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  • タイトル: 比叡
    著者: 横光利一
    出版社: ConTenDo
    概要:  結婚してから八年にもなるのに、京都へ行くというのは定雄夫妻にとって毎年の希望であった。 今までにも二人は度度行きたかったのであるが、夫妻の仕事が喰い違ったり、子供に手数がかかったりして、一家引きつれての関西行の機会はなかなか来なかった。 それが京都の義兄から今年こそは父の十三回忌を......
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  • タイトル: 護持院原の敵討
    著者: 森鴎外
    出版社: ConTenDo
    概要:  播磨国飾東郡姫路の城主酒井雅楽頭忠実の上邸は、江戸城の大手向左角にあった。 そこの金部屋には、いつも侍が二人ずつ泊ることになっていた。 然るに天保四年癸巳の歳十二月二十六日の卯の刻過の事である。 当年五十五歳になる、大金奉行山本三右衛門と云う老人が、唯一人すわっている。 ゆうべ一しょ...
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  • タイトル: 義民甚兵衛
    著者: 菊池寛
    出版社: ConTenDo
    概要: 人物  農夫     甚兵衛   二十九歳 甚しき跛者  その弟    甚吉    二十五歳  同      甚三    二十二歳  同      甚作    二十歳  甚兵衛の継母 おきん   五十歳前後  隣人     老婆およし 六十歳以上  庄屋     茂... ...
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  • タイトル: 復讐
    著者: 夢野久作
    出版社: ConTenDo
    概要:  昭和二年の二月中旬のこと……S岳の絶頂の岩山が二三日灰色の雲に覆われているうちに、麓の村々へ白いものがチラチラし始めたと思うと、近年珍らしい大雪になった。  その麓のS岳村から五六町離れた山裾に、この界隈での物持と云われている藤沢病院が建っていた。 田舎には珍らしい北欧型のスレ......
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  • タイトル: カーライル博物館
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  公園の片隅に通りがかりの人を相手に演説をしている者がある。 向うから来た釜形の尖った帽子を被ずいて古ぼけた外套を猫背に着た爺さんがそこへ歩みを佇めて演説者を見る。 演説者はぴたりと演説をやめてつかつかとこの村夫子のたたずめる前に出て来る。 二人の視線がひたと行き当る。 演説者は濁りた...
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  • タイトル: 秋の暈
    著者: 織田作之助
    出版社: ConTenDo
    概要: 秋の暈 織田作之助  秋という字の下に心をつけて、愁と読ませるのは、誰がそうしたのか、いみじくも考えたと思う。 まことにもの想う人は、季節の移りかわりを敏感に感ずるなかにも、わけていわゆる秋のけはいの立ちそめるのを、ひと一倍しみじみと感ずることであろう。 私もまた秋のけはいを......
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  • タイトル: 愛と婚姻
    著者: 泉鏡花
    出版社: ConTenDo
    概要:  媒妁人先づいふめでたしと、舅姑またいふめでたしと、親類等皆いふめでたしと、知己朋友皆いふめでたしと、渠等は欣々然として新夫婦の婚姻を祝す、婚礼果してめでたきか。  小説に於ける男女の主客が婚礼は最めでたし。 何となれば渠等の行路難は皆合卺の事ある以前既に経過し去りて、自来無事悠......
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  • タイトル: 仇討三態
    著者: 菊池寛
    出版社: ConTenDo
    概要:           その一  越の御山永平寺にも、爽やかな初夏が来た。  冬の間、日毎日毎の雪作務に雲水たちを苦しめた雪も、深い谷間からさえ、その跡を絶ってしまった。  十幾棟の大伽藍を囲んで、矗々と天を摩している老杉に交って、栃や欅が薄緑の水々しい芽を吹き始めた。 ....
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  • タイトル: 仇討禁止令
    著者: 菊池寛
    出版社: ConTenDo
    概要:           一  鳥羽伏見の戦で、讃岐高松藩は、もろくも朝敵の汚名を取ってしまった。  祖先が、水戸黄門光圀の兄の頼重で、光圀が後年伯夷叔斉の伝を読み、兄を越えて家を継いだことを後悔し、頼重の子綱条を養って子とし、自分の子鶴松を高松に送って、嗣子たらしめた。  ......
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  • タイトル: 三四郎
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  うとうととして目がさめると女はいつのまにか、隣のじいさんと話を始めている。 このじいさんはたしかに前の前の駅から乗ったいなか者である。 発車まぎわに頓狂な声を出して駆け込んで来て、いきなり肌をぬいだと思ったら背中にお灸のあとがいっぱいあったので、三四郎の記憶に残っている。 ....
