いらっしゃいませ ゲスト様

ー 今、あなたの読みたいをすぐ叶えます ー

»TOP > 著作者別 > 牧野信一
Twitter  Facebook 

牧野信一

検索結果294件中181件から225件までを表示
≪前へページ:1  2  3  4  5  6  7次へ≫
  • タイトル: 「悪」の同意語
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  小田原から静岡へ去つて、そこで雛妓のお光とたつた二人だけで小さな芸妓屋を始めたといふ話のお蝶を訪ねよう――さう思ふことゝ、米国ボストンのFに、最近の自分の消息を知らせなければならないこと――。  この二つのことだけは、近頃彼が、自ら例へて冬籠りの地虫の心になつてゐる... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 明るく・暗く
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  天井の隅に、小さい四角な陽がひとつ、炎ゆるやうにキラキラと光つてゐた。 湯槽の上の明りとりから射し込んだ陽が、反対の壁にかゝつてゐる鏡に当つて、其処に反映してゐるのだつた。  純吉は、先程から湯槽に仰向けに浸つて、悠々と胸を拡く延しながら、ぼんやりとその小さな陽を眺め......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 秋・二日の話
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  綽名だけは一人前――悪党きどりの不良少年――母島村長の懇望から三十人をけふ島送り――。  未だ十三や十四の身空でオートバイ、洋服、熊、ガタ倉、黒、トガワ、青坊主、ヤセ馬等といふ綽名を持ち、ひとかどの悪党きどりで浅草公園を中心に新公園、寺院墓地、雷門、川崎銀行裏、五重塔等に屯し... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 秋晴れの日
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  彼は、飲酒があまり体質に適してゐないためか、毎朝うがひをする時に、腹の中から多量の酒臭い不快な水を吐き出した。 前には、それは時々のことだつたがこの頃では、これが定めとなつてしまつた。 そして、これも前には稀であつたが、この吐く水がなくなると、一層激しく、胸や腹が、空々し......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 悪筆
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  縁側の敷居には硝子戸がはまつてゐる。  あたり前の家と同じく勿論これは昼間だけの要で、夜になれば外側に雨戸が引かれるのだと私は、はじめ思つてゐたのだつたが、それが、これ一枚で雨戸兼帯だつた。 ――夜になると、この内側には幕を降ろさなければならなかつた。  八畳、四畳半、玄関三....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 熱い風
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  強ひては生活のかたちに何んな類ひの理想をも持たない、止め度もなく愚かに唯心的な私であつた。 ――いつも、いつも、たゞ胸一杯に茫漠と、そして切なく、幻の花輪車がくるくる廻つてゐるのを持てあましてゐるだけの私であつた。 廻つて、廻つて、稍ともすると凄まじい煙幕に魂を掻き消され......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 或る五月の朝の話
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 「シン! シン!」  夢の中で彼は、さう自分の名前を呼ばれてゐるのに気づいたが、と同時にギュツと頬ツぺたをつねりあげられたので、思はずぎよツとして眼を見開いた。 ――Fが酷い仏頂面をして彼を睨んでゐた。 彼は、縁側の椅子に凭れてうたゝ寝をしてゐたのだ。 「失礼だ!」とFは叫んだ。 ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 鸚鵡の思ひ出
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一 「いくら熱心になつたつて無駄だわよ。 ――シン。 鸚鵡だからつて必ず言葉を覚えるときまつてはゐまいし。」  アメリカ娘のFは、さう朗らかに笑つて私の肩を叩いた。 足音を忍ばせて彼女は私の背後に近寄つたのだらう、声で、私は初めてFに気づいて振り反つた。 「僕は何もグリツプ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 小川の流れ
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  或日彼は、過去の作品を一まとめにして、書物にすることで、読みはじめると、大変に情けなくなつて、恥で、火になつた。 ――身も世もなき思ひであつた。  就中、純吉といふ主人公が出て来る幾つかの作品では、堕落を感じて、居たゝまれなかつた。 「純吉」が、他人をモデルにしたもので....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: お蝶の訪れ
