中谷宇吉郎
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タイトル: 寺田先生の追憶 ――大学卒業前後の思い出――出版社: ConTenDo概要: わが師、わが友として、最も影響を受けた人たちと言えば、物心がついてから今日まで、私が個人的に接触したすべての人が、師であり友であった。 どういう人でも、よく見れば必ず長所があるので、その点を表立てて見ることにすれば、自分の接触する人は誰でも師であり、友であると、この頃私はか... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 茶碗の曲線 ――茶道精進の或る友人に――出版社: ConTenDo概要: もう二十年以上も昔の話であるが、考古学を専攻していた私の弟が、東大の人類学教室で、土器の研究をしていたことがある。 その頃は、まだ今日のように、土器の型式による分類などは、ほとんど出来ていなかった。 弟はその分類の仕事にとりかかって、何か科学的な分類法がないかと、いろいろ考え......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: ツーン湖のほとり出版社: ConTenDo概要: もう十年も前のことであるが、倫敦に留学中私はユニバシティカレッヂのポーター老先生の所へ繁げ/\出入りしてゐるうちに、一緒に瑞西へ行かうとさそはれたことがあつた。 そして二週間許り、ポーター先生や引退した英国の老法律家夫妻と、ツーン湖畔のオーベルホッフェンといふ小村で暮したことがあ... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 楡の花出版社: ConTenDo概要: 私の今つとめている札幌の大学は、楡(エルム)の樹で有名である。 緑の芝生がつやつやと滑らかで、そのところどころに大きい楡の樹が立ち、鮮かな緑の葉が天蓋のように空を蔽っている。 夏の陽光に映えたその木蔭から、もとは白壁の校舎が点々と見えた。 全体の様子は、ニューイングランド....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 線香花火出版社: ConTenDo概要: もう十年以上も前のことであるが、まだ私が大学の学生として寺田先生の指導の下に物理の卒業実験をしていた頃の話である。 その頃先生はよく新しく卒業して地方の高等学校などへ奉職して行く人に、金や設備が無くても出来る実験というものがあるという話をして、そういう「仕事」を是非試みてみるよう... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 「霜柱の研究」について出版社: ConTenDo概要: 同窓の友人M君から自由学園学術叢書第一を贈られたので早速読んで見た。 この小冊子には霜柱の研究と布の保温の研究とが収められていて、研究者は自然科学グループという名前であったが、内容を見ると五、六人の学園の御嬢さんの共同研究であることが分った。 初めの霜柱の研究というのを何気な......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 「茶碗の湯」のことなど出版社: ConTenDo概要: もう三年ばかり前のことであるが、小宮先生の紹介で鈴木三重吉氏の未亡人の方から、『赤い鳥』に昔出ていた通俗科学の話を纏めて、一冊の本にしたいから、その校訂をしてくれというお話があった。 三重吉氏の『赤い鳥』が、児童文学とも称すべき新しい境地を拓いて、児童の情操教育に偉大な足跡... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 『西遊記』の夢出版社: ConTenDo概要: 子供の頃読んだ本の中で、一番印象に残っているのは、『西遊記』である。 もう三十年も前の話であり、特に私たちの育った北陸の片田舎には、その頃は子供のための本などというものはなかった。 子供たちは、大人の読み古した講談本などを、親に叱られながら、こっそり読んでいた。 その頃盛....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 『日本石器時代提要』のこと出版社: ConTenDo概要: 弟治宇二郎が書いた本というのは、表題の『日本石器時代提要』であって、菊判三百ページくらいの堂々たる体裁であった。 評判も大分良かったらしく、『朝日新聞』の書評でも「年齢わずか三十歳の著者が」と、大いに褒めてあった。 しかし本当は、当時二十七歳くらいだったので、ひどく早熟な方であった......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: おにぎりの味出版社: ConTenDo概要: お握りには、いろいろな思い出がある。 北陸の片田舎で育った私たちは、中学へ行くまで、洋服を着た小学生というものは、誰も見たことがなかった。 紺絣の筒っぽに、ちびた下駄。 雨の降る日は、藺草でつくったみのぼうしをかぶって、学校へ通う。 外套やレインコートはもちろんのこと、傘をもつ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 面白味出版社: ConTenDo概要: 昔、伊東で病気を養っていた頃、東京の一流料理店の主人が、遊びに来たことがある。 料理店を通じての友人ではなく、同郷の男である。 私にはよく分からなかったが、何でも非常な食通で、料理の腕も一流だという噂の男であった。 それで女房が、伊東の材料で、何か料理を教えてもらいたいと頼んだ....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 貝鍋の歌出版社: ConTenDo概要: 北海に愚魚あり その名をほっけという 肉は白きこと雪片を欺き 味はうすきこと太虚に似たり 一片の三石の昆布 一滴のうすくちの醤油 真白なる豆腐に わずかなる緑を加う くつくつと貝鍋は煮え 夜は更けて味いよいよ新たなり まだ子供たちが幼かった頃、うま... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 科学映画の一考察出版社: ConTenDo概要: 文化映画の中で特に自然科学を直接対象としたものを科学映画と呼ぶことにする。 この科学映画は大別して大体二種類に分けられると思う。 その一つはいわゆる「博物もの」で、色々の動物や植物の生態をうつして見せるものであり、他の一つは「理化もの」とでもいうべきものである。 「博物もの....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 科学と文化出版社: ConTenDo概要: この頃自然科学上の色々の問題が、文科系統の学問をしている人々の口に度々上っているようである。 自然科学が従来のように工業的方面にのみ利用されているのにあきたらず、もっと人間の精神活動の方面に、即ち広い意味での文化の向上に役立たせようという企ての一つの現れと思われる。 この運動......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: かぶらずし出版社: ConTenDo概要: 金沢の郷土の漬け物に、かぶらずしというものがある。 大きいかぶらを、厚さ一センチくらいに切り、中に切れ目を入れて、その中に塩ブリをはさむ。 それを重石を強くしてこうじでつけたもので、非常にうまい漬け物である。 北陸地方では、すしといえば、たいてい押しずしであって、江戸風の握りず....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 簪を挿した蛇出版社: ConTenDo概要: 石川県の西のはずれ、福井県との境近くに大聖寺という町がある。 其処に錦城という小学校があって、その学校で私は六年間の小学校生活を卒えた。 たしか尋常六年の時に、明治天皇が崩御されたように記憶しているので、私の小学校時代は、明治の末期に当るわけである。 この町は、子爵の方の前田家....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 硝子を破る者出版社: ConTenDo概要: 汽車はあいかわらず満員である。 吹雪で遅れ遅れするので、駅には前からの乗客が溜って益々混雑をひどくするらしい。 やっと窓際の席がとれて、珍しいことと喜んだのも束の間、硝子が破れているので、雪を雑えた零下十度の風が遠慮なく吹き込んで来る。 とてもたまったものではない。 前に...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 九谷焼出版社: ConTenDo概要: 震災で失ったものの中で、この頃になって、惜しいと思い出したものは九谷焼である。 父が心懸けて集めたもので、古い時代のいわゆる古九谷と呼ばれている高価な品ではないのだが、現今大量生産でどんどん造り出している今の九谷焼と、古い時代の「真正の九谷焼」との連絡を見るために、丁度都合のよい... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 原子爆弾雑話出版社: ConTenDo概要: 昭和十二年の七月、北支の蘆溝橋に起った一事件は、その後政府の不拡大方針にもかかわらず、目に見えない大きい歴史の力にひきずられて、漸次中支に波及して行った。 そして、十月に上海が陥ち、日本軍が首都南京に迫るに到って、漸く世界動乱の萌しが見えて来た。 丁度その頃、私は「弓と鉄砲」......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 粉雪出版社: ConTenDo概要: われわれが日常ちゃんと決まった意味があるように思って使っている言葉の中には、科学的にはその意味が極めて漠然としたものがかなり沢山ある。 この数年来雪の研究を始めてみて気が付いたのであるが、その種の言葉の良い例が「粉雪」である。 北海道では、冬の初めと終わり頃には牡丹雪も降るが......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 語呂の論理出版社: ConTenDo概要: 先年北海道で雪の研究に手を付けた時、日本の昔の雪の研究として有名な、土井利位の『雪華図説』と鈴木牧之の『北越雪譜』とを何とかして手に入れたいものと思って、古書の専門店の方へも聞き合せたことがあったが、折悪しくどうも手に入らないので困っていた。 ところが、何思わずそういう意味のこと... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 指導者としての寺田先生出版社: ConTenDo概要: 先生の臨終の席に御別れして、激しい心の動揺に圧されながらも、私はやむをえぬ事情のために、その晩の夜行で帰家の途に就いた。 同じ汽車で小宮さんも仙台へ帰られたので、途中色々先生の追想を御伺いする機会を与えられた。 三十年の心の友を失われた小宮さんは、ひどく力を落された御様子でボツリボ......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 島津斉彬公出版社: ConTenDo概要: 昭和十九年の暮に、岩波文庫の一冊として『島津斉彬言行録』が出版された。 これには牧野伸顕伯の序文がついている。 当時既に日本は断末魔の境にあり、この本なども、ぼろぼろの藁半紙のような紙に印刷されているまことに粗末な本であるが、これは私にとっては、大切な本の一つである。 牧....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 線香の火出版社: ConTenDo概要: 昔、寺田(寅彦)先生が、よく「線香の火を消さないように」という言葉を使われた。 大学を新しく卒業して、地方の中学校即ち今の高等学校などへ赴任する学生が、先生のところへ暇乞いに行くと、先生はどういうところへ行っても、研究だけは続けなさいと諭された。 「地方の学校へ行くと、研究の......