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  • タイトル: 作物の批評
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  中学には中学の課目があり、高等学校には高等学校の課目があって、これを修了せねば卒業の資格はないとしてある。 その課目の数やその按排の順は皆文部省が制定するのだから各担任の教師は委託をうけたる学問をその時間の範囲内において出来得る限りの力を尽すべきが至当と云わねばならぬ。  しか......
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  • タイトル: 野分
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:         一  白井道也は文学者である。  八年前大学を卒業してから田舎の中学を二三箇所流して歩いた末、去年の春飄然と東京へ戻って来た。 流すとは門附に用いる言葉で飄然とは徂徠に拘わらぬ意味とも取れる。 道也の進退をかく形容するの適否は作者といえども受合わぬ。 縺れたる...
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  • タイトル: 吾輩は猫である
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  吾輩は猫である。 名前はまだ無い。  どこで生れたかとんと見当がつかぬ。 何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。 吾輩はここで始めて人間というものを見た。 しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。 この書生とい... ...
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  • タイトル: 博士問題とマードック先生と余
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:        上  余が博士に推薦されたという報知が新聞紙上で世間に伝えられたとき、余を知る人のうちの或者は特に書を寄せて余の栄選を祝した。 余が博士を辞退した手紙が同じく新聞紙上で発表されたときもまた余は故旧新知もしくは未知の或ものからわざわざ賛成同情の意義に富んだ書状を幾... ...
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  • タイトル: 無題
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  私はこの学校は初めてで――エー来るのは初めてだけれども、御依頼を受けたのは決して初めてではありません。 二、三年前、田中さんから頼まれたのです。 その頃頼みに来て下さった方はもう御卒業なさったでしょう。 それ以来十数回の御依頼を受けましたが、みんな御断りしました。 断るのが面白いから...
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  • タイトル: 三山居士
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  二月二十八日には生暖たかい風が朝から吹いた。 その風が土の上を渡る時、地面は一度に濡れ尽くした。 外を歩くと自分の踏む足の下から、熱に冒された病人の呼息のようなものが、下駄の歯に蹴返されるごとに、行く人の眼鼻口を悩ますべく、風のために吹き上げられる気色に見えた。 家へ帰って護謨合羽を....
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  • タイトル: 明暗
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:         一  医者は探りを入れた後で、手術台の上から津田を下した。 「やっぱり穴が腸まで続いているんでした。 この前探った時は、途中に瘢痕の隆起があったので、ついそこが行きどまりだとばかり思って、ああ云ったんですが、今日疎通を好くするために、そいつをがりがり掻き落し......
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  • タイトル: 幻影の盾
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  一心不乱と云う事を、目に見えぬ怪力をかり、縹緲たる背景の前に写し出そうと考えて、この趣向を得た。 これを日本の物語に書き下さなかったのはこの趣向とわが国の風俗が調和すまいと思うたからである。 浅学にて古代騎士の状況に通ぜず、従って叙事妥当を欠き、描景真相を失する所が多かろう、読者の......
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  • タイトル: 教育と文芸
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  私は思いがけなく前から当地の教育会の御招待を受けました。 凡そ一カ月前に御通知がありましたが、私は、その時になって見なければ、出られるか出られぬか分らぬために、直にお答をすることが出来ませんでした。 しかし、御懇切の御招待ですから義理にもと思いまして体だけ出懸けて参りました。 別に面....
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  • タイトル: 京に着ける夕
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  汽車は流星の疾きに、二百里の春を貫いて、行くわれを七条のプラットフォームの上に振り落す。 余が踵の堅き叩きに薄寒く響いたとき、黒きものは、黒き咽喉から火の粉をぱっと吐いて、暗い国へ轟と去った。  たださえ京は淋しい所である。 原に真葛、川に加茂、山に比叡と愛宕と鞍馬、ことごとく昔....
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  • タイトル: 草枕
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  山路を登りながら、こう考えた。  智に働けば角が立つ。 情に棹させば流される。 意地を通せば窮屈だ。 とかくに人の世は住みにくい。  住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。 どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。  人の世を...
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  • タイトル: 行人
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:      友達         一  梅田の停車場を下りるや否や自分は母からいいつけられた通り、すぐ俥を雇って岡田の家に馳けさせた。 岡田は母方の遠縁に当る男であった。 自分は彼がはたして母の何に当るかを知らずにただ疎い親類とばかり覚えていた。  大阪へ下りるとすぐ....