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  いま時分に、まだ花のあるところなんてあるのかしら? ――はじめて来た方角には違ひないのだが、案外だ! この様子を見ると何処か途中にでも花見の場所があるのらしいが、どうも妙だ!  何処の花だつて、もうとうに散つてゐる筈だが――花見と云つても、あの時のは芝居見物のことだ... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 海棠の家
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  おそらくあの娘は、私より二つか三つぐらゐの年上だつたに違ひないのだが私には相当のおとなに見えた。 兄弟はないらしかつた。  私の家にも稀には母親に伴れられて遊びに来たのであるが、よそに来ると私とさへ碌々口もきかずに母親の蔭で愚図ばかり鳴らしてゐたので、そこでの記憶は何も残つてゐ......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 蔭ひなた
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  或る朝、私が朝飯を済ませて煙草を喫してゐるとAが来て、あがらないで、 「君、直ぐ散歩へ行かう、早く早く、直ぐ仕度をして呉れ。 君は斯ういふ服装は持つてゐないか? あゝ、さうか、無ければたゞの洋服でよろしい、大急ぎで着換へないか。」と、大変勢急に口走ると私の返事も待たずに玄関を出... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 環魚洞風景
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一 「まつたく、ひどい音響だね! あれは――もう僕は、大抵慣れたつもりなんだが、だがさつぱり駄目だよ。 ――これほど突拍子もないものになると、一日に何辺繰り反されても、その度にひどく驚かされるんだ、その余韻が消えるまでには、相当の時間を要するほどに――だ。 ……で、ね、もう起る......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 極夜の記
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  静かな、初秋の夜である。  もう、幾日といふことなく、漫然とまつたく同じ夜ばかりを送り迎へてゐるのだが、夜毎に静けさが増して来るやうだ。  要があつて、斯うしてゐるわけではない、昼間ぐつすりと眠るので、夜は眠れないだけのことである、不思議はないのだ。 神経衰弱でもなければ、不....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 競馬の日
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  眠つても眠つても眠り足りないやうな果しもなくぼんやりした頭を醒すために私は、屡々いろいろな手段を講じる。  頭がぼんやりしてゐると私は、いつも飛んでもない失敗を繰り返す癖に怖れをもつてゐたからである。 「うんうん――と、はつきり点頭いてゐたから約束通り僕は今迄停車......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 西瓜喰ふ人
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  滝が仕事を口にしはじめて、余等の交際に少なからぬ変化が現れて以来、思へば最早大分の月日が経つてゐる。 それは、未だ余等が毎日海へ通つてゐた頃からではないか! それが、既に蜜柑の盛り季になつてゐるではないか!  村人の最も忙しい収穫時である。 静かな日には早朝から夕暮れまで、彼方の......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 父の百ヶ日前後
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  彼が、単独で清友亭を訪れたのはそれが始めてだつた。 ――五月の昼日仲だつた。 「先に断つておくがね、僕今日は用事で来たんぢやないよ。 ……芸者をよんで、そして僕を遊ばせて呉れ。」  彼は、玄関に突ツ立つて、仏頂面でそんな言訳をした。 彼の姿を見ると、女将は眼を伏せて、...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 鶴がゐた家
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  母がゐる町の近くに帰つたが母と同じ家に住む要もなく、何処にゐても自由であり、それなのに、何故自分は今までの都にとゞまらなかつたのか? でなければ、何故、常々憧れてゐる妻を伴つての長い旅路にたゝなかつたのか、それにも何の妨げもなかつたのに――? 何故、初めての眼新しい刺... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 毒気
