「人工知能は夢を見ない ～夢は人を未来にかきたてる原動力～」 松島桂樹著作集　第１３巻

概要：

情報化社会の実像は、かつて私たちが描いたのとは異なるように見えてきました。たしかに技術は日夜進歩し、生活や業務、経済、経営に大きな影響をもたらしていることは間違いありません。しかし、すべての人や国に恩恵をもたらすことが期待されたにもかかわらず、格差、貧困は一向に減らないどころか、広がっているようです。さらに情報の氾濫は、いわば真実でないものも含め、爆発状態であり、少なくとも情報が多いことが真実に近づくというのは正しくないとさえ思えてきました。情報の価値も格差が生じてきており、ほぼただ同然に入手できる情報から、巨額な対価を求める情報まで広がっています。これが情報化社会、知識社会の現実であることが21世紀になってから私たちが認識できるようになってきました。
だからこそ、感性、心、信頼、意欲などアナログ的な要因に価値を求めるようになっています。思えば、コンピュータも人間の行動や思考パターンを疑似的に組み込んできましたし、人工知能も人間の脳の働きを模して機械に移植し、かなり成功してきました。しかし、実際の人間の脳はデジタルで処理しているのでなくアナログな信号を処理していることは間違いありません。機械は、何百万年という人類の試行錯誤の結果である今の人間の機能にまだはるかに及ばないのです。人間を超えるなど、夢のまた夢、技術はもっと謙虚になるべきです。