文芸

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タイトル：糸女覚え書

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　秀林院様（細川越中守忠興の夫人、秀林院殿華屋宗玉大姉はその法諡なり）のお果てなされ候次第のこと。　一、石田治部少の乱の年、即ち慶長五年七月十日、わたくし父魚屋清左衛門、大阪玉造のお屋敷へ参り、「かなりや」十羽、秀林院様へ献上仕り候。秀林院様はよろづ南蛮渡りをお好み遊ばされ候......

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タイトル：一夕話

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：「何しろこの頃は油断がならない。和田さえ芸者を知っているんだから。」　藤井と云う弁護士は、老酒の盃を干してから、大仰に一同の顔を見まわした。円卓のまわりを囲んでいるのは同じ学校の寄宿舎にいた、我々六人の中年者である。場所は日比谷の陶陶亭の二階、時は六月のある雨の夜、――勿論藤....

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タイトル：犬と笛

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　　　　いく子さんに献ず　　　　　　　　一　昔、大和の国葛城山の麓に、髪長彦という若い木樵が住んでいました。これは顔かたちが女のようにやさしくって、その上髪までも女のように長かったものですから、こういう名前をつけられていたのです。　髪長彦は、大そう笛が上手でし......

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タイトル：芋粥

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　元慶の末か、仁和の始にあつた話であらう。どちらにしても時代はさして、この話に大事な役を、勤めてゐない。読者は唯、平安朝と云ふ、遠い昔が背景になつてゐると云ふ事を、知つてさへゐてくれれば、よいのである。 ――その頃、摂政藤原基経に仕へてゐる侍の中に、某と云ふ五位があつた。　こ...

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タイトル：ひょっとこ

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　吾妻橋の欄干によって、人が大ぜい立っている。時々巡査が来て小言を云うが、すぐまた元のように人山が出来てしまう。皆、この橋の下を通る花見の船を見に、立っているのである。　船は川下から、一二艘ずつ、引き潮の川を上って来る。大抵は伝馬に帆木綿の天井を張って、そのまわりに紅白のだ...

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タイトル：冬

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　僕は重い外套にアストラカンの帽をかぶり、市ヶ谷の刑務所へ歩いて行った。僕の従兄は四五日前にそこの刑務所にはいっていた。僕は従兄を慰める親戚総代にほかならなかった。が、僕の気もちの中には刑務所に対する好奇心もまじっていることは確かだった。　二月に近い往来は売出しの旗などの残...

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タイトル：不思議な島

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　僕は籐の長椅子にぼんやり横になっている。目の前に欄干のあるところをみると、どうも船の甲板らしい。欄干の向うには灰色の浪に飛び魚か何か閃いている。が、何のために船へ乗ったか、不思議にもそれは覚えていない。つれがあるのか、一人なのか、その辺も同じように曖昧である。　曖昧と...

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タイトル：文放古

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　これは日比谷公園のベンチの下に落ちていた西洋紙に何枚かの文放古である。わたしはこの文放古を拾った時、わたし自身のポケットから落ちたものとばかり思っていた。が、後に出して見ると、誰か若い女へよこした、やはり誰か若い女の手紙だったことを発見した。わたしのこう云う文放古に好奇心を感じ....

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タイトル：報恩記

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　　　　　阿媽港甚内の話　わたしは甚内と云うものです。苗字は――さあ、世間ではずっと前から、阿媽港甚内と云っているようです。阿媽港甚内、――あなたもこの名は知っていますか？　いや、驚くには及びません。わたしはあなたの知っている通り、評判の高い盗人です。しかし今夜参ったの...

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タイトル：奉教人の死

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：たとひ三百歳の齢を保ち、楽しみ身に余ると云ふとも、未来永々の果しなき楽しみに比ぶれば、夢幻の如し。 ―慶長訳 Guia do Pecador― 善の道に立ち入りたらん人は、御教にこもる不可思議の甘味を覚ゆべし。 ―慶長訳 Imitatione Christi― 一......