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一 「傍の者までがいらいらして来る。」  私が、毎日あまりに所在なく退屈さうに碌々としてゐるので、母も、相当の迷惑をおしかくしながら、私のために気の毒がるやうにそんなことを云つた。 ――「折角、みんなと一処に来てゐるのにね。」 「えゝ、だけど別段、――別段、どうもね、これ... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル:
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一 「まア随分暫らくでしたね。 それで何日此方へ帰つたの?」  河村の小母さんは、何の挨拶もなく庭口からのつそりと現れた純吉を見つけて、持前の機嫌の好さで叱るやうに訊ねた。 「四五日前……」  純吉はわけもなくにやにやしながらうつかりそんな嘘を吐いた。 「だつて学校は....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 夏ちかきころ
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  あいつの本箱には、黒い背中を縦に此方向きにした何十冊とも数知れない学生時代のノート・ブツクが未だに、何年も前から麗々と詰つてゐる。 ――尤も扉には必ず鍵がかゝつてゐるが、硝子が曇りでないから、中の書籍は一際見えるのであつた。 珍らしいものは持つてゐないが殊の他の蔵書家で、......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 晩春の健康
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  羽根蒲団の上に寝ころんでゐるやうだ――などゝ私は思つた位でした。 ――午頃まで、この儘眠つてやらうかしら、などゝも私は思つたりしました。  春先で、思ひ切り好く晴れた朝の海辺なのです。 ――もう、かれこれ二時間も前から私は渚の暖かい砂の上で退屈な、然し極めて快い愚考に自ら酔つたま....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 陽に酔つた風景
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  鶴子からの手紙だつたので彼は、勇んでY村行の軽便鉄道に乗つた。 勇んで――さうだ、彼は、ちよつと自分の姿を傍から眺めて見ると、あまり勇みたち過ぎてゐる自分が癪に触るほどだつた。  何とまあ自分は気の毒な慌て者だつたことだらう――彼は辛うじて間に合つた汽車の窓に腕をのせ......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 冬の風鈴
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  三月六日  前日中に脱稿してしまはうと思つてゐた筈の小説が、おそらく五分の一もまとまつてはゐなかつた。 それも、夥しく不安なものだつた。 ひとりの人間が、考へたことを紙に誌して、それを読み返した時に自ら嘘のやうな気がする――それは、どちらかの心が不純なのかしら? この頃の自分は、......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 舞踏会余話
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  川の向ひ側の山裾の芝原では、恰度山の神様の祭りの野宴がはじまるところでした。 ――月のはじめに、月毎に催される盛大な祝宴です。 一ト月の間で流れをせきとめるほど川ふちに溜る製材の破片を広場の中央に塚ほどに積みあげて四方から火を放ちます。 そして山ぢゆうの男達が車座になつて遠まきにこれ....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 貧しき日録
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  こゝは首都の郊外である。  タキノが、突然――(といふのはタキノ自身にとつて、そして一年程前に、これも突然主人を亡くして、こゝから二十里あまり離れてゐる海辺の寒村に彼のたつたひとりの小さな弟と二人で佗しく暮してゐたタキノの母親にとつての副詞に過ぎないことを断つて置かう。 彼女は......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 円卓子での話
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  彼の昨日の今日である、樽野の――。  今朝はまた昨日にも増した麗かな日和で、長閑で、あんなに遥かの沖合を走つてゐる漁船の快い発動機の音までが斯んなに円かに手にとるかのやうに聞えるほどの、明るい凪は珍らしい。 だから云ふまでもなく、海原は青鏡で、ただ、波を蹴たてて滑つて......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 昔の歌留多
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  三月もかゝると云はれてゐる病院へ滝は、毎日、日暮時に通つてゐた。 ――今度こそは彼は、之を堅く決行し通さうと念じてゐた。 こんなことをきつかけにしなければ、長い様々な生活上の悪習慣から逃れる術がないことを知つた。 様々な悪習慣は、彼が命をかけて目当としてゐる仕事までを相当の深さまで踏....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 籔のほとり