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 淡窓先生の教育出版社: ConTenDo概要: 先日、日田へ行く機会があったので、広瀬淡窓先生の旧屋、秋風庵を訪ねた。 広瀬淡窓の名前は、前から聞いていたが、機会がなくて、今までその人となりや教育方針のことなどは何も知らなかった。 それで庵主古川老のお話は、非常に興味が深く、また大いに啓発されるところがあった。 門弟四....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 寺田先生と銀座出版社: ConTenDo概要: 寺田寅彦先生の連句の中に 春の夜や不二家を出でて千疋屋 という句がある。 「銀座アルプス」や「珈琲哲学序説」などでよく分るように、先生は銀座へよく出かけられた。 先生は、毎日のように、十一時半頃になると、実験室へ顔を出され、「ちょっと失敬」といって、銀座へ出かけられた......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 天災は忘れた頃来る出版社: ConTenDo概要: 今日は二百二十日だが、九月一日の関東大震災記念日や、二百十日から、この日にかけては、寅彦先生の名言「天災は忘れた頃来る」という言葉が、いくつかの新聞に必ず引用されることになっている。 ところで、よく聞かれるのであるが、この言葉は、先生のどの随筆にあるのかが、問題になっている... ...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 南画を描く話出版社: ConTenDo概要: 昨年の春から、自分では南画と称しているところの墨絵を描くことを始めた。 南画を描くなどというと、段々年をとると、油絵よりも墨絵の方が良くなるそうだねなどと冷かされることもある。 しかし私の場合は、そういう趣味が枯れて来たなどという洒落れた話ではなく、もっと現実な理由があるので......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 日本のこころ出版社: ConTenDo概要: もう二十年くらいも昔の話であるが、大学を出てすぐの頃、私は理化学研究所(現在の科学研究所)へはいった。 そして寺田先生の助手として、三年間先生の実験室で働いた。 その頃の理化学研究所、というよりも理研といった方が通りがよいのであるが、その理研には、大学を出たての若い仲間がたく......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 一人の無名作家出版社: ConTenDo概要: 昭和十年発行の岩波版『芥川竜之介全集』第八巻に「一人の無名作家」という短文がある。 七、八年前、北国の方の同人雑誌を送って来たことがあるが、その中の『平家物語』に主題をとった小説が、印象に残っている。 「今はその青年の名も覚えておりませんが、その作品が非常によかったので、今で......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 真夏の日本海出版社: ConTenDo概要: 此の十年余り、海といへば太平洋岸の海しか見てゐないのであるが、時々子供の頃毎年親しんだ日本海の夏の海を思ひ返して見ると、非常に美しかつたといふ思ひ出が浮んで来る。 日本海の沿岸には一般に砂丘がよく発達してゐる。 浪打ち際から真白な砂が数丁も続いて小高い丘になり、その丘を越えた......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 雪雑記出版社: ConTenDo概要: この頃大ていの雪の結晶が皆実験室の中で人工で出来るようになったので、自分ではひとりで面白がっている。 よく人にそれはどういう目的の研究なんですかと聞かれるので、こうして雪の成因が判ると冬期の上層の気象状態が分るようになって、航空気象上重要なことになるのですよと返事をする。 そうする......商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 由布院行出版社: ConTenDo概要: 去年の夏のことである。 漸く学校は卒業したが、理研の方の建物が出来上っていなかったので、暫く物理教室の狭い実験室の一隅を借りて、仕事を続けていた時のことである。 Y君やM君と一緒に、一室で三組も実験をしていて、窮屈な思いをしていたところへ、夏が来た。 夏休みで学生がいなくなると....商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 流言蜚語出版社: ConTenDo概要: 八月二十四日の真夜中、当分杜絶になるという最後の連絡船に乗って本州へ渡った。 船は樺太からの引揚民で一杯であった。 人々は折り重って冷い甲板上にねていた。 それからそれにも増して混んでいる東北線で一昼夜揉み潰されて、やっと東京へ着いた。 東京は全く平穏であったが、帰りの汽...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: 私の生まれた家出版社: ConTenDo概要: 私の郷里は、片山津という、加賀の温泉地である。 今は加賀市になって、国際観光ホテルもあり、近くに立派なゴルフ場もある。 まるで昔日の面影はない。 しかし私が生まれた頃は、北陸の片田舎の小さい部落であった。 村ともいえないところで、本当の地名は、作見村字片山津小字砂走である。 村の下...商品価格: ¥0(税込)
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タイトル: サラダの謎出版社: ConTenDo概要: 私はごく普通のフランス風のサラダが好きである。 レタスとトマトを、酢とオリーブ油でドレスしただけの簡単なサラダのことである。 洋食は、一般にいってあまり好かないが、このサラダだけは例外で、食卓に出ていると、つい先に手が出る。 ものの好き嫌いなどというものは、たいてい子供の頃か、....商品価格: ¥0(税込)