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タイトル：雛

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：箱を出る顔忘れめや雛二対　　蕪村　これは或老女の話である。　……横浜の或亜米利加人へ雛を売る約束の出来たのは十一月頃のことでございます。紀の国屋と申したわたしの家は親代々諸大名のお金御用を勤めて居りましたし、殊に紫竹とか申した祖父は大通の一人にもなつて居りましたか......

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タイトル：春の夜

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　これは近頃Ｎさんと云う看護婦に聞いた話である。Ｎさんは中々利かぬ気らしい。いつも乾いた唇のかげに鋭い犬歯の見える人である。　僕は当時僕の弟の転地先の宿屋の二階に大腸加答児を起して横になっていた。下痢は一週間たってもとまる気色は無い。そこで元来は弟のためにそこに来ていた...

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タイトル：春

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　　　　　　　　一　ある花曇りの朝だった。広子は京都の停車場から東京行の急行列車に乗った。それは結婚後二年ぶりに母親の機嫌を伺うためもあれば、母かたの祖父の金婚式へ顔をつらねるためもあった。しかしまだそのほかにもまんざら用のない体ではなかった。彼女はちょうどこの機会に、...

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タイトル：春の心臓

著者：ウィリアム・バトラー・イエイツ

出版社： ConTenDo

概要：　一人の老人が瞑想に耽りながら、岩の多い岸に坐つてゐる。顔には鳥の脚のやうに肉がない。処はジル湖の大部を占める、榛の林に掩はれた、平な島の岸である、其傍には顔の赭い十七歳の少年が、蠅を追つて静な水の面をかすめる燕の群を見守りながら坐つてゐる。老人は古びた青天鵞絨を、少年は青い帽子....

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タイトル：手巾

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　東京帝国法科大学教授、長谷川謹造先生は、ヴエランダの籐椅子に腰をかけて、ストリントベルクの作劇術を読んでゐた。　先生の専門は、植民政策の研究である。従つて読者には、先生がドラマトウルギイを読んでゐると云ふ事が、聊、唐突の感を与へるかも知れない。が、学者としてのみならず、教育....

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タイトル：鼻

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　禅智内供の鼻と云えば、池の尾で知らない者はない。長さは五六寸あって上唇の上から顋の下まで下っている。形は元も先も同じように太い。云わば細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下っているのである。　五十歳を越えた内供は、沙弥の昔から、内道場供奉の職に陞った今日ま...

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タイトル：母

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　　　　　　　　一　部屋の隅に据えた姿見には、西洋風に壁を塗った、しかも日本風の畳がある、――上海特有の旅館の二階が、一部分はっきり映っている。まずつきあたりに空色の壁、それから真新しい何畳かの畳、最後にこちらへ後を見せた、西洋髪の女が一人、――それが皆冷やかな光の中に、... ...

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タイトル：疑惑

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　今ではもう十年あまり以前になるが、ある年の春私は実践倫理学の講義を依頼されて、その間かれこれ一週間ばかり、岐阜県下の大垣町へ滞在する事になった。元来地方有志なるものの難有迷惑な厚遇に辟易していた私は、私を請待してくれたある教育家の団体へ予め断りの手紙を出して、送迎とか宴会とかあ... ...

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タイトル：玄鶴山房

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：一　………それは小ぢんまりと出来上った、奥床しい門構えの家だった。尤もこの界隈にはこう云う家も珍しくはなかった。が、「玄鶴山房」の額や塀越しに見える庭木などはどの家よりも数奇を凝らしていた。　この家の主人、堀越玄鶴は画家としても多少は知られていた。しかし資産を作った...

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タイトル：英雄の器

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：「何しろ項羽と云う男は、英雄の器じゃないですな。」　漢の大将呂馬通は、ただでさえ長い顔を、一層長くしながら、疎な髭を撫でて、こう云った。彼の顔のまわりには、十人あまりの顔が、皆まん中に置いた燈火の光をうけて、赤く幕営の夜の中にうき上っている。その顔がまた、どれもいつになく微笑......