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  どうして此処の座敷の欄間にはあのやうな扇があんな風に五つも六つもかゝげてあるんだらう! 装飾の意味にしてはあくどすぎる! 何となくわけあり気に見えるではないか?  それにしてもあれは一体何に使ふものなのだらうか? 扇子には違ひないが、あれを扇子に使ふ者は仁王より他に... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 山彦の街
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  哄笑の声が一勢に挙つたかと思ふと、罵り合ひが始まつてゐる――鳥のやうな声で絶叫する者がある、女の悲鳴が耳をつんざくばかりに聞えたかと思ふと、男の楽し気な合唱が始まつてゐる――殴れ! とか、つまみ出してしまへ! とか、そんな凄まじい声がして、 「あゝ、痛いツ!」 「... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 山を越えて
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  彼女等の夫々の父親からの依頼で二人の娘をそちらへおくることになつたから、彼女等を夫々オフイスの一員に加へて貰ひたい、詳しいことは当人達からきいての上で、山の見学を望んでゐる二人の幼い学生達に能ふだけの満足を与へて欲しい――。  滝は、暖炉の傍で、父親からの英字タイプ... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 雪景色
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  滝は、あまり創作(小説)のことばかり想つてゐるのが重苦しくなつたのでスケツチ箱をさげて散歩に出かけた。 ――石段を降つて、又ひよろ/\と降つて行く海辺へ近い松林の中途であつた。 彼は、風景よりも人通りを気にして小径を出はずれると頭につかえる松の矮林の中へ腰をかゞめて姿を没......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: スプリングコート
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  丘を隔てた海の上から、汽船の笛が鳴り渡つて来た。 もう間もなくお午だな――彼はさう思つただけで動かなかつた。 いつもの通り彼は、まだこの上一時間か二時間はうと/\して過す筈だつた。 日が射してまぶしいもので、頭からすつぽりとかひまきを被つたまゝ凝と小便を怺へてゐた。 硝子戸...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: ダニューヴの花嫁
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  一  白雲は尽くる時無からん、白雲は尽くる時無からん……白雲は――。  おゝ、あの歌はどこの人がうたつてゐるのであらう、何といふ朗々たる音声であらうよ、その声がそのまゝ雲のやうだ、あゝ、あゝ、あれを御覧、あれを御覧、雲が/\/\……。  そんなに思つて、うつと... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: ダイアナの馬
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  一  二度つゞけて土曜日が雨だつた。 ――三木は、雨だつてむしろ出かけたかつたが、青木からの誘ひの手紙に――よく晴れたこの次の土曜日を待つ――といふ念がおしてあるので、二度の日曜日をつゞけて全く孤独の安息で暮した後だつたせいか、今朝起きて、麗らかな空を見出した時には... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: タンタレスの春
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  その頃ナンシーは、土曜から日曜にかけて毎週きまつて私を横浜から訪れて、私に従つて日本語を習ふのだと称してゐた。 彼女と私の父親同志がボストンの大学でクラス・メートであつた。 ナンシーの父親は山下町にオフイスをもつて、小規模の貿易商を経営してゐた。 彼女は其処で、タイピストと....
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: ゾイラス
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  海の遠鳴りをきゝながら私は、手風琴を弾いてゐた。 そのダクテイルが、ひらひらと潮の音に逆つて低く高く青白い虚空を衝いて飛んで行くと、私の魂も夢も片々たる白い蝶々と化して、波を乗り越え、宙に翻つて、無何有の沖へ沖へと雪崩れを打つて消えて行つた。  私は、脚を卓子の上に重ねて、椅子......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 露路の友