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  • タイトル: 坑夫
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  さっきから松原を通ってるんだが、松原と云うものは絵で見たよりもよっぽど長いもんだ。 いつまで行っても松ばかり生えていていっこう要領を得ない。 こっちがいくら歩行たって松の方で発展してくれなければ駄目な事だ。 いっそ始めから突っ立ったまま松と睨めっ子をしている方が増しだ。  東京を...
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  • タイトル: こころ
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要: 上 先生と私 一  私はその人を常に先生と呼んでいた。 だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。 これは世間を憚かる遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。 私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ「先生」といいたくなる。 筆を執っても心持は同...
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  • タイトル: 私の個人主義
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:     ――大正三年十一月二十五日学習院輔仁会において述――  私は今日初めてこの学習院というものの中に這入りました。 もっとも以前から学習院は多分この見当だろうぐらいに考えていたには相違ありませんが、はっきりとは存じませんでした。 中へ這入ったのは無論今日が初めてでございます......
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  • タイトル: ケーベル先生の告別
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  ケーベル先生は今日(八月十二日)日本を去るはずになっている。 しかし先生はもう二、三日まえから東京にはいないだろう。 先生は虚儀虚礼をきらう念の強い人である。 二十年前大学の招聘に応じてドイツを立つ時にも、先生の気性を知っている友人は一人も停車場へ送りに来なかったという話である。 先...
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  • タイトル: ケーベル先生
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  木の葉の間から高い窓が見えて、その窓の隅からケーベル先生の頭が見えた。 傍から濃い藍色の煙が立った。 先生は煙草を呑んでいるなと余は安倍君に云った。  この前ここを通ったのはいつだか忘れてしまったが、今日見るとわずかの間にもうだいぶ様子が違っている。 甲武線の崖上は角並新らしい立...
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  • タイトル: 薤露行
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  世に伝うるマロリーの『アーサー物語』は簡浄素樸という点において珍重すべき書物ではあるが古代のものだから一部の小説として見ると散漫の譏は免がれぬ。 まして材をその一局部に取って纏ったものを書こうとすると到底万事原著による訳には行かぬ。 従ってこの篇の如きも作者の随意に事実を前後したり......
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  • タイトル: 人生
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  空を劃して居る之を物といひ、時に沿うて起る之を事といふ、事物を離れて心なく、心を離れて事物なし、故に事物の変遷推移を名づけて人生といふ、猶麕身牛尾馬蹄のものを捉へて麟といふが如し、かく定義を下せば、頗る六つかしけれど、是を平仮名にて翻訳すれば、先づ地震、雷、火事、爺の怖きを悟り... ...
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  • タイトル: コンラッドの描きたる自然について
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  一月二十七日の読売新聞で日高未徹君は、余の国民記者に話した、コンラッドの小説は自然に重きをおき過ぎるの結果主客顛倒の傾があると云う所見を非難せられた。  日高君の説によると、コンラッドは背景として自然を用いたのではない、自然を人間と対等に取扱ったのである、自然の活動が人間の活... ...
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  • タイトル: 変な音
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要: 上  うとうとしたと思ううちに眼が覚めた。 すると、隣の室で妙な音がする。 始めは何の音ともまたどこから来るとも判然した見当がつかなかったが、聞いているうちに、だんだん耳の中へ纏まった観念ができてきた。 何でも山葵おろしで大根かなにかをごそごそ擦っているに違ない。 自分は確にそう...
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  • タイトル: 長谷川君と余
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  長谷川君と余は互に名前を知るだけで、その他には何の接触もなかった。 余が入社の当時すらも、長谷川君がすでにわが朝日の社員であるという事を知らなかったように記憶している。 それを知り出したのは、どう云う機会であったか今は忘却してしまった。 とにかく入社してもしばらくの間は顔を合わせずに....
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  • タイトル: 硝子戸の中
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  硝子戸の中から外を見渡すと、霜除をした芭蕉だの、赤い実の結った梅もどきの枝だの、無遠慮に直立した電信柱だのがすぐ眼に着くが、その他にこれと云って数え立てるほどのものはほとんど視線に入って来ない。 書斎にいる私の眼界は極めて単調でそうしてまた極めて狭いのである。  その......
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  • タイトル: 現代日本の開化
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  はなはだお暑いことで、こう暑くては多人数お寄合いになって演説などお聴きになるのは定めしお苦しいだろうと思います。 ことに承れば昨日も何か演説会があったそうで、そう同じ催しが続いてはいくらあたらない保証のあるものでも多少は流行過の気味で、お聴きになるのもよほど御困難だろうと御察し申... ...