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タイトル：伝吉の敵打ち

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　これは孝子伝吉の父の仇を打った話である。　伝吉は信州水内郡笹山村の百姓の一人息子である。伝吉の父は伝三と云い、「酒を好み、博奕を好み、喧嘩口論を好」んだと云うから、まず一村の人々にはならずもの扱いをされていたらしい。（註一）母は伝吉を産んだ翌年、病死してしまったと云うものも....

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タイトル：第四の夫から

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　この手紙は印度のダアジリンのラアマ・チャブズン氏へ出す手紙の中に封入し、氏から日本へ送って貰うはずである。無事に君の手へ渡るかどうか、多少の心配もない訣ではない。しかし万一渡らなかったにしろ、君は格別僕の手紙を予想しているとも思われないからその点だけは甚だ安心している。が、もし....

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タイトル：偸盗

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　　　　　　　一「おばば、猪熊のおばば。」　朱雀綾小路の辻で、じみな紺の水干に揉烏帽子をかけた、二十ばかりの、醜い、片目の侍が、平骨の扇を上げて、通りかかりの老婆を呼びとめた。 ―― 　むし暑く夏霞のたなびいた空が、息をひそめたように、家々の上をおおいかぶさった、七月... ...

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タイトル：父

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　自分が中学の四年生だった時の話である。　その年の秋、日光から足尾へかけて、三泊の修学旅行があった。「午前六時三十分上野停車場前集合、同五十分発車……」こう云う箇条が、学校から渡す謄写版の刷物に書いてある。　当日になると自分は、碌に朝飯も食わずに家をとび出した。電車でゆ...

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タイトル：カルメン

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　革命前だったか、革命後だったか、――いや、あれは革命前ではない。なぜまた革命前ではないかと言えば、僕は当時小耳に挟んだダンチェンコの洒落を覚えているからである。　ある蒸し暑い雨もよいの夜、舞台監督のＴ君は、帝劇の露台に佇みながら、炭酸水のコップを片手に詩人のダンチェンコと話......

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タイトル：舞踏会

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　　　　　　　一　明治十九年十一月三日の夜であつた。当時十七歳だつた――家の令嬢明子は、頭の禿げた父親と一しよに、今夜の舞踏会が催さるべき鹿鳴館の階段を上つて行つた。明い瓦斯の光に照らされた、幅の広い階段の両側には、殆人工に近い大輪の菊の花が、三重の籬を造つてゐた。菊は一....

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タイトル：文章

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：「堀川さん。弔辞を一つ作ってくれませんか？　土曜日に本多少佐の葬式がある、――その時に校長の読まれるのですが、……」　藤田大佐は食堂を出しなにこう保吉へ話しかけた。堀川保吉はこの学校の生徒に英吉利語の訳読を教えている。が、授業の合い間には弔辞を作ったり、教科書を編んだり、御前....

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タイトル：文芸的な、余りに文芸的な

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　　　　　一　「話」らしい話のない小説　僕は「話」らしい話のない小説を最上のものとは思つてゐない。従つて「話」らしい話のない小説ばかり書けとも言はない。第一僕の小説も大抵は「話」を持つてゐる。デツサンのない画は成り立たない。それと丁度同じやうに小説は「話」の上に立つもの...

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タイトル：文学好きの家庭から

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　私の家は代々お奥坊主だったのですが、父も母もはなはだ特徴のない平凡な人間です。父には一中節、囲碁、盆栽、俳句などの道楽がありますが、いずれもものになっていそうもありません。母は津藤の姪で、昔の話をたくさん知っています。そのほかに伯母が一人いて、それが特に私のめんどうをみてくれま....

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タイトル：尾生の信

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　尾生は橋の下に佇んで、さっきから女の来るのを待っている。　見上げると、高い石の橋欄には、蔦蘿が半ば這いかかって、時々その間を通りすぎる往来の人の白衣の裾が、鮮かな入日に照らされながら、悠々と風に吹かれて行く。が、女は未だに来ない。　尾生はそっと口笛を鳴しながら、気軽く橋....