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  一  おそく帰る時には兵野は玄関からでなしに、庭をまはつて椽側から入る習慣だつたが、その晩は余程烈しく泥酔してゐたと見へて、雨戸を閉めるのを忘れたと見へる。  朝、階下の者が慌しく兵野の寝部屋をたゝいて、 「盗棒が入りました。」  と呼び起された。  主に... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 裸虫抄
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  横須賀にゐる妹(彼の妻の)のところで、当分彼の息子をあづかりたいと云つて寄越したのである。 子供のない慎ましい夫婦暮しで、文学の本ばかり読んでゐる妹であつた。 彼の息子は、彼が転地療養をすることになつたが、学校の都合で東京の親戚にのこつてゐた。 「トモ子のところなら安心だわ。 ト...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 夜の奇蹟
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  一  海辺の連中は雨が降ると皆な池部の家に集まるのが慣ひだつた。 暑中休暇の学生達が主だつた。 麻雀に熱中してゐる一組があつた。 窓枠に腰を掛けてマンドリンを弄んでゐるのは一番年長の池部だつた。 池部は学校を出てもう三年も経つたが、この旧家の長男で別段働く必要もなかつたの......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: まぼろし
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  和やかな初夏の海辺には微風の気合ひも感ぜられなかつた。 呑気な学生が四五人、砂浜に寝転んでとりとめもなく騒々しい雑談に花を咲かせてゐた。 「ゆらのとをわたるふなびとかぢをたへ ゆくへも知らぬこひのみちかな――か、今となると既にもうあの頃がなつかしいな、いや、満里のとこ......
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 真夏の朝のひとゝき
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  芝区で、二本榎の谷間に部屋を借りてゐた。 既に七月の夢が消えてゐた。 寺院の鐘の音が霧の深い崖下に渦を巻いた。 妻子は私の因循にあきれて、海辺の故郷に赴いてゐた。  私は寺院の鐘の音では夢を破られなかつたが、直ぐの窓下で芝居の幕あきの調子で鳴る紙芝居師の拍子木の響で、毎朝目を醒さ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 街角
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  郊外に間借りをしてゐた森野が或る夕方ステツキをグル/\回しながら散歩してゐると、停車場のちかくで、ひとりの美しい婦人に呼びかけられた。 「……誰方でしたかしら?」  森野はそんな婦人に心あたりもなかつたので、思はずさう訊き返さうとした時、 「あゝ、服部さんの奥さ... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 変装綺譚
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要:  一  図書館を出て来たところであつた、たゞひとりの私は――。 脚どりが、とてもふわ/\してゐるのを吾ながら、はつきりと感じてゐたが、頭の中に繰り拡げられて行く夢の境と今、其処に足が触れてゐる目の前の風景とが難なく調和してゐるので、面白気に平気で歩いてゐた。  あわ... ...
    商品価格: ¥0(税込)
  • タイトル: 船の中の鼠
    著者: 牧野信一
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  都を遠く離れた或る片田舎の森蔭で、その頃私は三人の友達と共にジヤガイモや唐もろこしを盗んで、憐れな命をつないで居りました。 あの村へ行けば、小生の所有になる古いけれどいとも大きな水車小屋があつて、明けても暮れても水車がどんどんと回つてお米を搗いて呉れるから、俺達の三人や... ...
    商品価格: ¥0(税込)
≪前へページ:1  2  3  4  5  6  7次へ≫

コンテンツフィルタ

"購入可能なコンテンツ"はご利用端末で購入いただけるコンテンツのみを表示します。

設定をリセット

電子書籍サイト[ConTenDo|コンテン堂]はコンテンツの交差点となるプレイスを目指して様々な良いコンテンツを展開します。
電子書籍にとどまらず映像、画像なども取り扱います。話題のEPUBおよびPDF形式を揃えています。

レコードやCDを『ジャケ買い』ってしませんでしたか?
ジャケットがグッドデザインだと買ってしまったりする購買行動のことです。
コンテン堂では、表紙が一番魅力的に見えるようにサイト・デザインされています。
電子書籍も『ジャケ買い』は素敵なコンテンツとの出会い方法としてもオススメです。

電子書籍を探すときはタイトルや著者名がわからないと結構探しにくいものです。コンテン堂は『ワードサーフィン』というまったく新しい本探しメソッドを提案しています。思ってもいなかった『本との出会い』をお楽しみ下さい。