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  • タイトル: 道楽と職業
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  ただいまは牧君の満洲問題――満洲の過去と満洲の未来というような問題について、大変条理の明かな、そうして秩序のよい演説がありました。 そこで牧君の披露に依ると、そのあとへ出る私は一段と面白い話をするというようになっているが、なかなか牧君のように旨くできませぬ。 ことに秩序が無かろうと......
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  • タイトル: 文芸と道徳
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  私はこの大阪で講演をやるのは初めてであります。 またこういう大勢の前に立つのも初めてであります。 実は演説をやるつもりではない、むしろ講義をする気で来たのですが、講義と云うものはこんな多人数を相手にする性質のものでありません。 これだけの聴衆全体に通るような声を出そうとすれば――第一....
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  • タイトル: 文芸の哲学的基礎
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  東京美術学校文学会の開会式に一場の講演を依頼された余は、朝日新聞社員として、同紙に自説を発表すべしと云う条件で引き受けた上、面倒ながらその速記を会長に依頼した。 会長は快よく承諾されて、四五日の後丁寧なる口上を添えて、速記を余のもとに送付された。 見ると腹案の不充分であったためか、......
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  • タイトル: 文芸委員は何をするか
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:        上  政府が官選文芸委員の名を発表するの日は近きにありと伝えられている。 何人が進んでその嘱に応ずるかは余の知る限りでない。 余はただ文壇のために一言して諸君子の一考を煩わしたいと思うだけである。  政府はある意味において国家を代表している。 少くとも国家を代表...
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  • タイトル: 文鳥
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:  十月早稲田に移る。 伽藍のような書斎にただ一人、片づけた顔を頬杖で支えていると、三重吉が来て、鳥を御飼いなさいと云う。 飼ってもいいと答えた。 しかし念のためだから、何を飼うのかねと聞いたら、文鳥ですと云う返事であった。  文鳥は三重吉の小説に出て来るくらいだから奇麗な鳥に違なか...
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  • タイトル: 坊っちゃん
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要: 一  親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。 小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。 なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。 別段深い理由でもない。 新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから...
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  • タイトル: 二百十日
    著者: 夏目漱石
    出版社: ConTenDo
    概要:         一  ぶらりと両手を垂げたまま、圭さんがどこからか帰って来る。 「どこへ行ったね」 「ちょっと、町を歩行いて来た」 「何か観るものがあるかい」 「寺が一軒あった」 「それから」 「銀杏の樹が一本、門前にあった」 「それから」 「銀杏の樹から本... ...
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  • タイトル: シャロットの妖姫
    出版社: ConTenDo
    概要:    其の一 河の両辺に横はる 大麦及びライ麦の長やかなる畑地 此の畑 岡を覆ひ 又 空に接す さて 此の畑を貫いて 道は走る     多楼台のカメロット城へ さて 上にまた下に 人は行く うちながめつゝ 蓮咲くあたりを 島根に添うて かなた下手の     ... ...
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  • タイトル: 老人
    出版社: ConTenDo
    概要:  ペエテル・ニコラスは七十五になつて、いろんな事を忘れてしまつた。 昔の悲しかつた事や嬉しかつた事、それから週、月、年と云ふやうなものはもう知らない。 只日と云ふもの丈はぼんやり知つてゐる。 目は弱つてゐる。 又日にまし弱つて行く。 それで日の入りがぼやけた朱色に見え、日の出が褪めた桃色に.....
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  • タイトル: 野菊の墓
    著者: 伊藤左千夫
    出版社: ConTenDo
    概要:  後の月という時分が来ると、どうも思わずには居られない。 幼い訣とは思うが何分にも忘れることが出来ない。 もはや十年余も過去った昔のことであるから、細かい事実は多くは覚えて居ないけれど、心持だけは今なお昨日の如く、その時の事を考えてると、全く当時の心持に立ち返って、涙が留めどなく湧く......
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  • タイトル: 奈々子
    著者: 伊藤左千夫
    出版社: ConTenDo
    概要:  その日の朝であった、自分は少し常より寝過ごして目を覚ますと、子供たちの寝床は皆からになっていた。 自分が嗽に立って台所へ出た時、奈々子は姉なるものの大人下駄をはいて、外へ出ようとするところであった。 焜炉の火に煙草をすっていて、自分と等しく奈々子の後ろ姿を見送った妻は、 「奈々ち......
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