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タイトル：芭蕉雑記

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　　　　　一　著書　芭蕉は一巻の書も著はしたことはない。所謂芭蕉の七部集なるものも悉門人の著はしたものである。これは芭蕉自身の言葉によれば、名聞を好まぬ為だつたらしい。「曲翠問、発句を取りあつめ、集作ると云へる、此道の執心なるべきや。翁曰、これ卑しき心より我上手なる...

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タイトル：羅生門の後に

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　この集にはいっている短篇は、「羅生門」「貉」「忠義」を除いて、大抵過去一年間――数え年にして、自分が廿五歳の時に書いたものである。そうして半は、自分たちが経営している雑誌「新思潮」に、一度掲載されたものである。　この期間の自分は、東京帝国文科大学の怠惰なる学生であった。講義....

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タイトル：或旧友へ送る手記

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　誰もまだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない。それは自殺者の自尊心や或は彼自身に対する心理的興味の不足によるものであらう。僕は君に送る最後の手紙の中に、はつきりこの心理を伝へたいと思つてゐる。尤も僕の自殺する動機は特に君に伝へずとも善い。レニエは彼の短篇の中に或自殺...

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タイトル：或阿呆の一生

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　僕はこの原稿を発表する可否は勿論、発表する時や機関も君に一任したいと思つてゐる。　君はこの原稿の中に出て来る大抵の人物を知つてゐるだらう。しかし僕は発表するとしても、インデキスをつけずに貰ひたいと思つてゐる。　僕は今最も不幸な幸福の中に暮らしてゐる。しかし不思議にも後...

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タイトル：闇中問答

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　　　　　　　一或声　お前は俺の思惑とは全然違つた人間だつた。僕　それは僕の責任ではない。或声　しかしお前はその誤解にお前自身も協力してゐる。僕　僕は一度も協力したことはない。或声　しかしお前は風流を愛した、――或は愛したやうに装つたらう。僕　僕...

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タイトル：あの頃の自分の事

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　以下は小説と呼ぶ種類のものではないかも知れない。さうかと云つて、何と呼ぶべきかは自分も亦不案内である。自分は唯、四五年前の自分とその周囲とを、出来る丈こだはらずに、ありのまま書いて見た。従つて自分、或は自分たちの生活やその心もちに興味のない読者には、面白くあるまいと云ふ懸念もあ....

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タイトル：秋

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　　　　　　　一　信子は女子大学にゐた時から、才媛の名声を担つてゐた。彼女が早晩作家として文壇に打つて出る事は、殆誰も疑はなかつた。中には彼女が在学中、既に三百何枚かの自叙伝体小説を書き上げたなどと吹聴して歩くものもあつた。が、学校を卒業して見ると、まだ女学校も出てゐない....

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タイトル：あばばばば

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　保吉はずつと以前からこの店の主人を見知つてゐる。　ずつと以前から、――或はあの海軍の学校へ赴任した当日だつたかも知れない。彼はふとこの店へマツチを一つ買ひにはひつた。店には小さい飾り窓があり、窓の中には大将旗を掲げた軍艦三笠の模型のまはりにキユラソオの壜だのココアの罐だの干....

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タイトル：十本の針

著者：芥川龍之介

出版社： ConTenDo

概要：　　　　　一　ある人々　わたしはこの世の中にある人々のあることを知っている。それらの人々は何ごとも直覚するとともに解剖してしまう。つまり一本の薔薇の花はそれらの人々には美しいとともにひっきょう植物学の教科書中の薔薇科の植物に見えるのである。現にその薔薇の花を折っている時で....

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タイトル：あいびき

著者：イワン・ツルゲーネフ

出版社： ConTenDo

概要：　このあいびきは先年仏蘭西で死去した、露国では有名な小説家、ツルゲーネフという人の端物の作です。今度徳富先生の御依頼で訳してみました。私の訳文は我ながら不思議とソノ何んだが、これでも原文はきわめておもしろいです。　秋九月中旬というころ、一日自分がさる樺の林の中に座していたこと... ...

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