小説 新・元朝秘史(2版)
概要:
本書は「モンゴル帝国史(ドーソン著 佐口透 訳注)」、「モンゴル秘史 チンギス・カン物語 村上正二 訳注」を底本にした創作です。
十三世紀、モンゴル族の盟主ボルジギン・キヤト氏の族長チンギスは、カラ・アルジンの戦いで大敗、バルジュナ湖に落ちた。
このチンギスに、シルクロードでの強力な後ろ盾を求めるウイグル商人たちが近づき、その助けを得てチンギスはモンゴルの大統一を果たす。
シルクロードに目を向けたチンギスは、ウイグル商人からの金銀と情報、契丹族の軍略を得て、西夏、金国、西遼へ侵攻。
阻んだのはトルコ族ホラズム帝国のムハマド。当初は友好な通交だったが、トルコ族を嫌うバクダードのカリフの陰謀が二人の間を裂く。
カリフはチンギスをオトラルで襲わせ、ホラズムへ呼び込む。
三年余に及んだチンギスの復讐は凄まじく、ホラズムからペルシャ、アルメニア、グルジア、キエフを、十年後の侵攻では、ロシア全土からポーランド、ハンガリーを襲った。
凱旋したその年の秋、チンギスは西夏から金国へと兵を進め、翌年の夏、病に六盤山で倒れた。
跡は三男のオゴタイ。しかし、弟がカアンとなったことで兄弟間の溝を拡げ、彼の死後、跡目を巡って一族は割れる。
オゴタイの子グユクの後、カアン位はトゥルイ家へと移り、モンケ、フビライがカアンに就く。
内政ではウイグル人に代わりペルシャ(イラン)人たちが弟アリク・ブカに、チベット族がフビライに寄った。
アリクが敗れると、オゴタイの孫カイズがフビライに叛旗を翻し、四十年戦争が始まる。フビライは戦費を賄うため新たな収奪の場を求めた。
それが、南宋、日本、ビルマ、ベトナム、ジャワ侵攻の背景だった。日本侵攻の先兵は高麗国。
文永、弘安の役で各々三万、四万を超す大兵を送り、対馬、壱岐、長門、松浦、北九州各地を襲った。嵐が日本を救ったが、彼らによる暴虐の史実も消した。
弘安の役から十三年後、フビライ(八十歳)が世を去る。次男ジンギムの末子、テルムが跡を継ぐ。テルムに子はなく、その後は内争だった。
フビライの死から六十年後、朱元璋がモンゴル族を逐う。
四百年後の十七世紀中頃、フビライの手にあった中華王朝の「玉璽」が満州族(かつての女真族)に捧げられた。
国名を「清」へと改め、モンゴル族、漢族などの諸族を従え、五族共和の旗印を掲げた満州族が北京に入った…。
目次:
目 次
青之巻
第一 狼居胥山(ブルカン岳)
第二 若き狼たち
第三 即 位
赤之巻
第四 バルジュナの誓い
第五 大統一
第六 金 国
白之巻
第七 イスラムの梟雄
第八 遠 征
第九 六盤山
第十 タタールの軛(くびき)
黒之巻
第十一 南宋国
第十二 元 寇
第十三 北 帰
- ジャンル:
- 文芸 > 歴史・時代小説 人文・思想 > 世界史
- 販売開始:
- 2016/03/16
- ファイルサイズ:
- 2.95MB
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- J0010356BK0046996001
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本書は、「モンゴル帝国史(ドーソン著 佐口透 訳注)」、「モンゴル秘史 チンギス・カン物語 村上正二 訳注」を底本にした創作小説である。
元は、1271年から1368年まで中国本土とモンゴル高原を中心領域として、東アジアと北アジアを支配した中華王朝である。東アジアから東ヨーロッパまで広大な領域にまたがるモンゴル帝国の一部、つまりモンゴル人統治下の中国領でもあった。
1260年、元は、チンギス・カンの孫でモンゴル帝国の第5代皇帝に即位したクビライ(フビライ)が、1271年にモンゴル帝国の国号を大元と改めたことにより成立した。元とはクビライ以降のモンゴル帝国の皇帝政権のことをいう。
本書は、初代皇帝クビライが、現在の中国とモンゴル高原を中心に支配、勢力を拡大した元朝の秘話を紹介している。元朝のダイナミックな歴史の流れを、当時の人間模様と史実を絡めながら壮大なドラマとして緻密に描いている。歴史小説が好きな人にとっても十分読み応えがある作品であろう。
そして、日本にもかかわりがある元寇についても描かれている。
元朝は、1274年に10万人以上の総兵力で現在の九州北部にあたる、博多湾沿岸の鷹島沖などに来襲しており(文永の役)、当時の執権であった北条時宗が総司令官として迎撃にあたった。
日本の歴史上、初めて外敵から襲来を受け元朝軍の猛攻撃を退けている。
日本の活躍が描かれた小説は多くあるが、本書は元朝にスポットを当てて描かれており、その新鮮さがこの時代に興味がある人にとって、読み応えのある作品であろう。
元朝軍は、1281年に再来襲した弘安の役の時には、対馬・壱島などにも訪れるなど猛攻撃を行ったが、日本軍の抗戦と台風などにより上陸を退けられるなど、日本史上多大な足跡を残したのである。
元朝の史実を小説としてまとめた一冊である。
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