に心配して居られました。  ある時王様は国中にお布令を出しました。...
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  • タイトル: ランプの明滅
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  試験の前夜だつた。 彼はいくら本に眼を向けてゐても心が少しもそれにそぐはないので――で、落第だ――と思ふと慄然とした。 と、同時に照子の顔が彷髴として眼蓋の裏へ浮んだ。 彼にとつて照子の存在が、彼が落第を怖れる唯一の原因となつてゐたので、然も彼は非常に強く照子の存在を意識してゐたから....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 泣き笑ひ
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  ドンドンドン……といふ太鼓の音がどこからともなく晴れた冬の空に響いて居りました。 私達は学校の退けるのを待兼ねて、駈けて帰りました。 初午のお祭といふことが、此の上もなく私達を悦ばせてゐたのであります。 自分達が主役となつて、大人の干渉を少しも受けずに何から何まで自分達の手でやること....
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  • タイトル: 喜びと悲しみの熱涙
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  道夫は友達の好き嫌ひといふことをしなかつたから、誰とでも快活に遊び交はることが出来た。 従つて随分沢山な友達があつた。 然し道夫がその大勢の友達の中で、真実自分の心の友である、と思つて居るのはたつた一人の沢田だつた。 どういふものか道夫は沢田が好きだつた。 沢田といふ友達を広い世間か...
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  • タイトル: やぶ入の前夜
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  バリカンが山の斜面を滑る橇のやうにスルスルと正吉の頭を撫でゝゆくと、針のやうな髪の毛はバラバラととび散つた。 正吉は一秒一秒に拡がつてゆく綺麗な頭の地ををさへ切れぬ悦ばしい心で凝と鏡の中に瞶めて居た。 正吉の心はたゞ嬉しさばかりに躍つてゐた。 何日前から明日といふ日を待構えて居たこと....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 駒鳥の胸
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 花園の春 「黄金の羽虫、どこから来たの。 蜜飲の虫、あらあら、いけないわ。 そんなに私の傍へ寄つてはいやよ、日向の雛鳥、あつちへお行きよ。」  レオナさんは緑石の様に輝いた美しい瞳をうつとりとかすめて独言のやうに呟きました。 「まあ、随分酷いわレオナさん。 私のことを羽虫だ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル:
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  寒い晩だつた。 密閉した室で、赫々と火を起した火鉢に凭つて、彼は坐つて居た。 未だ宵のうちなのに周囲には、寂として声がなかつた。  彼は二三日前から病気と称して引籠つて居た。 別に、どこがどう、といふのではなかつたが、それからそれへ眠り続けた勢か、頭は恰でボール箱の如くに空漠とし...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 蘭丸の絵
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  僕等が小学校の時分に、写絵といふものが非常に流行しました。 それは毒々しい赤や青の絵具で紙に色々な絵が描いてあつて、例へば武人の顔とか軍旗とか、花とか、その中で自分の気に入つた絵を切り取つて、水にぬらして腕や足に貼付け、上から着物で堅く圧えつけるのです。 暫くたつて紙をそつとはがす......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 月下のマラソン
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  ……去年の春だつた。 七郎は一時逆車輪を過つて機械体操からすべり落ち、気を失つた。  ふと吾に返ると沢田が汗みづくになつて自分を背負つてゆく。 紅く上気した沢田の頬に桜の花が影を落してゐた。 ――その儘又沢田の背中で気が遠くなつて、病院の一室に、心配さうに凝と自分の顔を...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 悲しき項羽
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  紀元前二百五年、始皇帝の秦は二世に滅びて、天下は再び曇り勝となつた。 四隣には密雲が重く垂れ、稲妻に羅星の閃く戦国の夜は、いつになつて明けるやら、見定めもつかなかつたが、忽として頭をもたげた項羽の一睨によつて、西楚の曙は闇の帷を切り落されたのである。 旌旗の翻る処、彼の行......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 秋雨の絶間
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  一降り欲しいとのぞんだ夏の小雨が、終日降り続いて、街の柳に煙つたかとみると、もうそれは秋雨と呼ばなければならない。 軽く軽く絹糸のやうに降つてゐる小雨の音は、小声で唱歌を唄つてゐる綾子の――丁度その雨のやうに美しい音律にも消されて、たゞ静かに白銀の粉末を散らしてゐるばか... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 或るハイカーの記
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  適量の日本酒を静かに吟味しながら愛用してゐれば、凡そ健康上の効用に此れ以上のものは無いといふことは古来から夙に云はれて居り、わたしなども身をもつてそれを明言出来る者であつたが、誰しも多くの飲酒者は稍ともすれば感情のほとばしるに任せては後悔の種を育てがちになるのも実にも通例の仕儀... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 青春のころわが愛せし作品と主人公
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 青春のころわが愛せし作品と主人公 牧野信一 「ファウスト」のファウスト。  人間性の有する、互に相矛盾する性格悲劇を理由として。 底本:「牧野信一全集第六巻」筑摩書房  2003(平成15)年5月10日初版第1刷 底本の親本:「若草 第十二巻第四号(四月特... ...
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  • タイトル: ライス・ワッフルの友
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  こんなことを何も僕は決して誇り気に誌すわけではないのであるが、今不図考へて見て男の友達でも女の友達でも――それはいつも極く少人数であるが、一度交際した人と、自分から先に離れたといふ記憶を持たない、つい口の慎しみがなくて親しむに伴れては喧嘩などをすることは屡々であるが、その場限り... ...
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  • タイトル: 自烈亭
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  僕は近頃また東京に舞ひ戻つて息子と二人で、霞荘といふところに寄宿しながら全く慎ましい日夕をおくり迎へて別段不足も覚えないのであるが、こんな小さな部屋では酒をのむわけにもゆかず、いつも神妙な顔をして、こつこつと小説を書き、書いても書いても何といふこともなく家を建てるなんていふこと... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 処女作の新春
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 処女作の新春 牧野信一  大正八年の春書いた「爪」といふのが処女作であり同年の十二月号に「十三人」といふ同人雑誌に載り、それが偶然にも島崎先生より讃辞を頂いたことに就いては先生も或る文章の中に誌したので省略するが、それが十二月のことであり、日本橋の或る商店に寄食してゐた折... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 今年の文壇で
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一、最も印象に残つた作品 二、最も活躍した人 一、広津和郎「一時期」 小島政二郎「眼中の人」 室生犀星「弄獅子」 以上五月までに読んだもの。 六月以来今年は主に昆虫採集旅行に耽つてゐたゝめ読書の機を逸した。 底本:「牧野信一全集第六巻」筑摩書房  2... ...
    商品価格: ¥0(税込)
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